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妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。  作者: バナナマヨネーズ
第三部

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第四章 とあるメイドの独り言 2

「ミュルエナ・アリス。お前のことは調べさせてもらった。母親のことは安心していい。お前が真面目に働くというのなら、ここの使用人として雇ってもいいがどうする?」


 女こと、ミュルエナはカーシュの言葉に口を開けたままでぽかんとした表情をしていた。

 ミュルエナからの反応が返ってこないことにイシュミールは、心配した表情でカーシュに言った。

 

「やっぱり、突然知らない屋敷で雇うと言われても嫌よね……。彼女こんなに怯えた表情をしているわ。わたし、また怖い思いをさせてしまったみたい……」


「姫……。それはないと思いますよ。この顔は、怯えているのではなく、驚いている表情だと思います……」


「えっ!!まぁ、ごめんなさい。わたし勘違いを……」


「いえ、今のミュルエナの顔は腫れ上がっていて表情を読みづらいですから仕方ないです」


 二人のそんなやり取りを聞いていたミュルエナは、ようやく現実に戻ってきた。

 そして、普段あまり使わない頭をフル回転で動かした。


「どうしてこんな見ず知らずの、小汚い女なんかに……。それにあんなに痛かった体も今は痛みがない。そうなると、いい値段の薬を使っているということだけはわかる。それに、母さんのことも……。あたしにこんなに親身にしてどんな得があるっていうの?はっ、まさかあたしの体が目当てなの!!あの男……ボロボロのあたしに一目惚れして手元に置くために、優しそうな美少女を丸め込んで……。なんて恐ろしいおとk―――」


 そこまで考えたところで頭上に衝撃が襲ってきた。頭を押さえながら顔を上げると、カーシュが右手で手刀をかましてくれたことが分かった。

 少し涙目になりながらミュルエナは、カーシュに恨みがましい声でいった。

 

「くっ、どうしてあたしの頭にチョップしたのさ!あたしは何もしてn―――」


 そこまで言ったところで今度は額にデコピンをされたミュルエナは口をつぐんだ。痛みはなかったが、けが人にどうしてこんな酷いことをと考えてところでカーシュに言われたのだ。

 

「くっ、どうしてけが人にこんな酷い仕打ちを……。この騎士は人を痛めつけることに快感でも感じているの?はっ、まさかのドS様!?」


「全部口に出てるからな!!なんだ、体が目当てとは!!全然お前の体なんかに興味なんて無い!!惚れてもない!!姫を丸め込んでもない!!それにドS様ってなんだ!!」


 カーシュの言葉を聞いたミュルエナは、驚愕した表情で言った。

 

「はっ!この騎士……、いま、女の体に興味がないと……。確かに言ったわ。まっ、まさかその見た目と歳でまさかの童t―――」


「違うから!!!経験済みだ!!」


「そうなの?はぁ、よかった……!いえ、そうなると、衆d―――」


「全然違うから!!俺は、女性が好きだから!!」


「そうなの?」


「そうだ。俺は至ってノーマルだ」


「その前に、アブは付かないの?」


「付いてたまるか!!」


「そうなんだ」


 そう言ったあとに、部屋には静寂が訪れた。しかし、ここでカーシュは自分の行動で一点だけ後悔があった。

 イシュミールにとんでもない会話を聞かせてしまったということにだ。

 そして、後悔しつつもイシュミールの表情を見るとニコニコとしたままカーシュとミュルエナを見ていたのだ。

 その表情を見て、カーシュはイシュミールを褒め称えた。

 

(流石です姫。あんな低俗な話を聞いても動じないとは)


 そんな事を思っていた時期がカーシュにもあったのだ。しかし、イシュミールの次の言葉に膝から崩折れたのだった。

 

「二人とも仲良しね。でも、体が目当てとは正しい言葉遣いではないと思うの?わたしは、貴方の労働力を貸して欲しいと思っているの。それとカーシュ?『どうて』と、『しゅど』って何かしら?わたしの知らない言葉だったからぜひ意味を知りたいわ。二人が知っているとなると、一般的には知っていて普通の言葉ってことだと、今後殿下の妻となった時に知らないままでは、殿下に恥をかかせてしまうわ。他にも、『ドエス様』は、どちらの方のことかしら?」


 イシュミールの質問を聞いたカーシュは崩折れた状態で頭を抱えていた。

 それを見たミュルエナは、腹を抱えて笑っていた。

 

 あまりに、カーシュが答えをくれないものだからと、イシュミールはミュルエナの方に向き直って質問をした。

 

「お願い。ミュルエナさん」


 イシュミールのキラキラと煌く美しい碧色の瞳に見つめられたミュルエナは、顔を赤らめた後に、ふいっと顔を逸らした。

 

「いっ、言えません。あたしの口からは言えないです。意味は、そこのイケメンに聞いてください」


 その言葉を聞いたカーシュは、視線でミュルエナに訴えたのだ。

 

(おい、お前の所為でこうなったんだからお前が説明して然るべきだ)


(いやいやいや、無理だって。あんな無垢な美少女になんてことを教えようとさせるのさ!!このドS)


 お互いに視線で擦り付けあっていると、部屋にノックの音が鳴った。

 イシュミールの許可を得た侍女が部屋に入ってきて、イシュミールに何かを伝えた。

 それを聞いたイシュミールは、驚いた表情をした後に嬉しそうな顔で微笑んだのだ。

 

「まぁ。殿下が……。お通しして。直ぐに行くわ」


 イシュミールの言葉を聞いた侍女は直ぐに部屋を出ていった。

 

「姫?まさか殿下が?」


「ええ、約束をお断りしたことを心配して来てくださったの。ミュルエナさん、もし貴方が良いなら、この屋敷で働いてみない?」


 改めて、イシュミールにそう言われたミュルエナは、今度は直ぐに返事をした。

 

「はい!!あたしここで、お姫様の元で働きたいです!!」


「ふふ。ありがとう。わたしは、イシュミール・アックァーノよ。そして、守護騎士のカーシュ・セルゲイよ。これからよろしくね」


 こうして、ミュルエナはイシュミールの元でメイドとして働くこととなった。

 そして、部屋から出ていく前に、有耶無耶に出来なかった質問を再びされたカーシュは、冷や汗をかきながら言った。

 

「姫、その言葉は殿下に決して言っては駄目な言葉です。特に、『どうて』の方は」


「まぁ、そうなの?カーシュが言うならそうなのでしょう。それで、どうして『どうて』の方は特に言っては駄目なの?」


「……、殿下がその言葉に当てはまると思われるからです……」


「カーシュは、『どうて』ではなくて殿下は『どうて』なの?」


「……、はい。恐らく……」


「よくわからないけど、わかったわ。殿下を傷つけるような言葉を知っていても意味はないから、少し残念ではあるけど忘れることにするわね」


「そうしてください……」


 イシュミールの言葉にホッとした表情で返事をしたカーシュだったが、心のなかではカインに対して盛大に謝罪を繰り返していたのだった。

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