21、羊羹
緑茶は程よい暖かさになっていた。
それを手にしながらおれは、羊羹を一人二つに分けつつ運んでいく。
百合と寿也も三人にお茶と羊羹を差し出してから自分たちの分をもって、クレア達と向かい合うように席に座る。
今回寿也が出した羊羹は、某老舗の練り羊羹だ。
ほんのりと黒糖のような香りのする美味しく甘い羊羹。
それをデザートとして出してみたのだが、そこでメイドのサラが、
「なんですかこの、タールを固めたような物体は」
「豆を甘く煮て固めたものです。羊羹と俺達は呼んでいます」
そう聞いて再びサラは警戒するようにそれを見ている。
とりあえずは客人に出したものがフォークだったので、フォークで俺達も羊羹を食べてみる。
小豆のこしあんの味がたまらない羊羹。
故郷の味を思い出しつつ、俺達はいつ頃帰れるんだろうかといった負不安にさいなまれるも……そこでクレアが一口食べて、
「これもまた変わった味で美味しいです。豆を甘く煮たものですか? こんな風に食べるのですね。程よい硬さが癖になる……うん、お茶がとてもよく会います。変わったものですがこのお茶はどんなものですか?」
「……もしこの世界で紅茶があるようでしたら、紅茶の様に発酵させずに置いたものになるはずです」
「なるほど、そういったものが地方にはあるらしいと聞きましたが……こんな美味しいものとは知りませんでした。程よい苦みと甘みが口の中を潤してくれます」
そう嬉しそうにクレアは言いながら、羊羹とお茶を楽しんでいるようだった。
そして、サラとケロンも特に何も言わず、黙ってそれらを口に運んでいたのだった。
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