3:パズル
■パズル
A県T市にあるアパートの二階に、年老いた女性が住んでいた。
隣近所との交流も無く、いつもフランス人形のような派手な衣装で強烈な香水のかおりを振りまき、児童を模したマネキンの首に語りかけながら駅前を徘徊する彼女は、その地域では有名な人物だった。
ある日、階下の住人の通報で、女性の部屋に警察が踏み込んだ。
「天井から髪の毛が生えている」というのだ。
踏み込んだ警官たちは、強烈な臭気と凄惨な光景に立ち尽くし、あるものは部屋を飛び出して嘔吐するほどであった。
室内には洗面器やバケツが並べられ、それぞれに解体されて血抜きされた数名分の部位が放り込まれている。
畳をはがすと、剥ぎ取られた皮膚や頭皮が皺を伸ばすように敷き詰められていた。
悪夢のような室内を囲むように置かれた棚には大量の人形が並べられ、じっと現場を見おろしていたという。
室内に残された生活用品は、それぞれ色違いで同じものが二つずつ残されており、片方には幼い子どものような筆跡で「たかし」と書き込まれていたそうだ。
容疑者である女性は行方をくらまし、警察の捜査の甲斐なく現在も見つかっていない。
この事件には噂がある。
身元を調べるために犠牲者の遺体をつなぎ合わせたところ、ひとつずつ足りない部位があった。
その足りない部分を全部あわせると、ちょうど人間ひとり分になるそうだ。
≪出典≫ 「隣の流行り神.net 怪事件板」 より転載




