32、材料
こうして材料だけは出してもらい、あとは料理をすることになった。
この屋敷内で事前に一回お味噌汁を作る、という案もあったが時間的に難しそうだった。
とりあえず寿也に必要な材料を用意してもらう。後は、
「調理器具はどうするか。外で料理対決なのでしょうか?」
そこでどういった場所での料理対決なのかがわからないといった話になる。
この世界の調理環境がまだよくわからない。
魔法で炎を出して……調理ということか?
火力の調整はどうなっているんだ?
そう俺がいくつもの疑問を瞬時に浮かべて、クレアに聞く。すると、
「うちの台所のような場所が外にあるんですよ。一度見てみますか?」
そういわれてこの世界の調理場の様子を見に行くことになったのだった。
やってきたその場所で魔法で火をつける方法や水を呼び出す魔法などを細かく教わったのだが、
「俺はできなそうだ」
そう俺がギブアップ宣言をすると今度は寿也が挑戦し、同じく簡単な魔法が使えないのを嘆く。
そして最後に百合が挑戦し、ライター程度の小さな炎を呼び出すことに成功するが、
「……これで調理は難しいよね」
「そうだな。……同じ調理条件じゃないといけないとか……クレア、そういった縛りはあるのでしょうか?」
そこで今回の対決に詳しいクレアにそう聞くとクレアは黙ってから、
「あちらは最高級の調理台を持ってきて何とかしています。ですからこちらもそういった設備を用意するのはいいのですが、今からでは……」
「あ、可能なのですか。では、俺の特殊能力で家を出しても構わないですね」
「それは問題ないはずです。なるほど、確かにあの家は不思議な形でしたが、異世界人である皆様にはその方がなじみがあるのですね」
そうクレアは納得する。
それに俺たちの世界の家でもあるので、俺たちの世界で日常的に使っているものが整えられている。
だから調理の勝手がわかっているので、その方が都合がいい。
あとは、と俺は考えて、
「それで何のお味噌汁にする? 中に入れる具は色々あるが」
そう俺が聞くと寿也が、
「俺は何でもいただける」
「寿也、それは答えになってないよ。……豆腐とわかめのお味噌汁はどうかな?」
百合のその提案に俺は少し考えてから、
「原料がわかる形でないといけないという条件がそう言えばあったような」
「豆乳を固めたものだけれど、それはどこまでが許されるのかわからないね。そうなると野菜のお味噌汁がいいかな?」
百合がそういうのを聞きながら、俺は少し考えて、
「なすを油でいためてねぎを入れたもの……それはどうだろう?」
「美味しそうだね。それにする?」
「そういえばこの世界にはナスはあるのか? 寿也、材料を出してもらっていいか?」
そこでクレアに一応この世界のものに似ているものがあるか確認してもらうことに。
早速寿也に材料を出してもらうと、それを見たクレアが、
「野菜類は全部ありますね。後は小魚のほしたものと、葉っぱ?」
「昆布と呼ばれる海藻です」
「なるほど。これは?」
「鰹節。魚を干して発酵させたものです」
「なるほど、保存食ですね。そしてこちらは?」
「豆と米を発酵させた調味料で味噌といいます」
「……発酵食品はこれでいけますし、たぶん、どれも大丈夫だと思います」
そうクレアが答えたのだった。
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