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ホームレス少女  作者: Rewrite
天王寺奏編
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53/234

18話

 しばらくして奏ちゃんがお風呂を上がってきた。何故か息を切らしながら。たぶんお風呂場で何かと格闘していたのだろう。

 今回は彼方ちゃんの時と違って、パジャマも買って来てあったので、この前のような事件はない。僕も少しは成長したものである。

 奏ちゃんが上がるころには僕の夕飯の支度もほとんど終わっていて、あとは皿に盛りつけるだけという状態だった。奏ちゃんの「早くー」という催促をBGMに急いで皿に盛りつけていく。


「こんなものかな」


 どうにか納得のいく盛り付けを再現することができた。僕は普段そこまで盛り付けには拘らない。必要最低限の盛り付け方をして少しでも料理をおいしそうに見せる程度だ。だが、今回は奏ちゃんがお嬢様だということで少し見栄を張ってしまった。それかこの前褒められたのが嬉しかったから、うん。たぶん後者です。


「できたよー」


 キッチンに並んだ皿をお盆を使って運んでいく。僕が一品一品をテーブルに並べると、奏ちゃんは珍しそうに一品一品を凝視した。表情が少しずつ変化していってちょっと面白い。

 ちなみに今日の夕食はハンバーグ、サラダ、あとは奏ちゃんに好評だったお味噌汁だ。


「夕食もおいしそうじゃないの。佐渡、ホントに家のシェフになりなさいよ」

「んー。おいしいって言ってもらえるのは嬉しいけど、それは本当のシェフさんに失礼だよ」


 奏ちゃんのお誘いを丁重にお断りする。奏ちゃんがおいしいって言ってくれるのは嬉しいけど、やっぱり本場の人に敵うはずがない。


「もう。そんなことないって言ってるじゃない。私が言ってるのよ。それとも私が信用できないって言うのっ」

「ち、違うよ。ただ僕は奏ちゃんが思ってるほどすごい人間じゃないってだけで」


 実際、僕レベルぐらいに料理できる人間なんてこの世界にたくさんいる。少し料理をかじっていればこのくらいはできるはずだ。


「はあ、まあ気が向いたらいつでも言いなさい。いつでも歓迎するわ。もちろんシェフ兼私の執事になってくれても構わないわよ」

「ははは……考えとくよ」

「ホントねっ。ちゃんと考えときなさいよ」

「う、うん。それより、料理も覚めちゃうしそろそろ食べようか」

「そうね。せっかくの料理が覚めたらもったいないわ」


「「いただきます」」


 2人そろって手を合わせ、唱和する。

 そして手を離し終えた瞬間、奏ちゃんは待ってましたとばかりに料理に向かった。最初に手を付けたのはハンバーグ。箸で一口サイズに切り分けて口に運んだ。

 口元が可愛らしく動き、のど元が動いてハンバーグが食道を通っていく。


「おいしいかな?」


 恐る恐る奏ちゃんに確認する。


「んっ? 当たり前じゃない。何よ今更。不味かったら手も付けないわよ」

「そ、そっかっ。よかった。うんうん」


 1人納得して僕も自分の分を食べ始める。

 口に入れたハンバーグがいつもより少しおいしく感じられた。



「それじゃあ、寝ようか」

「そうね。なんて言うと思った? まだまだ夜はこれからじゃない。いつもは夜更かしなんてさせてもらえないもの。今日はしてやるわ」

「あのね、僕明日大学なんだ。だから休ませてもらえると助かるんだけど」

「ダメに決まってるでしょ、私に付き合いなさい」

「だよね」


 僕は諦めてとりあえずいつでも寝れるように布団だけは用意した。今回は前回の彼方ちゃんとの一件で布団は予備があった方がいいのがわかったので予備がある。だから今回はどちらかが床で寝ることはない。一枚を奏ちゃん用に居間に敷いて、もう一枚をキッチンに敷こうとキッチンへ向かおうとする。


「よ……っと」

「何やってるのよ佐渡」

「なにって、僕の分の布団をキッチンに運ぶんだよ」

「ここで一緒に寝ればいいじゃない」


 心底不思議そうな顔で僕を見る奏ちゃん。


「いや、奏ちゃんも女の子だし、僕と一緒の部屋で寝るなんて嫌でしょ?」

「そんなことないけど」


 真顔で返されてしまった。

 そう言えば、奏ちゃんは僕にお風呂で頭と体を洗わせようとしたんだった。そんなことができるなら、一緒に寝るのもできて当然だ。

 彼方ちゃんとの時は一緒に寝たのは最初の一晩だけだ。泣いている彼女を放っておけなくて、一緒に寝た。

 でも、今回はそういうことはなさそうなので僕の世間体のためと、奏ちゃんが将来後悔しないためにもどうにか別々の部屋で寝たい。

 こうなったらさっきと同じ手を使うしかなさそうだ。


「奏ちゃん。大人の女性は一人で寝れるんだよ。そして男の人とはむやみに一緒に寝たりしないんだ」

「そうなの? なら私も一人で寝れるわ。もう大人のレディだから」


 どうにか上手くごまかすことができたみたいだ。

 嘘を吐くことに嫌気は指すけど、しょうがない。ごめんね奏ちゃん。


「じゃあお休み」

「なに言ってるのよ佐渡、この後ゲームするって言ったじゃない」

「やっぱり?」

「当たり前っ」


 このままの勢いで寝ようと思ったけどやっぱり奏ちゃんはそれを許してくれなかった。


 そして結局僕が就寝できたのは深夜3時過ぎでした。

 明日起きられるかな……

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