回顧‘‘
聞きたくないです――というオレの言葉は、八畳間の真ん中に置いた万能座卓に身を乗り出したばあさんによって、咽喉の奥に押し込まれた。
万能座卓を挟んで向かい合う男――大羽刑事は、わずかに苦笑いを浮かべて話しだした。
「なにも事件の詳細を話しに来たわけじゃないよ。城村沙緒からの伝言を預かって……」
ですから聞きたくありません――というオレ言葉は、サスペンスドラマ好きなばあさんによって再び遮られた。
「アリバイ証明させようとしてすみません――とでも謝ってたのかい?」
いえ、と大羽刑事はばあさんが運んできた階下の駄菓子屋の売り物の缶コーヒーと串カツに似せた駄菓子という珍妙な組み合わせに目を遣りながら答えた。
「巻き込んでしまってごめんなさい――と」
大羽刑事は渋面をつくっているであろうオレの顔をちらりと見ると、青波君、たて続けに事件に巻きこまれて気が滅入るだろうが、『なんでも屋』の仕事は続けていくンだろ、と話を切り替えた。
オレは大学を卒業して下宿先だったばあさんの家で『なんでも屋』を開業した。
仕事内容は言葉どおりなんでも請け負う仕事なのだが、客に対して決め台詞のように『法に抵触しない限りは――』と、言ってきたにもかかわらず、不本意ながら二件の殺人事件の容疑者と関わってしまった。
大羽刑事ともその時に出会ったのだが、オレとしてはばあさんが好きなドラマのように、事件に遭遇したからといって首を突っ込むなンてマネはしたくないし、直接的な事件関係者でもないわけだからほっといてほしいのだが、二件の事件の容疑者は、揃って大羽刑事に伝言託す。
「アンタ、『なんでも屋』というより『巻き込まれ屋』だね」
ばあさんが皺くちゃな顔を更にくしゃくしゃにして笑う。
オレがうるせェよ、というと、階下から聞き覚えのある声が聞こえた。
「青波君いるかァツ! 」
客の仁川卓三の太い声だ。
オレが腰を浮かせようとすると、ばあさんがオレに断りもなく仁川を階上に招いた。
住居兼事務所である二階に上がってきた仁川を見てオレたちは目を丸くさせざるを得なかった。
仁川のくたびれた白いシャツは赤く染まっていた。
これが昨日の出来事である。




