21話
しばらくして彼方ちゃんが落ち着いてから僕たちはまた話し合いを再開した。
「とりあえず彼方ちゃんの僕と会うまでの事情はわかった。それでこれからの話だけど……」
「これからの話……ですか……?」
落ち着いたといっても表情はまだ不安そうだ。
でもそれは当たり前だと思う。
僕だってこれからやろうとしてることが本当に正しいか不安だし、正直怖い。
この考えで本当に彼方ちゃんを救うことができるのか、彼方ちゃんの笑顔は戻るのか、本当に不安で仕方がない。
でも彼方ちゃんは僕なんかとは比にならないくらい不安だろう。
両親は植物状態、僕には秘密にしてたことがバレて、何が起きるかまったくわからないそんな状況。
だからこそ僕は彼方ちゃんを安心させられるよう精一杯の自信を持って話しを続けた。
「うん。実はもう決まってるけどね」
よくわからないといった様子で首を傾げる彼方ちゃん。
「どうするんですか?」
首をやや傾けたまま彼方ちゃんが問いかけてくる。
「ご両親に会いに行こう!」
と、親指をグッと立てて僕は言った。
僕の考えはこうだ。
とりあえずご両親の状態をよく知っておきたい。彼方ちゃんも話によると、病院に運ばれてから最初の三日間以来一度も会いに行けてないらしいからご両親に会いたいだろう。
そして病院の連絡先を知り、僕の連絡先を病院に伝える。
病院側に連絡先を伝えておけば、ご両親が目を覚ました時にすぐに病院に迎えるし、考えたくはないがご両親にもしものことがないとは言い切れない。
なので僕は状況を変える第一歩として病院に行こうと提案した。
彼方ちゃんの返事を待ちながら表情をうかがう。
「でも……病院は遠いですよ。お金が……」
やはりこんな時でも彼方ちゃんは遠慮した。
顔を下に向け、声はやや小さく、僕に迷惑はかけまいと自分の意見を押し殺してまで彼方ちゃんは遠慮した。
こんな時ぐらい素直になったらいいのに、まあそこが彼方ちゃんのいいところなんだけど。
「大丈夫。僕が何とかする!」
僕は自信満々な表情と声で答える。
彼方ちゃんが一筋縄でいかないことは今まで彼方ちゃんと過ごしてきたこの数日でよくわかってる。
彼方ちゃんが辛いことがあって、優しさを素直に受け入れられなくなっているのもわかってる。
でも……だからこそ僕は自分の意見を少し強引に押し通そうとする。
最初の頃のように無理にでも優しさを受け取ってもらって、彼方ちゃんが嫌と言っても彼方ちゃんが心では本当に望んでることを僕なりに考え、実行する。
それが今の僕にできる最大限の行動だ。
彼方ちゃんの幸せな生活と笑顔を取り戻すために
「でも……もし向こうで親戚の人に見つかったら……」
彼方ちゃんがどうにか理由をつけて病院に行かなくなるよう僕を説得しだす。
でも、僕は彼方ちゃんがどんな理由を並べようとこの考えを変える気は微塵もない。
「大丈夫。僕が話をつける!」
僕がまた自信を持って答える。
「でも……でも……でも……」
必死に案を出そうと彼方ちゃんが慌て始めた。
そこに僕はとどめの言葉を放つ。
「大丈夫っ!!」
「は……はい。佐渡さんの言うとおりにします……」
諦めたように肩を落とす彼方ちゃん。
でも僕は見逃さなかった。下を向く一瞬に見えた
彼方ちゃんの小さな笑顔を―――




