練習再開
二月から、待ちに待った野球チームの活動がようやく再開したんだ。
久しぶりに野球が出来るんで、僕は嬉しくて仕方なかった。
野球って、やっぱり面白い。
白球が、
『シュウウウ』
って飛んで来て、
『パシッ』
って取って、
『ビュッ』
って投げて、
『キーン』
って打って、思いっ切り走って、仲間達と声
を出し合って、ジョークを言い合って、全て
が最高に楽しいんだ。
サッカーも素晴らしいけど、僕にはやっぱり
野球が向いてるって思った。
オフにしっかり走り込んだおかげで、練習中
も息切れしなくなった。
投球フォームが安定したんだ。
体の軸があまりブレなくなって、
コントロールも良くなった。
チェンジアップはまだ、真ん中にしか投げられなかったけど、ストレートならコースに投げ分けられるようになったんだ。
守備の方も、送球が安定してきた。
監督が言った通り、
「一、二、三」
って、慌てず落ち着いて投げるようにしたら暴投がほとんど無くなった。
緒方コーチのノックもたくさん受けたしね。
以前は、何であんなに急いでたんだろうって
自分でも不思議なくらいだった。
[やっぱり、 状況に合わせて送球しないと
ダメだな]
って、僕は思ったんだ。
バッテイングの方は、小学校のフェンスまで
ダイレクトで大きな打球が飛ばせるようにな
ったんだ。
チームのみんなも驚いてた。
これまでチームの中で一番飛ばしてた英次君
や木村君より、遠くまで飛ばせるようになっ
たんだ。
この二人は身体が大きくて、身長が百六十五
センチを超えてるんだ。
英次君は優しいから単純に驚いて、
「翔太お前、小さいのにスゲーな」
って言ってた。
木村君は負けず嫌いだから、
「チックショー! 飛距離だけは翔太に負けないからな!」
って言って、ムキになって大振りしてた。
何でこんなに打球が飛ぶようになったのか、
自分でもよく分からなかった。
以前はライナー性の当たりがほとんどだったのに、最近はホームラン性の大きな当たりばかり出るようになったんだ。
監督に聞いてみたら、
「そりゃあ翔太、お前も体がデカくなったか
らだろう。あの二人に比べるとまだ小さいけ
ど、去年と比較すると、お前もずいぶんデカ
くなったよ。力がついてきた証拠だ。それか
らボールの芯の、少し下を叩けるようになったのも原因じゃないか?」
って言われたんだ。
確かに僕は大きくなってた。
去年の夏から七センチ身長が伸びて、この春には百五十五センチになってたんだ。
以前は、大きくて怖いと思ってた耀が、
最近は小さく見えるようになった。
百六十センチの耀と、五センチしか違わなくなってた。
だけど僕は、ボールの芯の少し下を叩いてる意識は全然なかったんだ。
「監督、僕、ボールの芯の少し下なんて狙ってないんですけど」
って、僕が言ったら、
「狙って打てるもんじゃないと思うよ。俺が昔読んだ王選手の本に、ホームランバッター
はボールの芯の五ミリ下を自然に叩けるって書いてあった。俺もよく分からんが、ホーム
ランバッターには、そういう天性の才能があ
るらしいんだ。翔太、お前も多分それじゃな
いか。大振りしてるわけでもないのに、お前
が打ったボールは何であんなに飛ぶんだろう
って俺も最近よく考えてたんだ。まあ翔太、
難しく考える必要は無いさ。大きな打球を飛ばせるのは良い事なんだから」
って、監督は言ったんだ。




