機密体
「・・・・・・きろ・・・オイ、お前!」
聞き覚えのある声に呼び起こされた。
ハッと気付いて辺りを見渡す行夫。
寝ていたはずの身体も、なにかに浮かされているような気持ち悪さを覚える。
見覚えのある光景にうんざりする行夫の口元は白毛の中でヒリヒリと赤く腫れていた。
さっきのクスリらしきモノのせいであろう。
「お前、またなんかやられたのか?呼ばれるこっちの身も考えてくれよ。毎日出られる訳じゃないしさぁ。」
黒い小悪魔もうんざり顔をしていたが、何か前と違うように見えた。
頬が角張っており、肋骨の陰影が目立っていた。
何故かやつれている。
まさか・・・・・
何か勘を抱いたようだ。
すぐさま聞いてみた。
「ねぇ、なんかやつれているけど・・・・どうしたの、それ・・・・・?」
「ん?これか?」
「まさか・・・・あの時の戦いで消耗した・・・・」
「いや、ただのダイエットだから。」
聞き損を露にした行夫。
ただのダイエットだった。
いやいや、なんで内なる自分が勝手にダイエットなんかやってるわけ!?
思わず心の中で呟いた。
心の中であるから悟られないと思われたが、はっきりと、耳に聞こえる反応が来た。
「なんで、て。そりゃお前のせいだろ。毎日ポテチをポリポリポリポリポリポリポリポリ食っているせいでこっちも余計な脂肪エネルギーが回ってくるんだよ。少しはこっちの事も考えろよ。」
言われのない罪を即座に振り掛けられて反論も発することが出来ない。
行夫の顔色は更に陰が投影され、もう一人の行夫のような暗黒がくっきり表現されていた。
同じ暗黒でも、一方はただの落ち込みから来るものであるが、片や裏の自分の黒は、無尽蔵の憎悪を溜め込んだ底無し沼の、粘土が強い泥のように重いものだった。
「・・・・・まぁいい。別に契約に触れることではないしな。とにかく、家主に呼ばれたからにゃぁ用件は聞かなきゃな。して、何の用じゃ?」
ふて腐れた不機嫌な小悪魔のような態度を改め、前と同じ、闇の中で光る毒々しい黄色の瞳が、行夫を睨む。
口調の柔らかさと、放つ醜悪な闇の気のギャップが、行夫の震えを招いているのかもしれない。
「・・・・・いや、何でもなかった。衝動的に来てしまったものだと思う。その・・・・・ごめん。」
「なぁに遠慮気味になってるんだ?力が欲しいんだろ?助けが必要だから読んだんだろ?違うか?」
自分でも何で読んだのか不思議だった。
思い当たる節はあるとしても、辻褄が合わない・・・・・
そもそもまだ自分の身に危険が迫っているとは確信出来ない。
恐らく、前回の事があっての神経反射による、抜け殻の助け声に反応して駆けつけてしまったのであろう。
用もなく呼んでしまったことに申し訳なく思う行夫。
その事について謝罪しようとした、その時だった。
「・・・・!オイ、さっきの話は後だ。どうやらお目覚めらしい。」
二人だけの、この歪んだ異世界に、不規則な木漏れ日のような光が差し込んだ。
それは、太陽光のような温もりを感じる平行光とは違う、逆に寒気や少々の恐怖を覚える白色の放射光であった。
見た目は太陽に似ている瞳の光が行夫自身を照らす。
もう一人には何も温もりも感じない。
気付けば白く照らされていた身体が埃のように分解され、段々と軽くなっていった。
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