13話
大変長らくお待たせしました。
「……ふぅー。やっと……終わった」
あの後、桜ちゃんの水着が決まるまで小一時間程かかった。
しかしその一時間は僕にとっては一日と同じくらい長く感じられるような、それくらい長い時間となった。
ただでさえ女性の苦手な僕に女の子の水着、半裸というのは刺激が強すぎる。
鼻血を出さなかった僕を褒めてあげたい。
「どうしたんですかー佐渡さん? とてもお疲れのようですね? 肩でも揉みましょうかー?」
過度な疲労による姿を見せていると、桜ちゃんが悪戯な笑みを見せながら、僕にそう声を掛けてきた。
「……はは。遠慮しておくよ」
「そうですかー。それは残念です。せっかく安藤さんから教わった超絶マッサージテクをお披露目しようと思いましたのに」
「桜ちゃん……もしかして僕のことからかってる?」
「えーっ? なんのことですかー? 私はただお疲れのご様子の佐渡さんに少しでも楽になってもらおうと思ってるだけですよー」
「その割にはすごい楽しそうだね」
「それは当たり前ですよ。メイドとしてご主人様のお役にたてることほどうれしいことはありません」
「そうだよね。うん。そういうことにしておくよ」
どう足掻いても桜ちゃんとの口勝負で勝てる気がしないので僕は引き際を見極めて引いておくことにした。
「それよりほら、もうそろそろお昼だし、どこかでご飯食べようよ」
ポケットにねじ込んでいた携帯を手に取り、時間を確認すると針は午後の1時を少し回ったくらいを指していた。
もうそろそろお腹が鳴ってもおかしくない時間帯である。
「そうですね。お昼にしましょうか……ってそうはいきませんよ」
「えっ?」
何がそうはいきませんなのだろう。
「佐渡さん。私から昼食を作るという仕事を奪うつもりですね? そうは行きませんよ。さあ今から帰って急いでつくりますから早く帰りましょう」
なるほどそういうことだったのか。
「でもさ桜ちゃん。たまには気を抜くのも大事なんじゃないかな? ほら、仕事とプライベートをしっかり分ける意味でもさ」
「んっ? 確かに一理ありますね……」
それらしい言葉を咄嗟に口に出しただけなのだがどうやら効果はあったらしい。
僕だってたまには桜ちゃんに楽をさせてあげたい。水着代を奢りにしてもらえなかった分、お昼を奢らせて貰おう。
「でしょ? だから息抜きを兼ねてさ、たまには外食も良いんじゃないかな? 毎食そんなことしてれば栄養バランスも崩れるけど、一食ぐらいなら大丈夫だよ」
僕はこのまま押し切ろうと最後の畳み掛けに入った。時間を掛ければどんどん桜ちゃんが冷静になってしまい、僕の方が不利になる。
その前に何としてでもこの話し合いを終わらせるべきである。
そして少し考えたあと、桜ちゃんは
「……わかりました。佐渡さんの言うとおりたまには息抜きも大事ですよね」
と、了承してくれた。
「うん。じゃあフードコートに行こうか」
「はい、いきましょー!」
あの後すぐに階を移動し、フードコートのまでやってきた。この後もいろいろしたいという桜ちゃんの意見を取り入れて早くておいしいハンバーガーを昼食にチョイスし、僕らはカウンターで注文を済ませ、品物を貰ってから空いている席に着いた。
「桜ちゃん」
「なんですか佐渡さん? 告白ですか?」
「ぶーっ!」
口に含んでいた飲み物を盛大に噴き出した。
「わーっ! すいません佐渡さん冗談が過ぎましたっ」
「……いや、こっちこそごめんね。服とかにかかってない?」
咄嗟の判断でどうにか首を捻ることには成功したが、かかってないという保証はなかった。
床は濡れてしまったが、適当に布巾で拭けば平気だろう。
「はい。大丈夫です」
「そう。それならよかったよ」
桜ちゃんは無事のようだ。
これなら僕が少し周りの人たちから変な目で見られるだけで済む。
それはいきなり、近くの人が飲み物を吹きだしたら誰だって驚いてそちらを振り向くだろう。
今回も僕らの周りの人たちが何事かとこちらを一斉に振り向いた。
二人で軽く頭を下げて「すいません」と言いながら小さくなりながら席に座る。
「それでなんですか佐渡さん?」
「あー、うん。この後なんだけど、なにかしたいことあるのかなーって」
「……えーっと。これといってないんですよねー」
「そうなんだ。じゃあどこに行こうか」
ハンバーガーを食べながらこの後のことを考える僕ら。
時間はまだ余裕がある方だ。あまりにも遠いところでもない限り行くことができる。
ただそれは逆に言えば選択肢がその分増えるということでもあり、僕達を悩ます材料が増えただけである。
家に帰るのはまずないだろう。せっかく外に出てきたのに外でできることをしないのはもったいない。
そうなるとこの辺りでできることということになるのだが、この辺りにはなんでもあり過ぎる。
カラオケ、ゲームセンター、映画館、広い公園などがあり、少し遠出をすれば遊園地、プール、動物園に水族館なんかもあったりする。
なにをするかを考えるのは簡単だが、何にするか絞り込むのが難しいのである。
でも、どうせなら桜ちゃんの楽しめることをしてあげたい。
今の桜ちゃんがやりたいこと、望んでいること、なにかあっただろうか。
「あっ!」
僕はいきなりの自分のひらめきに驚いて席を大声を出しながら勢いよく立ち上がる。
「わっ! どうかしましたか佐渡さん。いきなり声出すからびっくりしましたよー」
「あー。ごめんね、それより桜ちゃん。この後なんだけどあそこに行ってみない?」
「あそこ?」
桜ちゃんは可愛らしく首を傾げた。
この後の新作投稿は今までの投稿した話の毎日改訂が終わってからとなります。
それまで少しまた時間が空きますが、気長にお待ちいただけると幸いです。




