独り立ち
自分はケモノ系が好きな人間でありますが、ふと思ったことがあります。
もし獣人がこの世に出たら、社会はどのように変化してるのか、友好な関係は築けるのだろうか・・・
いろいろあるので詮索するとキリが無いが、つまりは「ヒトと獣人」の関係を述べているのです。主人公も獣人ではありますが、ヒトでもあります。果たして、彼はどのようになるのであろうか。
お楽しみください。
「ジリリリリリリリリリリリリ」
「ポン」
暗い空間の沈黙を裂くかのように目覚まし時計が鳴り、消された。
消した主は起き上がり、差し込む光に向かい、カーテンを開けた。
「ふぁ~~…」
大きなあくびをするケモノの子。名前は尾高行雄。黒狼の子である。
行雄は起きるとすぐに台所に向かい、朝食を作り始めた。
焼いてる目玉焼きの油が鳴っているときに、彼の父は起きた。行雄と違い、人間である父が。遅起きの反動でくる疲れを紛らわすように朝のストレッチを軽くしながら来た。
「おはよう、行雄」
「あ、おはよう。父ちゃん」
焼き終わった目玉焼きを皿に寄せて、ご飯とほかのおかずと一緒に食卓に持っていった。
「いただきま~す!」
2人はそろって言って食べた。
「行雄、どうだい。よく眠れたか。」
「う~ん、あんまり。明日が旅立ちだと思うと、胸の動悸が止まらないんだ。」
苦笑しながら行雄はソーセージをつまんだ。
「そうか。だが、お前がここを離れると、お父さん一人になっちゃうな~。」
「仕方がないもん。獣人は15歳になったら一人立ちしなきゃいけないし。」
残念そうな顔をしてる父に、行雄は言った。
「そうだなぁ。あ、そうだ!お母さんに独り立ちすることを言っておきなさい。」
「うん!」
そううなずいて、つまんだソーセージを口に入れた。
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時は23世紀。人類は、21世紀に最盛期を迎えて衰退した細胞学を復興し、さらに発展せんとあらゆる手段を使い、新技術を生み出していった。もちろん、払った代償は大きいが・・・。
その中でも、23世紀中頃に生み出され、完成した超技術がある。
それが
「ヒト獣転細胞組み換え技術」
略して、「獣化術」
である。
これはヒトの細胞を別の動物の細胞と組み合わせ、獣人を創り上げることを可能にした技術である。
それまではヒトと他の動物の遺伝子がまざっても、新しい種はできないと言われてたが、この技術が確立したことで定説は覆された。
だが、例外で、ヒトと他の動物のハイブリッドが生まれたという事例もある(ごく少数であるが・・・)
本来は、動物とのコミュニケーションをとる為に開発されたが、後から発見したことによると獣人はヒトよりも生命力及び力の強さが倍以上になるようだ。それ故、もともとの目的から外れた、「人類強化」というある種の人間改造の技術になっていった・・・。
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朝食を済ませた行雄は仏壇に向かい、お線香を供えた。
彼の母は行雄が小さいころに他界してしまった。父によると、胃がんで亡くなったらしい。
写真に写ってる行雄の母を見て、
「母さん、僕これから独り立ちするんだ。すごくない?15歳で一人だよ?なんでも自由なんだよ?・・・・」
とはしゃいで言ったが、一息入れて彼は続けた。
「・・・本当は行きたくないんだ。15年間ずっと父ちゃんと暮らしてきたし、この住み慣れた町から離れなきゃいけないし・・・。なによりも、母さんがどうして死んじゃったのか、だれも教えてくれないし・・・。ずっとここにいたい、ずっと・・・」
さっきまで上がっていた尻尾が下がっているのは寂しさばかりではなかった・・・。
しばらく仏壇の前で座っていたが、立ち上がって、自分の部屋に戻った。
支度を済ませた行雄は玄関に向かったが・・・
「父ちゃぁ~~ん!ちょっと手伝ってぇ~~!トランクケースが重いのぉ~!」
慌てて駆けつけた父はトランクケースを軽々と下ろした。
「ありがとう」
「どういたしまして。ちょっと重かったけど、何入れたの?」
「ええっと~、ゴーグルと手袋と参考書、漫画本とかゲーム機とか・・・あと、これも」
そう言って出したものは
「ぬ、ぬいぐるみ~!?お前もう15歳だろ?」
「だって~、夜寝るときとか一人は寂しいし~、これ好きなんだも~ん!」
「変わんないな~、お前は。」
苦笑する父だった。
「ささ!もう行かなきゃいけないんだろ?飛行機、乗り遅れるんじゃないぞ!」
「あ~!そうだった!!」
慌てて出ようとする行雄。
すると、
「あ、ちょっと待ってて!」
父が止めて、しばらくしてから何かを持ってきた。
「何これ?」
「母さんの形見だよ。結婚したときからず~っと持ってたものだよ。」
それは、小さな宝玉だった。サファイアのような蒼い色に黄色がかかった白、まるで満月が顔をだした夜空の様な幻想的な色と模様だった。
「お守りとして持って行きなさい。」
「でも、今まで父ちゃんがずっともってたものでしょ?」
「お前は俺の息子で、母さんの子だ。ずっと一緒にいると思って、これを持っていろ。なぁに、父さんは心配無いよ!これがなくちゃ生きていけない程、落ちぶれた父じゃないぞ。」
胸を張って元気そうに行ってる父であるが、どこか寂しさを感じる。ずっと15年間一緒に暮らしてきて初めての寂しさを感じた。ずっとそうとは思わなかったのに・・・・
「よし!もういいだろう。怪我と病気だけはするんじゃないぞ。」
「うん!」
「あと、手紙はちゃんと出せよ!」
「わかってるよ~!」
お節介なほど言い聞かせる父を後にして家を出た。しばらく歩いてると、何か忘れ物をしたときと同じような思いが出てきた。振り返ってみると、父はまだ立っていた。手を振ると返してくれた。
それからは父のほうには振り返らず進んだ。一人になって出る寂しさは雪となって降ってきた。まるで過去の思い出を掘り返すかのようにしんしんと・・・
これからは自分ひとりで生きなきゃ駄目だ!と心に決めていたが、やはり寂しいものだ、と改めて思っていた。そして正夫は飛行機のチケットを確認した。
「羽田発―新千歳着 12便」




