第16話 実戦訓練開始
「今、メーディアが…」
「姉ちゃんが…川の向こうで手を振ってた…」
「修道院で殺した奴らが…こっちに来いって…地獄に落ちろって…」
上から順にアクト、クリフェン、エザールが虚ろな目をしながらうめいていた。
「この程度でダメになるのか…やはり最近のやつは貧弱だな」
「ユカちゃん?さすがにやりすぎだと思うわ。今のはたとえ状態異常耐性を獲得してる魔操師でも壊れるわ」
「アクト君!?大丈夫!?」
「アクト様!!今治癒を…!」
セレスは自分の装備であるタクトを取り出しアクト(クリフェンとエザールはおまけ程度)に向けると詠唱を開始した
「白は白く、黒は黒く…万物は戻る。原初に戻る。あるべきものはあるべきところへ、全ては…戻る 「キャリッジ リターン」!!」
時間は少し戻る
実戦訓練の相手をユカルドに変更することが告げられてからすぐに始めると思いきやルールの確認とさすがに分が悪いと感じたらしくハンデの説明を始めた。
「この訓練で君たちの勝利条件は私に一撃でも与えることだ。どれだけ小さいダメージでも当たれば君たちの勝ちでいい」
「え…それだけ?」
「へ!余裕だぜ!」
「おいユカルド、てめぇ舐めすぎだろ」
アクト、クリフェン、エザールが次々と声をあげる中…
「あ、あの…1つよろしいですか?」
恐る恐るといった感じで手を上げたのはセレスだった
「セレス君?どうしたんだい?」
「アクト様の勝ちとおっしゃっていましたが勝った場合何かあるのでしょうか?」
「いい質問だね、正確にはアクト君「たち」だけど…そうだね、君たちのいうことを1つだけ聞こうか。もちろんセレス君とシャドウ君のいうことも1つだけ聞こう」
「あらユカちゃん、アタシは?」
「ギシュルのいうことは聞かんよ…経験則的な理由からね」
「あらユカちゃんったら、い・け・ず♡」
その反応にみんなが吐き気を催す…かと思いきやみんな無反応だった
「あら、みんな無反応だなんて寂しいわ」
「悪いなギシュル、スキル『空間操作』で空気振動と光の屈折を操作してみんなにはお前の声と姿は見えないようにしたんだよ。あの瞬間だけな」
「学園長大丈夫ですか?顔色が悪いようですが…」
「セレス君…ありがとう大丈夫だよ、少しこの世のものとは思えないものを見ただけだ」
「おいユカルド!そろそろ始めようぜぇ!」
「なぁクリフェンならどんないうことを聞いてもらう?」
「そうだな…ちょっと魔操師について興味出てきたから魔操師の歴史の話でもしてもらおうかな」
「お、それいいな!じゃあ俺は使えるようになる魔法を全部教えてもらっおうっと!」
『ねーねーユカルド!そのいうこと聞かせるのってあたいとかソフィア姉にも有効?』
「あぁもちろんだとも、例外はギシュルだけだからな」
『私は実体がないので参加できませんが良いのですか?』
「もちろんだ、それとファニファも参加したいなら参加していいぞ」
そんなこんなで話もまとまっていき…ついに実戦訓練も開始されることになった
「では実戦訓練…始め!」
開始の合図を任されたのはシャドウである。我が出番きたり!とシャドウが名乗り出たためそう決まったのである
合図と同時にアクト、クリフェン、ファニファ、エザールの4人は駆け出した
「頼むよソフィア、《ギリアス》「部分侵食、両足」!!」
『任せなさい!』
『クリフェン!話し合ってる時間ないからあたいと意識共有するよ!クリフェンが発動させて!』
「了解!発動「意識共有」!」
「ガキどもはいいよな、誰かがいて!俺様は1人の方がやりやすくて好きだけどよぉ!」
「ほぅ…部分侵食に意識共有、そしてエザールは自分の特化技能を最大限に生かした接近戦に持ち込むつもりか…まずは個々の実力を見るとしよう」
そう評価しながらユカルドはスキル「分裂」を使用し“5人”に分裂し全員を一対一で戦わせるために、そして残る“1人”は全体を見渡すために魔法「浮遊」を使った(空を飛ぶスキルを知らなかったために仕方なく魔法を使った)
「『「な…!?」』」
驚きのあまりファニファを除く3人は足を止めてしまった
なんせいきなりユカルドが増えたかと思ったらそのうち1人は空に浮かび他はそれぞれに向かって走ったきたのである
『アクト!早く動きなさい!あれはユカルドの使うスキル「分裂」です!』
「はっ…!ご、ごめんソフィア!」
『……!』
「…!」
ファニファは目線で訴えて(実際は意識共有で)クリフェンは再び走り出した
「ぐっ…!」
アクト、クリフェン、ファニファはギリギリでユカルドの攻撃を避けたがエザールは反応が遅れたため腕を顔の前でクロスさせて防御することでなんとか耐えた
防御した瞬間にエザールの両腕は砕け散ったがみるみるうちに「再生」していった
「さすがにソフィアとファニファは反応が早いな…ダメージを与えられたのはエザールだけだが防御し「再生」までされたか…」
空中に浮いているユカルドは感心したように呟いたが…
「おいユカルドてめぇ!増えやがったらクリア条件どうなんだよ!」
「まぁそう怒るなって…今のはただの小手調べだろう?」
いきなり増えたことにキレたエザールだがその気持ちにはアクトたちも同じだった
「君たちは確かに個々では強いだろうけどね…個人での戦い方が分かれば全体での戦術も見えてくるだろう?」
「全体での…戦術…?」
「え…なに…チーム戦でもやらされるの…?」
「ったくめんどくせーな、このメンツでチーム戦とか無理だろ」
エザールが小さく呟いた愚痴をユカルドは聞き逃さなかった
「無理じゃない、やるんだよ」
ユカルドは怒気をはらんだような、しかしながら焦っているような、そんな言い方だった
『ユカルド、答えなさい。一体なんの対策でこのチームを組ませようとしているのですか』
「そうやってすぐに答えを知ろうとするのは君の悪い癖だよ?ソフィア」
『いっつもそうやってはぐらかすじゃん!だからあたいはユカルドが嫌いなんだよ!』
「まぁまぁ落ち着いてよ、ファニファ」
「ユカちゃん、隠すことないでしょ?」
ギシュルの言葉に堪忍したようにユカルドは手を上げながらスキル「分裂」を解除した
「話す前に君たちは呪われし装備というのは知っているかね?」
「え、えぇ…まぁ…教科書に載ってましたから…」
いきなりの質問にしどろもどろになりながらもアクトが答えた
「ではその呪われし装備についてどのくらい知っている?」
「強力な力を得る代わりに使用者は呪いにかかるということくらいしか…」
授業の内容を思い出そうとしているのか上の方を見ながらクリフェンが答えた
「ではなぜ呪われるのかは知っているかい?」
「ユカちゃん、そこまでは授業カリキュラムに組み込まれていないわ」
「ふむ…ソフィアやファニファは知っているね?」
『当たり前です』
『目の前で見せられたんだよ!?忘れるわけないじゃん!』
「まぁまぁそう怒るなって…ではアクト君とクリフェン君に教えおいてくれるかい?」
『そうやってまた面倒ごとを…』
「ソフィアごめんね…俺が無知なばっかりに…」
『なっ…!ア、アクトはなにも悪くありませんよ!大丈夫です!私がしっかりと教えますから!』
珍しく狼狽しながらソフィアはアクトを慰めている
『ユカルド…まぁたあたいとソフィア姉に…!』
「なぁファニファ、呪われし装備について教えてくれないか?」
『え…でも…それはユカルドに…』
「俺は…ファニファに教えてもらいたいんだよ。それとも…俺に教えるのは嫌か…?」
『そんなこと…!分かった!クリフェンにはあたいが教えてあげる!』
「ありがとう、ファニファ」
『えへへ』
ソフィアとファニファはお互いの相棒によって了承しユカルドは満足気に頷いた。
「これで呪われし装備については大丈夫そうだな…さてと、そろそろこの訓練も終わらせるかね」
ユカルドがニヤリと不気味な笑みを浮かべたので全員青ざめながら代表としてアクトが質問した
「終わらせるって…つまり俺たちの勝ちってことでいいんですよね…?敗北条件とか聞かされてませんし…」
「ん?そういえばまだ言ってなかったね。君たちの敗北条件は君たち全員が戦闘不能になった場合だが…少し変更しよう。そのあとの勝敗宣言はシャドウ君…君にお願いしてもいいかね?」
「はい!僕なんかで良ければ喜んで!」
……この中でシャドウが一番生き生きしているのはなぜだろう?
「では私はこれから精神魔法を使う、それに耐える者が1人でもいたら君たちの勝ちにしよう」
「ち、ちなみにその魔法に対抗するにはどうすればいいか教えてもらうことは…?」
教えてはもらえないだろうとクリフェンは質問したが…
「簡単なことさ。己を強く持て、以上だ…具体例を挙げるとすれば誰にも惑わされないと強く覚悟を決めるとかだが…やはり実戦あるのみ、だろ?」
ユカルドの笑みがさらに深くなり…
『すみません、アクト…少しの間深層意識のさらに深いところに潜ります』
『クリフェンごめん…ちょっとあたいの家に帰るから…ユカルドの魔法が終わったら呼んで…』
2人揃ってそう宣言するとスッとソフィアの気配とファニファの姿が消えた。魔法「念話」とスキル「守護神現化」を強制的に解除されたらしい
「え!ちょっ!ソフィア!?」
「ファニファもなんで!?」
「では行くぞ?精神崩壊Lv1!」
そして話は最初に戻り3人はうめいていた…
実戦訓練が始まるまで時間がかかり本当にすみません…
組み込みたいことが…多すぎるんです…!
ここからは物語を大きく動かしていこうと思っていますので何卒ご贔屓に…!




