ミッション5 専属騎士を決める①
王城に来て1ヶ月。
部屋を移動してからはほとんど王宮メイドに会うこともなく平和に過ごしていた。
なんでも、ニユが総括メイド長に掛け合って、ダリア宮メイド以外の使用人が2階に入ってこれないようにしたらしい。
その代わり掃除メイドが来ないから2階の掃除はダリア宮のみんなでやってくれるんだって。
ニユがさまざまな方面に掛け合ってくれたおかげで、召使いの人達と料理人のおじいちゃんは抜きにはなったけど前までのダリア宮みたいにみんなでご飯が食べられるようになったの。
「ナディア様、本日はベイル様がお昼前にいらっしゃるそうです。」
「そうなの?」
「はい、大事な用事があると…。」
「わかった、じゃあ今日は流石にいつものワンピースは着れないわね。」
ご飯を食べたあと、ニユたちと一緒にクローゼットを開く。
お父様やベイルお兄様が大量にドレスをくれたから、私は一度も自分でドレスを買いに行ったことはないけどたくさんのドレスがある。
「これにしようかな。まだ一回も着てないしお兄様からもらったものだし。」
「では、アクセサリーは青系統でお選びいたしますね。」
「うん!」
フェネが選んでくれたブローチと帽子を身につけて、私はお勉強のため部屋を出た。
◇
お勉強が終わったのはまだお昼前というには早い時間だったけど、部屋に戻るとすぐにお兄様がやってきた。
「ナディア、今いいかな?」
「あ、お兄様!早かったですね?」
「思ったよりやらないといけないことが早く終わったんだよね。」
そう言ってお兄様はソファに座り本題を話し出した。
「ナディアも護衛騎士欲しくない?」
「護衛騎士?」
「うん、今までいなかったけど…ナディアも王族だからね。あらゆる危険に備えて護衛騎士を付けたらどうかって父上に相談したらいいよって言ってた。メイドたちも護衛騎士いた方が安心だよね?」
「今まで私たちが護衛も兼ねてましたから特に必要性は感じておりませんが…護衛の専門職がいた方が安全ではありますね。」
「ということでナディア、今日ご飯食べ終わったら一緒に騎士の稽古場行こうね。」
さっそくお昼ご飯の後お兄様と一緒に稽古場にやってきた。
私は初めてくるけど、お兄様はそうじゃないみたい。
中に入ると、大勢いた騎士たちは一斉にこっちを向き…
「ベイル殿下、ナディア殿下にご挨拶申し上げます!」
と大合唱。
そして、すぐに練習を再開した。
「ねえニユ、この人たち私に敵意向けてない…。」
「あ、それは…実は私この前余ったクッキーを騎士様に差し入れに行ったんです。その時にみなさん気に入られて。騎士様たちの間ではナディア様がお菓子を作っていることは有名なんです。ベイル様がよくお話しされているようで。」
「そうなんだ。」
ケイトがそういうと、ニユがケイトに「何故ナディア様に相談しなかったの!?」とでも言いたげな顔を向けていたので慌てて止めさせる。
どうせ余るなら活用してほしいわ。
「どう?誰か気になる騎士はいた?」
「ここって男性しかいないんですか…?」
「一応女性騎士もいるよ。いるんだけど…。」
そう言ってお兄様は苦笑いしながら右端の方を指差す。
「近衛騎士団にいるのはあの騎士だけだね。女性ってだけでだいぶ軽んじられているみたい。正直、ナディアの騎士にするのは不安があるというか…。」
その騎士は他の騎士から暴力を受けていた。
「止めないんですか…?」
「僕らが止めに入ったところで変わらないよ?」
とりあえず近づいてみる。
「…!」
その女性騎士は一瞬鋭く相手を睨みつけ、取り囲んでいた1人に回し蹴りをした。
けれどその後すぐ他の騎士に殴られて倒れ込んでしまう。
「ねえ、騎士の練習ってこんなことまでするの?痛いだけじゃない?」
「…!?な、ナディア殿下!いえ、これはその…。」
私が声をかけると、一斉に騎士たちが女性騎士から離れる。
「女性騎士さん、あなたのお名前は?」
「は、はい!近衛騎士団第5隊所属エリサ・ユーリと申します!」
エリサね。
私、この人がいいな。
「お兄様!エリサ・ユーリを護衛騎士にして欲しいです!」
「…わかった、その通りに父上に言っておくよ。」
お兄様はそう言って、行こうか、と私の手を引っ張る。
唖然とする騎士さんたちにお邪魔しましたー!と言い、私もお兄様について城の中に戻った。