3 村を救おう!そして、縁の下の影響
「ソロ旅ですか……そうだ!」
一体どうしたのだろうか。急に目の前の少女はオレにボロボロの椅子を差し出し、改まったような態度でこちらを見てくる。促されるようにオレは座らされた……なんのつもりだ?
「ソロ冒険者であるジャドさんに依頼を出してもいいですか? 休養中にほんっと申し訳ないですけど!」
「依頼……村を復興させてってことか?」
目の前に申し訳無さそうにしている、赤髪の少女はこくりと頷いた。『香月』がまだパーティだったときに受けていた、誰も手に取らないクソみたいな条件の依頼だ。報酬も美味くはない、何のためにもならない依頼。ひどく懐かしい記憶だ。
「報酬もなにもな──
「受けるよ。暇つぶしにはちょうどいいし、そこまで申し訳なそうに見られるのもアレだしな」
目の前に困っている人がいて、そのままさようならって言うのも酷な話だ。できることがあるなら手伝う。それがオレのポリシーでもあるし、あの澄んだ川が放置されるのもいただけない。
「ありがとう! ジャドさん!!」
「お前、また! 抱きつこうとするな!」
抱きつくのがこの娘の必殺技なのか、個性なのか距離が近い! トップスピードだけなら戦士のガーネットと同レベルじゃないか。いろいろと才能の塊だな……
「ぎゃふっ……私はリオサ、よろしくお願いします! ジャドさん!」
「ああ」
リオサは抱きつき攻撃に失敗し、部屋の壁に激突しながらも挨拶をした。
懐かしい……最初の旅はこんな、ごっこ遊びの延長で楽しかったな。狭いテントで、ぎゅうぎゅう詰めになりながら今日の成果を語る、それだけで良かったのに。今のコーク、ガーネット、レイナーは遠い……距離も、価値観も、強さも。
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「やっとアイツがいなくなって清々したなぁ。みすぼらしくノルマだけ達成しておけば良いものを、ギルドのためとか言って俺に意見しやがってよ……幼なじみだから、あんぐらいで許してやったんだぜ? 優しいよな、ガーネット、レイナー!」
ぶっちゃけるとギルド創設から、もうジャドは不要だった。コネを作らせて、ギルドを作ってで役割は終わってんだよなジャド!
「もちろん、頑張っているだけじゃどうにもならないしね」
「わたしたちのためによく頑張りました!」
俺様のギルドだっていうのに、下っ端が物申すんじゃねーよ。昔よしみで雇ってやってんのに、冒険なんて言う『ごっこ遊び』はおしまい。稼いでなんぼだろ!
んや、女のが重要か。ジャドが必死こいて集めた優秀なギルド連中。女に限定してたのに、よー頑張ったなw!
「このギルド辞めます」
……おっと、見る目のねえカスが来たな。ジャドを慕うより、俺様のが安泰だっていうのに。設立したこの国は一夫多妻を認めてるのに……もったいねえなー。
「おうよ、退職金なしでいいかw? ジャドの居場所は俺様にも分からんからなw」
空間を軸とするテレポート魔法は万能じゃない。勇者じゃないけど、実質勇者な俺様ですら使いこなせない。今まで行った村、宿泊地がテレポート場所だが分かるわけがない。
「分かるけど? 空間魔法の使い手・ジュダも辞めるって言ってたから」
「はあ? んだそりゃ、聞いてねえぞ! 勝手にやめんじゃねえ!」
ジュダは創設メンバーでないものの、ジャドがスカウトしてきた有能魔法師。それなりに良い待遇をやってやっているのに辞めるのか? いやありえない。
「お前は辞めてもいいが、ジュダは──
「はいこれ、色んな人の手紙。内容は全部一緒だけどね。ばいばい」
丁寧なことにジュダの手紙が一番上に来ていた。めんどくさいが、一応確認してやるか。辞めるなんてありえねえが。
くそほどきたねえ字で「辞める」とだけ書かれていた。
ハア?!