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4 基礎魔法の暴力。俺にしか出来ない戦略(普通に弱いけれど)

 自分たちだけでなんとかしようとする心意気は素晴らしいが、どうしてここまで放置されているんだ? 一ヶ月前に襲撃されて、ギルドなりに依頼を出せば一週間で村は直るのに。


「ギルドに依頼は出さなかったのか? そうすれば住民たちは早く戻れるだろう」


「いや~、香月ギルドに依頼は出したんですよ。ただ……報酬も良くなかったので、掲示板にすら貼られませんでしたけど!」


 するとリオサは寂しい様子で、淡々と事実を俺に伝えてくれた。そうか……遠くなったのはコークたちじゃない、俺もどこか遠くに身を置いてしまっていたな。もっと俺が優秀なら、このツークンフト村を早くに救えていたはずだ。


「……あ、ジャドさんからギルドに口添え出来ないんですかね? ジャドさんだけの手をわずらわせるのも申し訳なくて」


 まあ出来ないというか、やれるわけがない。文字だけで考えれば俺は経歴詐称して、ソロ旅を演じているだけの男。こんな面倒事をコークに言ってしまえば、幼馴染みと言えど縁を切られようものだ。すでに手は切られたけど。

 大人数のが効率は良いし、言い訳が思いつかない……はぁどうしようか。


「休養中なのに依頼受けたら、ギルドメンバーに怒られちゃいますかね?! こんな端の村でも仲良しギルドって話題ですし、ちゃんと休めとか言われそうですね!」


 言い訳を考えている間に、リオサは勝手に納得し頷いている。それにしても仲良しギルドねぇ……ギルドになってからは、どちらかと言えばギスギスだけどな。

 明るい表情で、ブンブンと頭を上下している様を見ると苦笑いしか出ないが。しかしまあ、目の前の情熱的な希望を持っている目を見ると、かつてのコークを思い出してしまう……大人になった言うべきかな。


「じゃ、早速だけど村長さんはいるのか? 挨拶したほうが良いと思うけど」


「今日は買い出しに行ってますね。かなり荷物があると思うので、浮遊魔法使ってもすぐには帰れませんね……夜には帰ってくると思います!」


 浮遊魔法か。嫌な思い出しか無いな……簡単だけど応用魔法、もちろん俺は使えないから怒られていた。お前のせいで時間がかかるとか、置いていくから一人で来い、なんてザラだった。代わりに習得したものもあるけど……意味のない能力だ。


「今日出来そうなことはやっておくか。少し待ってろ」


 いつ魔物が襲撃してくるか分からない。だからなるべく早くに対策はするべきだ。応用魔法は使えないけど、それなりに培ったものはあるし頑張ろう。

 リオサは困惑めいた声で、はいと言っている。普通はそうだろうな……意味のない能力ならそれは出来る。



 改めて村を見ていると、かなりの住民がここにいたことが伺える。レストラン、道具屋、武器屋まであるみたいだ。……ああ、懐かしいものまである。きれいな花畑。コークとガーネットが防具を揃えている間、レイナーと花かんむりを作っていたのを今でも覚えている。

 ただ、今では世話をする人がいないせいか数輪しか生きた花はない。


「水魔法……いや、ここの川の水で世話をするべきか。それにしても良い村だ。土魔法!」


 そうして俺は、土魔法でバケツと村全体を覆うバリケードを作った。一流の魔法使いですら作れない量の魔力で練り上げる。

 ……浮遊魔法で置いていかれたときに覚醒、死にものぐるいで完成させたオレだけの力だ。メリットだけ書くと強そうだが弱い。魔力はあろうとも、出力が違いすぎて負けるし、応用魔法も使えないから一瞬を突かれ負ける。いろいろ残念で不出来な力。


「そしてバリケードを三重に重ねて! 水と風を混ぜて固くする……よし」


 あるときはパーティの役に立てるかな、って思っていたけど全く駄目だったな。意気揚々と報告しようとして、普通にコークの応用魔法にボロ負け。そのときに「嘘つき」呼ばわりされたのは流石に効いた。結局弱いままだし、あながち嘘じゃないと言えないのも辛かった。

 今は、それなりに有用だって分かったから良いけどな。魔力十分の一……百分の一になっても応用使えた方が良いのは確定的だけど。


「そこそこな魔物相手なら傷つけられないはず……いっぱい作れても、上級魔物なら一発で壊れるシロモノだしなあ。まあ帰るか」



「うええっ!! もうバリケード作ったんですか?! ……やっぱり凄いです、ジャドさん!」


 多分、彼女から見たらなんにもしてないと思われそうなくらい一瞬で終わらせた。まあ慣れだな。ギルドでのノルマもこれくらいのスピードでないと終わらないし。応用使えない、戦闘も向いていない、だと香月ギルドじゃやっていけない。


「やってきたけど、一応見てくるか? 良くなかったらやり直すけど」


「いやいや! 見なくても分かりますよ! ありがとうございます!」


 短く揃えられた赤い髪を崩れんばかりに振り、彼女は否定してくれた。ところどころから見える笑顔……感謝されるのも久しぶりな気がする。

 どうしてだろうか、心臓がうるさく思う。情けないくらい涙が出てしまいそうだ。


「……魔物がいないか見回りしてくる」


 夜とは言えないけど、世界が少し暗く見える。でも、東から出る夕日はいつもより濁っていない感じに見えた……気がする。

 コークたちどうしてるか。オレがスカウトした子たちも、ちゃんとやっているだろうか。あれでも全国二位、頑張ってほしいが。

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