第20話 クルト
「エリウィン副所長!ユーフェイ所長と襲撃者の再捕捉に成功しました!」
「主モニターに映せ!今すぐ!」
指示通りすぐに世界全体を映していた主モニターが学園前に切り替わった
主モニターには捕捉出来なくなったときと同様のものと思われる黒い穴がありそこからユーフェイ所長が、そして少しあとに襲撃者も現れた
「この間所長に配られた『テレクス』で所長に連絡を……え?」
テレクスとは通信系統のスキルを特殊な箱に入れ、離れていても連絡を取れるように所長が作り出したものである(第13話に一瞬登場)
そのテレクスを使い所長に連絡を取ろうとしたのだがそれは叶わなかった
なぜなら…所長と襲撃者がいきなり消えたのだ。あたかも最初から何もなかったかのように
『お会いできて拙者、感激なのですよぉぉぉ!“魔王 アークトルディア”様ぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
再度沈黙…ムサシはそれを自分の姿が違うせいで分からなかったと解釈した
『拙者、ムサシですよぉぉぉ!“転生”に失敗して今は仕方なくこのゴーレムで話しているのですよぉぉぉぉぉ!!』
「え…あの…魔王って…なんのこと…?」
なんとか声を出せたのはさっきから謎の喋るゴーレム(?)に話しかけられていたアクトだった
『まだ目覚めていないのですかぁぁぁ…残念ですぅぅぅ…』
ションボリと肩を落としうなだれている子供サイズのゴーレム(?)の扱いに困っていると
「おやみんな揃って何しているのかね?」
「ユカルド先輩、ここはどこですか?」
何の無かった場所からいきなり現れたのはユカルドと…知らない青年だった
「クルトちゃん…!?」
『なっ…!』
『おー!もしかしてクルトー?』
「自分の名前を知っている者が3名…話し方とユカルド先輩の話から推測すると…順番に師匠、ソフィー、ファニっちかい?」
「クルトちゃんなのね…?」
「えぇ、お久しぶりです。師匠」
『クルトっ!なぜ“転生”を使わなかったのですか!?私を…どれだけ心配させればっ!』
「すみませんソフィー…ですがあの状況で自分まで“転生”を使ってしまったら世界は終わっていましたよ?」
『ぐっ…!確かにそうですが…それとこれとは…!』
ソフィアがこんなに感情的になるところは初めて見た
「本当に申し訳ありませんソフィー…ですが自分は今こうして元気にしている、これだけでは不十分ですか?」
『そう…ですね…えぇ、そうです、では改めておかえりなさいクルト』
「えぇ、ただいま戻りましたよ、ソフィー」
クルトとソフィアはそういいながら微笑み合った(ソフィアは未だ顕現出来ていないので雰囲気だけだが…)
『えークルトなのー?本物ー?』
「はいクルトですよ、ファニっち」
ファニファは見た目相応の無邪気さでクルトの周りを回りながら楽しそうに聞くと優しく微笑みながら答えた
『本物のクルトならあたいを捕まえられるはずだー!捕まえてみろー!』
「ははは、追いかけっこですか。懐かしいですね」
ファニファが全力で走り始めると消えたかのような速度まで一瞬に加速した
「おいおいおい…あれに追いつけると思うか?アクト」
「いやいやさすがに…ってクルトさんはどこに行った?」
さっきまでクルトさんがいたはずの場所にはもうすでにその姿はなかった
『アハハ!やっぱり本物のクルトだー!』
「確かめられたみたいで良かったです」
「「はぁ!?」」
ファニファはかなり離れた場所でクルトに手を掴まれて捕まっていた
『ねーねーまた追いかけっこやろー!』
「すみませんね、ファニっち…これから大事な話があるのでまたあとで遊びましょ?」
『約束だよー?』
「えぇ、約束です」
ファニファはすごく満足そうにクリフェンのところに戻ってきて『早くクリフェンともあのくらいのレベルで遊びたいな』「いや、明らかに人外の域だろ!?」などと楽しそうに話している
「遅くなってしまい申しわけありません…貴方が予言の子とそのパーティーメンバーですね?」
クルトはアクトに目を合わせ、そのあとにクリフェン、セレス、シャドウ、エザールを見た
「予言の…子…?な、何を言ってるの…?ムサシさんといいクルトさんといい…」
「アクト君、予言っていうのは学園長ら魔操師たちに信じられている未来への道筋とその未来の結末が記された言い伝えがあるんだよ」
「んなっ…!?なぜ君がそのことを!?」
アクトの疑問に対して答えたのはシャドウだった
そしてシャドウの返答に驚愕したのは意外なことにアクトではなくユカルドだった
「ふむ…ユカルド先輩。彼のことは予言には書かれていなかったと思いますがイレギュラーですか?」
「彼は自動魔法「存在操作」を使うんだよ、もしかしたら予言にすら存在を認知されなかったのかも知れんな」
「え…僕の存在って予言にすら記されていなかったのか…」
「あれ?シャドウ?どこ行った…あ、いたわ」
シャドウがいきなり目の前で意識から「存在」を薄められ見失ったがすぐに見つかった
前までよく見られていた光景だが最近では珍しく隅っこでうずくまっていたのだ
「ほぅこれが「存在操作」の力か…!」
「これは想定外ですよ、ユカルド先輩!こんなイレギュラー…もはや予言に従う必要なんて…」
「諦めない心を持っているのは素晴らしいことだが諦めも肝心だぞ、クルト」
「くっ…!」
ユカルドの強い口調にクルトは苦い顔をして黙り込んだ
その後予言の話をするなら前々から言っていた魔法の概念やこの世界の過去についての情報をアクトやクリフェンの頭に直接送ろうと言うことになった
「あ、あの学園長…私やシャドウはどうすれば…?」
「ふむ…2人にはクルトに共有してもらうといい。彼はこの分野において私やギシュルを含む全魔操師の中で随一だ、頼めるか?クルト」
「自分ですか?もちろんです!お任せください!」
「よろしい、準備はいいかい?アクト君、クリフェン君、セレス君にシャドウ君」
「「「「お願いします!」」」」
「うおっ!?最近の学生ってこんなにも元気がいいものなんですか?学園長殿?」
「そう…なのか…?どうなんだ、ギシュル」
「あの子達…授業中もあのくらい元気ならみんな助かるのに…」
保健教師、学園長、学園長の後輩…3人が同時にため息をついていた。
まぁ楽しみなのだから許して欲しいと思う
「まぁ…そろそろ始めるとしようか」
「えぇ、そうね…アクちゃん、クリちゃん、セレちゃんにシャドちゃん。ちょっとここに座ってくれるかしら?」
4人ともギシュルの指示に素直に従い並んで地面に座った
「ソフィアはアクト君の、ファニファはクリフェン君の情報量の調節を頼む」
『任せなさい』
『ユカルドからの指示ってのが少し癪だけどクリフェンのためならあたい頑張る!』
「シャドちゃんの情報量の調節は…ムサシ、あなたに任せるわ」
『お任せあれなのですよぉぉぉぉぉ!』
「あ、あの…私はそうすれば…?」
「そうだね…セレス君にはクルトに調整しながら送らせるとしよう。お願いできるかね、クルト?」
「任せてください、ユカルド先輩!この身に誓い上手く調整します!」
「決まりだね。「共鳴」を起こして効果を上昇させるために詠唱しようと思うのだが構わないかね?」
「懐かしいわね…「共鳴」なんて使うのいつぶりかしら?」
ギシュルは嬉しそうにピョンピョン跳ねている
…頼むからその見た目で女の子飛びしないでくれ
「ユカルド先輩に師匠、使う魔法は“記憶共有”でいいですか?」
「それでいいだろうね」
「その“記憶共有”以外にはどんな魔法が…?」
アクトは好奇心が抑えられず聞き、答えたのはクルトだった
「他には“記憶融合”などがありますが…まぁこの辺りも“記憶共有”を終えれば知れることです。早速始めましょうか」
ユカルド、ギシュル、クルトの3人は目を合わせ同時に頷き…
「「「彼の者に己が記憶を見せるための力を与えたもう!“記憶共有”!」」」




