第23話:届かないメッセージ、募る不安
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第23話は、宇佐美による本格的な「一ノ瀬志保追い落とし」の始まりです。
有能な志保が、実務上の小さなミスを捏造され、精神的に孤立していく様子を描きます。
瀬尾さんに「頼っていい」と言われた翌日。私の心には、昨日までにはなかった静かな勇気が宿っていた。
けれど、オフィスに足を踏み入れた瞬間、その勇気は冷ややかな現実に試されることになる。
「一ノ瀬さん、今朝のクライアント会議、時間が変更になったのをご存じないですか?」
デスクに着く間もなく、宇佐美君が淡々とした口調で告げた。
「変更? 聞いていないわ。メールも届いて……」
「おかしいですね。僕からリマインドを送ったはずですが。……ああ、もしかして、お疲れでチェックを漏らされたんでしょうか。珍しいですね、あなたらしくない」
彼の言葉に、周囲の部下たちの視線が突き刺さる。
慌てて履歴を確認するが、確かに彼からの通知はない。意図的に外されたのか、それとも巧妙に操作されたのか。
その日を境に、不可解な「行き違い」が頻発した。
私が指示したはずの修正が反映されていなかったり、共有カレンダーの予定が書き換えられていたり。
それは決定的なミスではないが、確実に私の「完璧」という信頼を削り取っていく、真綿で首を絞めるような攻撃だった。
(……落ち着かなきゃ。これは彼の手口よ)
深夜、疲れ果ててデスクでスマートフォンを手に取る。
瀬尾さんに今の状況を伝えたい。声を聞きたい。
けれど、いざメッセージを打とうとすると、指が止まってしまう。
『仕事で部下に嫌がらせをされている』なんて、三十八歳のプロとして、あまりにも情けなくて言えない。
結局、何も送れないまま画面を閉じる。
ふと、昨日彼と溶け合うように過ごした時間が、遠い夢のように感じられた。
私と彼の間に、少しずつ、けれど確実な「現実という名の壁」が再び築かれようとしている。
届かないメッセージの数だけ、私の不安は夜の静寂の中で肥大化していった。
第23話、いかがでしたでしょうか。
宇佐美くんの攻撃が陰湿さを増してきました……。
「頼ってほしい」と言ってくれた瀬尾に、情けなくて頼れない志保。
大人のプライドが邪魔をする、もどかしい展開です。
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