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神の国  作者: 五十鈴


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12/12

怪物

ジュールは些細な違和感の積み重ねから、不吉な予感を抱いていた。

かつて妻を失った大事件の前にも同じ感覚があったと語り、ウィータに備えを促す。

そうして始まったのは、ジュールを交えた本格的な訓練の日々だった。

圧倒的な技量を前に、ウィータは自分の未熟さを知りながらも力を磨いていく。

穏やかで充実した毎日の裏で、空には静かに不穏な色が広がり始めていた。

 朝、部屋で目をシパシパさせながら起き上がり、辺りを見回す。少し呆けた所で違和感が襲ってきた。一瞬で目が覚めた。いつも身支度や朝ご飯の準備で騒がしい一階だが、今日は物音が一つもしない。むしろ静けさで耳鳴りまでした。焦った顔で階段を駆け下り、その勢いで扉に飛びついた。

外には共々空を見上げるムラクニとジュールさんがいた。何事かと僕も空を覗いてみた。

そこには一面の暗闇が広がっていた。普段見る暗い雲とはまったく違う常闇。そして一際目立つのが、数百メートル先の上空で空間を飲み込むように渦巻き、先の見えない深淵が広がる空の穴。現実を疑いぐらい超異常な光景の不気味さが、不安と恐怖を大きく煽る。


「ウィータか…さっそく朝ご飯を作ってやりたいところだが、どうにもそうはいかないらしい」

「どうなってるんですか…これ…」

「どうなってるも何も…散々感じてきた、悪い予感ってのが当たっちまったらしい」


どうすれば最善かを真剣に考え、全員動かず喋らずその場にとどまる。


ゴォォォン!!と

突如、空の大渦の方向から、爆音と爆風が、森を突き抜けてこちらへ来た。その風と音は建物を上下左右に揺らすぐらい強烈なものだった。何かが起こったのは確実だった。


ウィータは考えていた。あれは何なのか、そもそも危険なんだろうか、(みんな)が安全でいるには何をすべきか。そうするうちに、居ても経っても居られなくなる。


「ムラクニ、ジュールさん。あの渦、僕が見てくるので、絶対に動かないでいてください…!」


吐き捨てるようにその台詞を言い、その場から駆けていった。


「ぉお、おい!ウィータ!」


その声は届かず、森へ消えていくウィータを目で追うことしか出来なかった。


森を走るウィータは、ただ渦の下を目指していた。小山を超え木々を抜け、植物の密集地帯を抜けて明るくなった場所に着いた。そこには見たこともない、禍々しい“怪物”がいた。

肉塊に手足頭が着いたような、人体に似た気味の悪い生物だ。全身から磨かれたように鋭い刺が飛び出していて、顔は中世の兜と血肉が一体化したような風貌。その兜の隙間から釣り上がって線のようになっている目が前を睨んでいる。

ウィータがここへ着く前から存在は感知していたようだが、人の子一匹に気を止めることは無かった。怪物は巨大な二足で歩み続けていた。向かう先は、ウィータが出発したあの酒場の方だった。そして、それに気付いたウィータは奮い立っていた。


「絶対に彼所(あそこ)へは行かせないッ!!」


恐怖の乗った重い足を踏み込んで、怪物の前に立つ。


「オレの前に立つトハナ、体に見合ワズ勇猛な事ヨ」

「喋れるんだな、お前」


軽い口を叩いて、なんとか緊張を和らげる。


「何でお前はこんな所へ来たんだ。あの渦と関係があるのか?」

「答える道理がナイ」


喋りながら剣を鞘から抜く。訓練で身につけた間合いを作り、構えを取る。


「立ち向かうつもりカ?、オレに」


否、立ち向かわねばならない。ウィータは正面へ走り出して、横に逸れながら脇腹を狙う。怪物はそれを見てから、腕をボコボコと音を鳴らして変形させ、鎌状にした後ウィータの頭上に振り下ろした。


「ウゥ…!」


剣を当てて間一髪で離れたが、受け流した際の衝撃が腕を伝って体中に響いた。その後も何度も突っ込んでは相手の体に傷一つつけられず、こちらのみが消耗し続けた。その間も怪物はずっと歩み続けている。

たかが数百メートル…こんな化け物があの家へ行ったら…考えただけでも恐ろしい。


「なるほど、こっちダナ」

「なッ!」


怪物はいきなり進む方向を変えた。先ほどまでは進めば見えてしまうかも知れないぐらいの感覚だったが、今この方向にまっすぐ進めば、ドンピシャで酒場へ着いてしまう。なぜいきなり方向を変えたのかまったく分からないが、とにかくウィータはさらに必死になった。


「…止まれッ!」


高評価お願いします。ブックマークしていただけると幸いです。続読お願いします。


一つ前の話の投稿で、タイトルがバグってテンプレートのままになっていました。修正しておきましたので一度確認いただけると幸いです。

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