2:禁足
■禁足
奇妙な遺体があがった。
昭和のころ、A県K市にある某社敷地内でのことだ。
遺体はハロウィンのお化けの仮装のように、頭からすっぽりと白い布を被せられ、首吊り状態で吊るされていた。
下から見上げると、足の裏が見えたそうだ。
遺体は男性のもので白い布の他には何一つ身に着けておらず、両手両足首が五寸釘で貫かれていた。
さらに猟奇的なことに、眼、鼻、口、耳がそれぞれ塞がれていたそうだ。
鼻と耳の穴には蝋が流し込まれており、瞼と唇は赤い糸でびっちりと縫い付けられていた。
検視の結果、死因は首をつられたことによる窒息。
両手両足の釘はその出血の具合からみて、生きている間に打ち込まれたものであり、全身の体毛が睫にいたるまで綺麗にそり落とされていたことがわかった。
警察の捜査も虚しく、この男性の身元は現在もまだ不明のままだ。
推定年齢十代後半から二十代前半。 痩せがたでやや色白。 所持品も無く、指紋や歯型からも身元を割り出すことができなかったようである。
これだけならば、過去の未解決事件ということで終わるのだが、実はこの事件、地元の新聞、テレビ、ラジオなどで殆ど報じられていない。
捜査上の理由や、企業や従業員への配慮ということも考えられるが、遺体の発見現場が社内のどこであったかも不明で、一部のマスコミの取材によれば発見者は夜勤の警備員であったらしい、ということしかわからない。
事件後、この会社の警備員がひとり病気を理由に退職し、その後自宅で首吊り自殺したという。
彼は遺体の発見者だったのだろうか。
もしそうならば、彼はどこで、誰を発見し、どうして自ら命を絶ったのだろうか。
≪出典≫ 月刊「メガラニカ」9月号 著:波風 夜 より抜粋




