24話
投稿遅くなってしまい本当にすいませんっ!!
次の日の買い物へ向かう途中、奏ちゃんのところの執事さんたちに追われた。安藤さんたちが言うとおり、数も今までより多く感じる。後ろから追って来ているだけで三人。その他にも逃げようと行く先々で執事さんたちかメイドさんたちが道を塞ぐように立っている。人がいるところに出ても、今までのように追うのを止めてこない。安藤さんたちの言うとおり、今までのように簡単に巻くことはできないようだ。
(サポートしてくれるって言ってたけど。連絡が来ない)
さっきからもう三分近く走っているが桜さんからの連絡が全く来ない。騙された可能性はなさそうだし、もうそろそろ連絡をくれないといい加減僕らも危ない。
「佐渡っ。あんたこんな時に携帯なんていじってんじゃないわよ」
「ごめん。でも、これには理由があるんだ」
奏ちゃんも今まで散々追われたことによって体力が付いたのかここまで全力疾走しても息を切らしていない。僕も少しは体力が向上したようで、まだ少し余裕がある。
しかし、体力があるのと捕まらないのは別事だ。体力があっても挟まれたりしたら、逃げられない。
そんなとき手に持っていた携帯が震えた。
「きたっ」
「何が来たのよっ」
奏ちゃんには悪いが返事をすることなく、電話の通話ボタンを押す。
「もしもし桜ちゃんっ」
「なっ、今、桜ちゃんって……佐渡どういうことよっ」
本当に悪いとは思うが、再び奏ちゃんに言葉を返すことなく、電話に意識を集中する。
「はーい。佐渡さんの愛する桜ちゃんでーす。大丈夫ですかー……ってモニターで見てるからわかるんですけどねー」
「なら、早く逃げ道……教えてよ」
流石に少し息が切れてきた。奏ちゃんも少し辛そうな顔をしている。それ以上に僕に怒りの表情を向けているが……
「はーい。とりあえずそこの角から右、右、左の順で曲がってくださーい」
「わかった」
言われた通りに角を右、右、左に曲がっていく。
「そこを右に曲がってそのまま真っ直ぐ進んでくださいねー」
角を右に曲がり、そのまま直進する。
すると、デパートの近くの大通りに出ることができた。後ろを振り返ると、もう三人は追って来ていない。周囲を見渡しても執事の姿もメイドの姿もなかった。逃げ切れたようだ。
「逃げ切れたー。よかったー」
「そうね。逃げ切れたわね。でも、私から逃げられると思わないわよね……ふふふっ……」
「だ、だよねー……」
追手からは逃げられても奏ちゃんからは逃げられなかった僕でした。
「ふーん。そういうこと。つまり私がいない間に安藤たちと話して、桜とイチャイチャする仲になったと」
奏ちゃんの目線が冷たい。背筋が凍る思いだ。
「あのね。逃げるのが大変になるからサポートするって話をしただけで、そんな桜ちゃんとイチャイチャなんて……」
「まあ、いいわ。あそこのパフェとやらで許してあげる。」
近くのカフェの看板に大きくパフェの宣伝がされていた。『ビッグパフェ!! 三十分で食べ切れたら無料!!』よくある大食いメニューというやつだ。しかし、こういったメニューは大抵食べ切れないようにできている。僕が奏ちゃんと暮らしてまだそこまで時間は経っていないが、そこまで大食いではないのは知っている。さすがにあれを食べきるのは無謀だ。
「パフェなら他のところのにしない? 食べ切れないかもよ」
「平気よ平気っ。私を誰だと思ってるの? 天王寺家の奏様よ」
結局、奏ちゃんに強引に押し切られそこのカフェでパフェを食べることになった。
そして三十分後、「もう無理、あとは任せたわ」とパフェを食べることを諦めた奏ちゃんを見ながら、まだまだたくさん残っているパフェを食べる僕がそこにいた。
ちなみにパフェは五千円でした。
あれから一週間が経過した。奏ちゃんを探す追手が増えてから見つかる回数は増えたものの、桜ちゃんと安藤さんのサポートのおかげで、何も心配することなく簡単に逃げられるようになった。
今では最初の時のように連絡が来るのに時間がかかることなく、見つかった瞬間に携帯に連絡が入る。時には、僕らが発見されたのを気づかなくて連絡が入って気づいた。なんてこともあった。
そしてその追われる原因になっている当人はというと、今で横になりながらテレビを見ている。
「佐渡ー。これやりたい」
奏ちゃんの声を聞き、テレビに視線を移すとそこにはサッカーの試合が映っていた。一応、みんなと遊ぶとき用の道具の中にサッカーボールはある。場所も近くにある。けど、今外を出歩くのは得策ではない。買い物など仕方ないときはしょうがないが、遊ぶときに出歩くのはリスクが高すぎる。
「奏ちゃん。さすがに外に出るのは……他のことしようよ。ねっ?」
「大丈夫よ。もしもの時は安藤たちが助けてくれるもの」
安藤さんたちを信用しての言葉なのか、ただの楽観視なのか僕にはわからない。もしかしたらその両方かもしれない。どうしようか悩んでいると、奏ちゃんが僕の腕を強引に引っ張った。
「行くわよっ。私と遊べるなんて光栄でしょ」
ここまで来ると断れそうにない。こうなった奏ちゃんは止められないことを僕は知っている。仕方なくサッカーボールを取り出し、靴を履き、玄関を出る。
キャッチボールをした時と同じ公園に向かって周囲をkウィ開始ながら、出来るだけ早足で歩く。これが最近外に出るときの僕らのお約束だ。
「っ! 奏ちゃん!」
そしてあと少しで公園というところで見つかってしまった。また距離は大分離れていたというのに、僕らだと認識したのかこちらに向かって走ってくる。
いつものように携帯を取り出すと、すぐに携帯が震えた。もう、手慣れた動作で通話ボタンを押し、耳に当てる。
「はろはろー。珍しいですねこんな時間に買い物なんて」
携帯から桜ちゃんの声が聞こえる。今では追われている時だとこの少し高い声を聞くだけで安心する。それだけこの二人が僕らの支えになってくれているのだ。
「まあ、事情はいいです。そこを左です」
「左だね」
言われた通りに角を左に曲がる。しかし、そこにも何人もの執事とメイドさんがいた。まだ、油断はできない。
「そこを右でーす」
「うん」
「左ー」
「うん」
「そこを真っ直ぐだーーー」
いつも通り、指示が的確だ。次第に追手の人数が減ってきている。これならあと一分もしないうちに巻くことができるだろう。
「えーっと。次はですねー。……えっ? 嘘っ!? まずっ!? 」
突然通話が切れた。今までこんなことはなかった。途中で連絡が途切れるなんてことはなかった。それに、気になるのは桜ちゃんの最後の方の言葉の数々だ。まるで、なにか予期せぬことが起きたような声だった。
「桜ちゃんっ! どうしたの!? 返事をしてっ」
「佐渡っどうしたのっ。桜からの連絡は? まだ追って来てるわよ」
「それが突然連絡が途切れてっ」
「なによそれっ。それってかなりまずいんじゃ……」
少し離れたところにメイドさんを一人発見し、急いで小道に入る。どうやら桜ちゃんたちの心配はこの鬼ごっこを終えてからじゃないといけないらしい。
十分後、ある程度桜ちゃんの指示のおかげで大方まけていたのか、自分たちだけでもどうにか逃げ切ることができた。
周囲を簡単に確認して、最後に後ろを確認しようと振り返ると……
「奏ちゃんっ!!」
そこには執事が一人立っていた。逃げ切れたと思って油断してしまった。気が緩んでいた。
奏ちゃんを庇うように奏ちゃんに覆いかぶさる。
瞬間、鈍い音と共に、何かが倒れる音がした。
状況を確認しようと顔をあげると、そこには翔君が立っていた。
「おっす! 誠也っ」
「翔君っ」
「これが執事か? 思ったよりよえーな。拳一つでノックダウンとか、こんなんでお嬢様を守れるのかねー」
いつものさわやかな笑顔で不満げに拳を眺める翔君。
「ありがとう翔君」
「よくやったわ九重」
「おう。それより早く非難しようぜ。俺だって何十人も来たら対処しきれねえからな」
「そうだね。一旦僕の家に帰ろう」
こうしてサッカーを諦め僕の家に帰ることになった。
「佐渡、どう? 繋がった?」
「それがさっきから何度も連絡してるんだけど、繋がらなくて」
無事、僕の家に帰ってこれた僕らはすぐに桜ちゃんに連絡を取った。しかし、何度携帯を鳴らしても通話が繋がることがない。
こちらから出向くわけにもいかないし、どうしようかと悩んでいると、すごい勢いで玄関が叩かれた。
「はーい。少し待ってくださーい」
何事かと思いながらも、そそくさと玄関へ向かう。そして玄関を開けると僕は誰かに押し倒された。いきなりのことに対応しきれずそのまま後ろに倒れこむ。転んだ際にぶつけた頭を押さえながら首だけ起こして僕を押し倒した本人を見る。
そこに居たのは桜ちゃんだった。
「佐渡さん、佐渡さん、佐渡さん……」
怖い夢を見た子供の様にひどく不安げな声で何度も僕の名前を呼んだ。顔は涙でぐしゃぐしゃになっており、顔も真っ赤だ。
「とりあえず上がって。大丈夫だから」
フラフラの桜ちゃんを抱きかかえながら翔君たちの居る、居間まで戻ってきた。桜ちゃんの姿を見るなり奏ちゃんが桜ちゃんに駆け寄った。敵かもしれないなんて言っていても大事な人が泣いていれば、やっぱり心配なのだ。
「どうしたのよ桜っ。なんで泣いてるのっ。言いなさい」
言い方こそ少しきつく見えるが、これが奏ちゃんなりの心配なのだろう。
「……ひっく……すいません」
「何がすいませんなのっ」
「奏ちゃん落ち着いて。桜ちゃんどうしたの? ゆっくりでいいから話してみて。翔君、悪いんだけど冷蔵庫の牛乳温めてきてくれるかな」
「了解」
興奮している奏ちゃんを抑制しつつ、翔君に悪いと思いながら指示を出す。しばらく泣いていた桜ちゃんもホットミルクを飲んだら少しは落ち着いたのかゆっくりと口を開いた。
「安藤さんが……安藤さんが源蔵様に捕まりました……」




