第15章 正斗の運動会 part5 玉入れ
年長の障害走が終わり、次の種目が年少の玉入れとなった。玉入れは、チーム対抗戦だ。チームは障害走の時と同じようだ。
先生の笛が鳴ると、年少児がみんなチームごとの先生に集まってきた。
「年少の皆さん、玉を持ってください!!」
川口のアナウンスが鳴ると、年少児は玉をとった。しかし、正斗はとっていなかった。あまり玉入れのことを理解していないようだ。そして周りを見回して玉を持った。
「よーい、ドン!!」
ピストルの音が鳴ると同時にみんなは玉をカゴへ入れ始めた。先生は、カゴが倒れないようにと、それぞれのチームのカゴを支えていた。たくさんの玉がカゴに当たるので、先生も倒れないようにと必死だった。正斗のいる緑チームは担任の神原先生だ。
相変わらず正斗は、ピストルが鳴っても、玉を投げずにいた。すると、隣の女子から、こういわれた。
「玉を投げて!」
正斗はその言葉を聞いたが、どこに投げるのかを言われていなかった。そして、周りへがむしゃらに投げ始めた。ここまで読んできた読者ならわかるだろうが、正斗は、手と腕の力が強いのだ。正斗が投げた人一倍強い玉は、周りの年少児や、神原に当たった。運悪く玉が当たった年少児の中には、痛くて泣きだす人がいた。ある時、正斗の投げた玉が神原の腹部に当たった。さすがの神原もいたかったようだ。
「痛!」
神原は叫んだ。そして手を放してしまった。すると、カゴはゆらゆらし始めた。さっきの女子からこういわれた。
「カゴに向かって球を投げて!」
正斗は言われた通りにカゴに向かって投げた。すると、カゴの壁面に当たった。神原はカゴを支えなおそうとした。けれどもう遅かった。正斗が強い玉を壁面に当て続けているせいで、カゴが倒れ始めていたのだ。急いでつかみなおしたが、神原もバランスを崩してかごをぶっ倒してしまった。中の玉が全部出て行った。放送席は白熱していた。
「おっと緑チーム! 神原先生とカゴが倒れています。いったいどういうことでしょうか。リプレイで確認してみましょう。おい! そこのゆったりしているボランティア! 一番大きいテレビをもって来なさい。」
するとボランティアは、くたくたになって大きなテレビを持ってきた。川口はケーブルでつなぐとリプレイ画像がテレビに映った。
「今のは、正斗君の一発で倒れたようです。」
正斗は、カゴが倒れた後でもカゴに球を投げ続けた。一部の玉は、神原に当たり当たるたびに唸り声をあげていた。正斗が投げるのをやめると、結果発表が始まった。
「赤チーム、35! 青チーム、29! 緑チーム、0! 黄色チーム、42! 黄色チームの優勝です。それにしてもカゴが倒れるなんて前代未聞ですね! 次は、年中縄跳び競争です。準備をしてください。」
緑チームには、怒りと悲しみの空気が流れていた。そして黄色チームには喜びの空気が流れていた。
第16章に続く。




