88、作った菓子
こうして、対戦相手のサイコが禁止の果実を使ったことによって、俺たちの勝利が確定した。
ただ、こういった形での勝利は何となく腑に落ちない。
これ、勝利でいいのだろうかと思ったが、とりあえず三回戦の中で二回ほど勝利した。
ボス戦前の戦いであるが、結果として俺達の勝利はより確実になったのは良かっただろう。
ぜいたくを言うべきではないと俺は思うが、それでもこの結果は脱力する。
それにせっかく作ったこれらの菓子はどうしようかと俺は思いつつ、審査員の人達に、
「あの~、このお菓子はどうしましょうか」
「あ、私も食べたいです」
「私もです」
クレアとサラが真っ先に手をあげてくれて、審査員の人達も手を上げる。
そういったことから、審査はなしにはなったが、味を見てもらえることになる。
だからそれぞれを一口ずつの量にして、審査員たちの前にそれを持っていく。
このお菓子でまず目についた白玉が、彼らにとって珍しいものであったらしい。
これは何だと聞かれたため、米の粉をこねてゆでたものです、といった説明にしておく。
実際の白玉粉の作り方はもち米の粉にいろいろな処理過程を施さないといけないが、今回は割愛した。
米の粉ならばいいだろう、小麦粉は麦を粉にしたものだし、それがないと……といった話を事前に通していたために大丈夫だったのだ。
もっともこの辺りではコメはあまり食べられないものであるらしく、珍しいものだと思われているようだったが。
そしてあんこについても聞かれた。
小豆という豆を煮てつぶし、砂糖を加えたものですと説明する。
あまりこの地方ではそういった食べ方をしないらしく、変わったもののように見えたらしい。
だが口にして、あんこ系のものは口々に美味しいといってもらえたのは良かったように思う。
変わった甘味といった印象を持たれて、他の豆でも違う餡が作れるのではと話していた。
そういえば小豆以外でも、白あんやずんだ餡のように、枝豆や花豆などなど、いろいろな豆を使った餡があるのをいまさらながら思い出す。
一般的なものは小豆を使ったものだが、それ以外にあるのだ。
もし機会があったら今後、この世界の人に紹介できればと思う。
そう思っていると次は葛切りを口にしていた。
つるんとした口当たりが楽しいといった話などを聞く。
また黒蜜も好評だった。
こういったゼリーも楽しくてよかったようだ。
ちなみにこれまでの説明をしている間にライカは全てを味見してくれていて、お代わりをねだられていたりする。
甘味関係は女の子は大好きらしい。
そう俺は思いつつ、次にゴマ汁粉を食べてもらう。
これも胡麻の風味が豊かで美味しいと評判だった。
そのあとはしょうゆのしょっぱさが魅力的なみたらし団子を食べてもらったり、クルミ餅を食べてもらったりする。
いずれもこの世界の人にとって好評だった。
クルミの香ばしなども馴染みのあるものがこんな風になるとはと驚かれた。
そして、先ほどの果実よりもこちらの方が変わっていておいしい所もあるといわれて、作ったかいがあると俺たちは思ったのだった。
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