94、妖精
ぴりぴりぴり。
紙を破るようなその音は以前にも聞き覚えのある。
音のした方を即座に見ると、今回は空間に曲線が描かれている。
だが徐々に角度を変えていくそれは、円を空間内に描いているようだった。
そこで悲鳴がある。
「ぎゃああああああ、何だああれ」
「あ、あれ、あれは聞いたことがあるぞ。“魔族”が出現しようとしているんじゃないのか!?」
口々に叫ばれるその言葉。
悲鳴が連鎖し、人々が我先にと逃げ出した。
後に残ったのは俺達とクレアとサラ、そしてここの警備の人達だった。
警備の人達はこう見えても騎士団に属しているらしく、自分たちの町は自分たちで守るという気持ちでいるらしい。
そういった真面目な現地の人もいるようだと俺は、先ほどの料理人たちも思い出しながら、小さく頷いた。
やがて大きな円形状の穴が現れると同時に、中から紙のようなものが噴き出してくる。
風に乗るようにそれらは遠くへと広がろうとしている。
この前とは違う形の“魔族”が現れたのだろう。
だが、こんな広い範囲に拡散されては……そう俺が思っているとそこで、
「“周囲空間”を閉鎖します。閉鎖時間は七分です」
「ライカ?」
そこでライカがそう呟いて、周囲に透明な壁ができる。
そこで拡散は止まって今度はい内側に戻ってくるようだった。
だがこの力は一体……。
寿也や百合も様子を見ているようだった。
そこでライカが、
「この世界の“妖精の女王”より、サポートするように言われて作られた、それがライカです。あなた方は、サポートをするに足りると判断されました」
「ライカ?」
寿也のその言葉に、ライカは笑った。
「手助けを頼んだとはいえ異世界人がどんな人物か分からない。そういった懸念がありましたが、あなた方は十分に信頼が足りると“私”は判断しました」
そう言ってライカのような誰かは笑う。と、
「現在“私”はライカと名付けたこの個体を通して連絡を取っています。私は“妖精の女王”、この世界を守護するものの一つです。……ですがこの子は私の生み出したものに変わりありません。大切に扱っていただいてありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします」
そう告げて、その人物らしきものは消えた。
そこでクレアが、
「“妖精の女王”、まさか実在したなんて。この世界を守護する女神以外の……その人の配下だったなんて」
といったように説明をしてくれた。
どうやらこの世界を守る女神側の何かであるらしい。
そのあたりの説明とか、魔族関係の説明もこうなるなら女神さまはもう少し説明してくれてもいいんじゃないか、と俺は思った。
だが、この魔族の破片が飛び散らないようにしてくれただけでも幸いかもしれない。
そう俺が思っている最中に、先ほど噴出した魔族の紙のようなものが一つの形に収束していく。
以前と同じような不気味なマネキンのような形の存在だ。
わざと人間を模しているその怪物の姿に、気色の悪さを覚える。
そしてそれはゆっくりとまるで人が地面に立つように、降り立ったのだった。
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