93、カレーとシチューとピザ
まずは熱々……というよりは、少しぬるくなってしまったピザを切り分けて運んでいく。
ライカが味見を従っていたのでそのうちの一つを渡すと、嬉しそうにかじりついて、チーズを伸ばしていた。
モッツアレラチーズはこうやって焼くと本当によく伸びる。
真っ白な塊のようになっているあれだ。
それと一緒にピザ用のチーズと呼ばれるものをかける。
あの白いチーズだけだとあっさりしすぎているので両方使う。
ライカの様子を見ている限りこの世界の人にも受け入れてもらえそうだが……そう思ってみていると、審査員たちも次々と口にする。
「んん、チーズが伸びる」
「トマトソースに野菜、チーズ……この組み合わせはたまらない」
といったように次々と食べては嬉しそうにそう言ってくれる。
ピザの味はおおむね好評のようだった。
この世界にある素材でも作れそうなもの、というものは審査の点数としては加点対象にはならないものの、好感は持ってもらえたようだった。
また結構気に入ってもらえたらしくお代わりをしてもらえた。
ただ量が十二等分してしまったがために、数が少なく、慌てて寿也が次のピザを焼きだした。
今回の戦いは“自称・悪の美食会”のボスがあんな風なことになったので俺たちの勝利は決まっている。
だから気楽にこういった料理を作れるのもいい。
そして寿也がピザを焼き始めるのを見ながら、小さなスープ皿に百合がシチューを盛りつけ、俺は、炊き立てのご飯にカレーをかけていく。
もっとも小皿だが。
気に入ったならお代わりをしてもらえばいいだけなのだから。
そしてカレーに関しては、辛いので苦手な方は食べないでくださいとそう警告しておく。
審査員の人に一人苦手な人がいたが、少し味見をしてもらったが、大丈夫であったらしい。
それからカレーを食べてもらうと、
「このスパイス、とてもいい香りがする」
「辛味もいいわ。肉がとろける……野菜も美味しいわね。それがこの……米だったかしら、このソースがとてもよく合う」
との事だった。
この絶妙な辛味は、癖になるとみんな言っていた。
この世界の人達もカレーが大好きであるらしい。
味覚がやはり俺達と似ている気がするが、これはひょっとして魔法の効果でもあったりするのだろうかと俺は少し考えてやめた。
楽しんでもらえればそれでいいのだから。
そして次に百合の作ったシチューを楽しむ。
「美味しいですね。これはどことなくチーズの香りのするミルクスープ」
「確かに。ですがこの肉の旨さは……あまりとることのできない、“バナナ豚”を使っているのでは」
といった話をしていて、俺はそうだったのかと思った。
そうして、それぞれにシチューやピザ、カレーが美味しいといった話が出てお代わりをする。
それぞれの好みが違っていたので十分にお代わりの分があってよかった……のだが。
そういった料理を楽しんだ直後の事だった。
「……何か変な感じがする」
俺がそう呟くと百合と寿也も、同じように異変を感じ取っていた。
そう話した所で、何かが破れるような音が聞こえたのだった。
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