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「人間の世界で、デパートと呼ばれる建物でございます。ヘレナ様には、お城なんかよりも、もっと相応しい物かと存じます」
外観は気に入った。
キラキラ、ぴかぴかしている物は、昔から大好き。
それだけでなく、何やかやと飾り立ててある。
「どうぞ、中にお入りくださいませ」
私は、わくわくドキドキして、中に入った。
外も大きいが、中はもっと大きくて、広い。
「ヘレナ様には必要ありませんが、一階は、化粧品売り場でございます。必要は無いけれど、興味はおありでしょう」
陽斗は、滑るように、私をエスコートしていった。
私は爪も美しいが、その爪を装飾するものは、珍しかった。
食料品売り場には、驚くばかりの量の食べ物が、できたばかりの状態になっていた。
「お好きな物を、お召し上がりください。食べ物は、もはや、必要な物ではなく、楽しむためのものになってしまいましたが」
衣料品売り場も面白かった。
様々な民族衣装や、下着まで取り揃えてある。
「ヘレナ様がお好きな物をそろえてみました」
「わあ、きれい~。美しい~」
宝飾品売り場には、いわゆるお宝がいっぱいだった。
「もう、誰も、着飾る必要はありませんが、たまには、自分を飾ってみたくなるかもしれません。ま、ヘレナ様には、必要ありませんが」
「わあ、朱音達が好きそう」
温水プールの階も、海の階もあった。
動物になって走り回れそうな、校庭みたいな階もある。
そして、最後に、真っ赤なカーペットを敷き詰めた部屋に、お姫様が眠るような天蓋付きのベッドがあった。
「ステキ。こういう寝床が欲しかったの」
皆が眠っている間に働いていた、自分の過去を思った。
寝床なんて、必要なかった。
なぜか、私は、陽斗にすがって、泣いていた。
「あなたも、ヘリオスといい勝負ね」と私は言った。
「自分達のことだけ考えればいいのに」
「ヘリオス様を見ていて、もっとよく考えなければならない、と教えられました。ジャーン」
きゃ~~~と私は叫んだ。
そこは、昔、私が落ちたサボテン畑に似ていた。
一面のサボテン達。
天井が太陽の光になっている。
「ヘレナ。綺麗~」
「ヘレナ、可愛い~」
「ヘレナ、幸せ~」
陽斗と私は、サボテンになり、サボテン達に混じって、幸せになった。
時はゆるやかに過ぎていき、今の幸せが、ゆるゆると続いていくようだった。
「ヘレナ様の幸せが、私の幸せ」と陽斗が言った。
私に相応しい美しい男。
「私の幸せが、陽斗の幸せ」と私も言った。
私は、なぜ泣いているのだろうか、悲しくもないのに、幸せなのに。
「う、いけない。私まで涙が出てきた」と陽斗も泣いていた。
「私は、かつて一度も泣いたことなど無かったのに」
「美しい、死神~」
「泣いた、死神~」
「幸せな死神~」とサボテン達は歌う。
「ヘリオス様は、朱音様に、家族をお作りになるのでしょう」
「私、もういいわ。結婚式も新居も」と私は言った。
だって、もうこれ以上、何もいらないし。
「私もです」と陽斗が言った。
了




