大会の反省会と打ち上げ
大会の表彰式が終わると、僕達は監督の家に集まった。
監督の家はデカイんだ。
監督は飲食店を何軒も経営してて、お金持ちなんだ。監督の家の大きな食堂で、チームのみんなと一緒に夕飯を食べた。
食事の前に、監督がこう言ったんだ。
「みんな、今日はよく頑張ったな。ブラックホークスを相手によくあそこまで戦ってくれた。俺は君達を誇りに思う。もう少しで県大会だったけど仕方がない。勝負は時の運だ。今日の悔しさをバネに、明日からまた頑張ろう。卒業する六年生のみんなは、お疲れ様。中学に行っても頑張ってくれ。残る下級生のみんなは、また来年に向けて頑張ろう。それじゃあみんな、今日は頑張ったから、お腹が空いてるだろう。たくさん食べてくれ!」
献立はトンカツ定食だった。
大きなロースカツにキャベツとトマトがたっぷり盛りつけてある。味噌汁やお新香、果物のデザートまで付いてた。
凄く美味しくて、僕はご飯を大盛りで三杯もおかわりしちゃったんだ。
みんなお腹ペコペコだったから、凄い勢いで食べてた。
◇◇
食事の後は、昨日の第一試合から今日の決勝の第四試合まで、みんなで反省点をいろいろと出し合った。
司会はキャプテンの貴史君がつとめ、聖司君が要点をメモにとった。
話すのが遅れたけど、実は聖司君は貴史君の弟なんだ。
野球が大好きな兄弟で、二人ともピッチャーなんだ。
兄弟って似るのかな?
僕は一人っ子だから分からない。
聖司君は次期エースで、二人ともナチュラルシュートが武器なんだ。
貴史君をはじめ、卒業する六年生の高山君や
佐々木君、富田君は表彰式の時までは悔しく
て泣いてたけど今はみんな笑顔に戻ってる。
反省会は貴史君の司会で盛り上がった。
貴史君は、各試合ごとの名場面を面白おかしく話しながら、チームの問題点を指摘してくれたんだ。
例えば、こんな感じ。
「翔太お前、決勝の五回表の攻撃で、監督がヒッティングのサイン出した時、目が点になってたぞ。こんな顔して[マジか!]って呟いてるのが分かるんだもんなあ、全く」
って貴史君が立ち上がって、僕のモノマネをしながら話した時は、みんな大爆笑。
「だって、送りバントだって思ってたから」
って、僕は真っ赤になって言ったんだ。
「バカ、監督がお前に期待したんだよ。鬼塚
君の豪速球にタイミング合ってたの、お前だ
けだったからな。だけど良く打ったよなあ。
お前が打たなきゃ、俺達もっとアッサリ負け
てたかもしれない」
って貴史君が言うと、みんなが拍手してく
れた。
「だけど翔太お前、動揺が顔に出過ぎ。ああいう時は、もっとポーカーフェイスで相手にバントもあるぞって思わせないとな」
って貴史君が言ったら、またみんなに爆笑されちゃった。
こうやって、みんな貴史君の話しを聞いてから各自で自分の意見を出し合った。
守備や走塁、連係プレーやサインプレー、
声出しとかについて、いろんな意見が出た。
監督とコーチはニコニコしながらみんなの話を聞いてた。貴史君が質問した時だけ答えるんだ。
これは、チームのみんなが自分の頭で考えて野球をやるようにするためなんだ。
決勝の最後の場面は、貴史君が最初から監督に質問した。
「監督、最後は佐々木君がホームに送球したけど、あれで良かったんですよね?」
「ああ、あれは仕方がないさ。貴史も一塁に
ベースカバーに行ったけど、タイミング的に
ヤバかったろ?」
「ええ、そう思います」
「相手は左バッターで足も速かった。あれで
佐々木が振り向いて一塁に投げてホースアウ
トを狙ってもセーフになったと思うよ。俺だって佐々木と同じようにホームに投げたと思う。送球が少し高めに浮いたのも仕方ない。あの状況じゃストライクを放るのは難しい。だから誰も佐々木を責めることは出来ない」
って監督が言うと、
「みんなゴメンな! 俺のせいで」
って佐々木君が大声で言って、泣きそうな顔になったんだ。
「佐々木、泣くな、笑え。お前の判断は間違っていない。もう少し低めに投げられたら良かったけど、クロスプレーは避けられなかったしアウトに出来たかどうかは分からない。勝負は紙一重だからな。なあ、佐々木、ランニングスローは実は正面に投げるのが意外と難しいんだ。プロの選手だって何百回、何千回も練習してるんだぞ。それより翔太があの時、鬼塚君の打球を取ってればなあ」
って監督は、無理やり僕に話を振って来た
んだ。
「えーっ、僕ですか?」
って言うと、またみんなが笑い出した。
僕っていじられキャラみたい。
「そうだ、あれを取ってれば延長戦だったんだけどなあ」
って監督が言ったら、高山君がこう言って助けてくれた。
「監督、あれは俺だって取れませんよ。普通の外野手だったら、あそこまで追いつくのも無理です。翔太だから追いついて、あそこでサヨナラにならなかったんです」
「あっ、そうか! それもそうだな。翔太君、
悪かったな。 ゴメン、 ゴメン、 すまなかっ
た、許してチョンマゲ!」
って監督がまた古いギャグを言ったから、
みんな大爆笑。
佐々木君も顔をクシャクシャにして笑っ
てた。
「よし! 今日はこの辺で反省会は終わりに
しよう。さあここからは、みんなお待ちかね
の打ち上げだ。思いっ切り楽しもう! 緒方
コーチも今日はビール十本くらい飲んで良い
からな!」
って監督が言うと、
「監督、僕そんなに飲めませんよ!」
って緒方コーチが言ったから、また大爆笑になったんだ。
◇◇
監督とコーチは別の部屋に移って、保護者達と一緒に宴会を始めたんだ。
もう夜になってた。
僕達チームのみんなは庭に出て、思いっきり遊んだんだ。
監督の家の庭には芝生があって、物凄く広いんだ。ちょっとした運動会くらい出来そう。
僕達は花火したり、鬼ごっこしたり、相撲したりして遊んだんだ。
本当に楽しかった。
耀も自分の家で夕食を食べた後、打ち上げに来てくれて、母さん達を手伝った。
みんなにジュースやスイカを配ったり、食器を片付けたりしてくれたんだ。
耀は紺色に花柄の浴衣を着てた。
髪もアップにして、雰囲気がいつもと違ってたから、僕は緊張しちゃった。
「翔太、今日は頑張ったね。たくさん汗かいたからノド渇いてるでしよ?」
って言って、耀が僕のところにスイカを持って来てくれた。何度も持って来るから、僕はつい食べすぎちゃった。
大きなスイカの半分くらいは食べたんじゃないかな。あんなにスイカを食べたのは生まれて初めてだった。
「スイカはもう食べれない」
って言ったら、今度はオレンジジュースを持って来てくれた。
断るのも悪いから無理して飲んだけど、
その後、またコーラを持って来たんで、
僕は呆れちゃったんだ。
その日の耀は、とにかく僕の世話を焼きたいみたいだった。
耀が凄く喜んでくれてるみたいだったから、僕も嬉しかった。
[頑張って良かった]
って、僕は心の底から思ったんだ。




