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24話.スケルトン

 スケルトンの数は三体、対する此方は四人。


 ――どうする?


 スケルトンから剣先を離すことなく思考を回転させる。この状況でとれる策は大きく分けて二つある。


 逃げるか、戦うかだ。


 だが、ここで逃げるのは明らかに愚策だろう。なにせ、ここはダンジョンだ。いわば敵のテリトリー。逃げた先に敵がいて挟み撃ちになったり、罠が仕掛けてあったりする可能性は高い。寧ろ、オレがダンジョンマスターならそうする。


 逃げる選択肢は無いな。……戦うか。


 不利というほどでは無いが、厳しい闘いになるだろう。


「分担して相手をしましょう! 僕とシンは真ん中のスケルトン! テンは右! アルルは左の奴をお願いします!」


 ダンジョンの経験者であるハルトから、指示が飛ぶ。


「……了解」


「よっしゃあ! いくぜ!」


 アルルとテンが、それぞれの敵を目指して駆けていく。


「頼みますよ、シン」


「……任せろ」


 思い出すのは、ハルトと森に行ったあの日の出来事。オレは、あの時ハルトを試すつもりでワザとモンスターに襲われた。どうせ、良い人の面を被った見せかけだけの勇者だろうと、自分の身を危険に晒し、この勇者の底を判断してやろうとした。


 ……結果は、オレの思い通りにならなかった。


 ハルトもアルルも、自分の身を犠牲にして誰かを助ける事に躊躇いが無い。


 きっと、この戦闘でオレが足を引っ張れば、同じように助けてくれるのだろう。自らを犠牲にして。


 ――そんな事は、認めない。


「ハルト、オレが隙を作る。とどめは任せたぞ」


「シン!?」


 スケルトンに向かって足を動かす。基本的にオレのやる事は変わらない。攻撃が通りやすい状況を作る、それがオレの仕事だ。


 スケルトンの装備は、先程倒した奴と変わらず剣と盾。少なくとも、片方はオレが抑えなければハルトの攻撃は通らないだろう。


「おらあっ!」


 剣を横に薙ぐ。狙いはスケルトンの足だ。剣や盾に、直接攻撃を仕掛けても効果は薄い。そもそも、腕力は圧倒的に負けているのだ。正面から戦う必要は無い。

 

 ――キィン!


 オレの一撃は、予想通りスケルトンに剣で受け止められる。……だが、ここまでスケルトンに接近する事は出来た。


 今、オレとスケルトンの距離はゼロだ。流石の勇者も、この距離なら身代わりに入るなんて行為は不可能だろう。


 後は、オレが覚悟を決めるだけだ。


 ……アルルとテンは今、一対一でモンスターと戦っている。一刻も早く、援護してやりたい。スケルトンは強敵だ。この状況で、全く犠牲を出さずに突破するのは、厳しいだろう。或いは、時間を掛ければ可能なのかもしれないが、生憎とそんな暇は無い。


 傷つく奴が出るのなら、それはオレでいい。


「シン!? 何を!?」


 剣を投げ捨て、スケルトンに向けて両手を伸ばす。


 狙うのは、組み付きだ。圧倒的なパワーを持つ怪物でも、振りほどくには多少の時間が必要になるだろう。そして、それは致命的な隙となる筈だ。


 ……勿論、オレは無事ではすまないだろうけど。


 スケルトンの身体を渾身の力で抑え込む。抵抗して、暴れ出すスケルトン。膨大なパワーは、暴れるだけでオレに傷を負わせていく。


「今だ! ハルトォ!」


「ライトセーバー!」

 

 ハルトの放つ光の剣が、スケルトンの身体に吸い込まれていく。暴れていたスケルトンは、次第にその動きを鈍らせていき、唯の骨となっていった。


 ……作戦、成功だな。


 おそらく、最短時間でスケルトンを倒す事で出来た。身体の内側から響いてくる鈍い痛みを感じるが、まあ必要経費だろう。


「シン、何をやってるんですか! 危険ですよ!?」


「怪我は無かったし、大丈夫だ。早くアルル達の援護に行くぞ」


 痛みが、顔に出ないように注意する。……大丈夫だ、目立つ場所に外傷は出来ていない。オレが、注意さえしていれば感付かれる事は無いだろう。


 一歩、また一歩と足を踏み出すたびに身体が痛む。もしかしたら、重要な器官が傷ついているのかもしれない。


 ――きっついなあ、これ。


 ダンジョンマスターは大きな怪我を負っても直ぐに治る。だが、当然の様に痛みは発生する。


 ……オレは、人間であるアルル達とは違うのだ。


 だから、その特性を使おう。この力は、オレがやりたい事をやる為の力だ。


「ほら、行くぞハルト」


「本当に大丈夫ですか? 少し顔色が悪い気がしますが……」


「ああ、モンスターに組み付いたのなんて初めてだったからな。驚いただけだよ」


 ――大丈夫だ。これぐらいの痛みなら、対した事は無い。


 ……まだ、我慢できる。

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