第60話:成功の向こう側に見えるもの
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第60話、プロジェクトの承認。一つの大きな山場を越えました。
「成功」の定義が変わった志保。
地位や名誉よりも大切なものに気づいた二人の、清々しい姿を描きました。
社内審査会の会場。張り詰めた沈黙を破ったのは、審査委員長の深く、重たい拍手の音だった。
「一ノ瀬君、そして瀬尾君。……見事な提案だった。数字の完璧さはもちろん、何よりこの事業が『誰を救うのか』という信念が伝わってきた。……承認だ。予算は君たちが提示した満額を確保する」
その瞬間、背後で控えていたチームメンバーから歓声が上がった。
かつての私なら、ここで「勝った」という優越感に浸り、次の標的を探していただろう。けれど、今の私が真っ先にしたのは、隣に立つ瀬尾さんと視線を交わすことだった。
「……やったわね、瀬尾さん」
「ええ。志保さんの想いが、みんなに届いたんですよ」
瀬尾さんの瞳には、安堵と共に、誇らしげな光が宿っていた。
審査会の後、二人でビルの屋上に出た。
夕闇に沈み始める東京の街並み。眼下に広がる無数の明かりの一つ一つに、仕事に疲れ、居場所を求めている誰かがいる。
「ねえ、瀬尾さん。私、今まで『成功』って、誰かを追い越して高い場所に立つことだと思っていたわ。でも、今は違う」
「……今は、どう見えますか?」
私は、自分の薬指にあるシンプルなリングをそっと撫でた。
「成功の向こう側にあったのは、孤独な頂上じゃなくて、大切な人と分かち合える『自由』だった。……あなたと一緒に、誰かのために自分の力を使える。それがこんなに誇らしいなんて」
瀬尾さんは私の肩を引き寄せ、優しく抱きしめた。
冷たい夜風さえも、今の私たちには心地よい。
新規事業の成功、昇進、社会的な評価。
それらは全て、私たちが「私たちらしく」生きるための手段に過ぎない。
三十八歳の私は、ようやく自分を縛り付けていた「成功」という名の鎖を、本物の「幸福」へと作り変えることができたのだ。
「これからも、ずっと隣にいてくれますか。ビジネスパートナーとしても……私の、一番大切な人としても」
「もちろんです。……どこまでも、ついていきますよ」
二人の成功の向こう側には、どこまでも穏やかで温かな、私たちの「これから」が広がっていた。
第60話、いかがでしたでしょうか。
ついにプロジェクトが公式に認められました!
「なろう」恋愛ジャンルの王道である、仕事での成功と愛の成熟の同時進行……。
ここからはいよいよ、物語の締めくくりに向けて、周辺の整理と二人の「最終的な形」へ向かいます。
物語はいよいよ最終盤。最後まで応援よろしくお願いいたします!




