第71話 始まりの迷宮
王都セレストへは、巡礼者を装って入った。
俺とリゼ、ティナ、フィン、ドーガ、アレクシスの六人。
ガレスにはラクト本部と証拠を任せた。何かあれば全支部へ同時送信する手はずだ。
王都の地下には、現在使われている十二の迷宮がある。
《始まりの迷宮》は、そのどれにも載っていない。
入口は凱旋大聖堂の真下にあると考えていたが、フィンは古い上下水路図から別の場所を示した。
「西城壁の外です」
「中心から離れすぎてないか?」
「千年前の王都は、ここまでしかありませんでした。大聖堂の方が、あとから迷宮の上へ移ってきたんです」
干上がった貯水池の底に、石の扉が埋まっていた。
扉に彫られているのは剣でも魔物でもない。
大人二人が子供の手を引き、光る門へ駆け込む絵だった。
「迷宮の入口には見えませんね」
ティナが泥を拭う。
中央のくぼみへ救助登録札をはめると、俺の《撤収》が反応した。
《旧式帰還網を検出》
《管理権限の断片を確認》
千年間閉じていた石扉が、内側へ開いた。
中に魔物の気配はない。
壁の青い線が一本ずつ灯り、地下へ続く階段を照らす。
俺たちは全員の事前同意を確認し、外に帰還点を置いた。
「目的は調査。戦闘ではない。結界で《撤収》が止まったら、その場で引き返す」
全員がうなずく。
百段降りた先には、都市があった。
石造りの寝台、井戸、食料庫、診療室。何千人も暮らせる広間が、地底に広がっている。
そして中央には、青と赤の光を脈打たせる巨大な門。
奉還炉で見た輪と、同じ形だった。
門の前へ立った瞬間、背後の階段が消えた。
代わりに、透明な少女が光の中へ現れる。
『避難者六名を確認』
少女は俺を見た。
『欠落していた撤収管理者。千年ぶりの帰還を歓迎します』
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