91、調理中
突然、静止が入った。
何事だろうと俺が思っているとその“自称・悪の美食会”のボスがやってきて、
「その茶色い固形物はなんだ!」
[調味料です。すでに許可ももらっています」
俺はそう返した。
ここでこう言った話が出ることもあり得るかなと思っていたために心の準備はできていたが、さて、どうしようかと俺が思いつつ、現状では相手の出方を見るしかないと結論付けた。
だから調味料と伝えて黙っていると“自称・悪の美食会”のボスが、
「だがそんな調味料は……そうか、異世界のものだな。気色が悪い」
「……心外ですね。この世界のスパイスを使ってもこういった物でも同じようなものは作れます」
「では、その中に入っているものを言ってみろ!」
そうごねだした“自称・悪の美食会”のボス。
そう来たかと俺は思ったがすぐに、
「それは企業秘密です」
「なんだと?」
「これから審査員の方々に味を見てもらってから、売り出しも考えています。やはりこの世界では商品を売る事で、利益を得て生活費の足しにしたいですから」
「う、うむ……確かにスパイスの割合は秘蔵だな。……この世界のものでもできるのだな」
「はい」
「……いいだろう、今回は見逃してやる。どのみち長年作り続けてきた私の鍋にかなうと思えないがな」
そう“自称・悪の美食会”のボスは言って自分の持ち場に戻っていった。
とりあえずカレーは作れそうだった。
そこで時間を見て俺は、そろそろ野菜が煮えていると気づく。
水で冷却をしつつ開いてそこに肉を入れて軽く煮て、
「百合、こっちでシチューを作ってくれ。半分別の鍋に移した」
「わかったよ~。ご飯も炊けたから、これはほかの場所に移動させてコンロが空いた所で……」
そう言って百合がシチューを作る。
正確には市販品のキューブを溶かすだけなのだが、これでいい。
しかし切っている間も謎の光が出てくるな、と俺は思った。
そろそろこの怪現象も何とかならないか、と俺は思うがご令嬢考えてもどうにもならなそうなのでそれ以上考えるのを止めて俺は、自分のカレーを作って味見をする。
「うん、うまい。懐かしい味だ……」
「あれから結構たっているものね。他の場所に行くと何となく日本食が食べたくなる。郷愁ってものかな?」
「そうかもしれない。……寿也、ピザはもう焼けたのか」
そこでピザを作っていた寿也に俺は声をかけると、ちょうど一枚焼きあがったらしい寿也が、それを木の板の上にのせていた。
これからピザカッターで切り分けるのだろうが、そこで寿也が、
「カレーやシチューがあるからピザの量は少なめにした方がいいか? そうなるとこの人数だからこの寮で足りるような気がするが」
「そうだな……もしものことを考えて、もう一枚焼いたらどうか。焼ける時間が分かるなら、もう少し時間をずらして後の熱々のものを出すって手もあるか?」
「それはいいかもしれない、熱々のピザの方が旨いかもしれないが……というかそっちが両方とも出来ているから、もう俺たちの方の審査を始めてもらってもいいんじゃないか?」
そういった話になり、そして俺たちは審査員の人達に許可をもらった瞬間、
「私の方もできたぞ!」
“自称・悪の美食会”のボスがそう言ったのだった。
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