11 呼び出し
「あみなちゃんから連絡きた?」
「そんなすぐ来ないと思うよー」
そもそも来るかもわからない。
亜美菜は連絡をつなげたままにしておくという約束はしたが、実際に連絡はしてこない。
(なんのためにつなげたままなのかな⋯⋯)
美花は少し疑問に思いながらも、しばらくスマホを放置していた。
「み、みはなちゃんっ!」
急に美穂が声をかけたので、美花は思わず手に持っていた本を落としてしまった。
「何? 花瓶割った?」
「ええっと⋯⋯今見せたいのはそれじゃなくて」
(あ、割ったんだ)
前もこういうことあったな、と思いながら、美花は少し笑った。
「亜美菜ちゃんからメッセージ来てるよ!」
「え」
美花はすぐにスマホを受け取ると、メッセージの画面を開いた。
『美花、学校の近くで話せる?』
(なんだろう⋯⋯)
気になったので、行ってみようと思った。
美花はメッセージに『わかった』と返すと、美穂の方に向き直った。
「お姉ちゃん、ちょっと行ってくる」
「う、うん、分かった⋯⋯」
美穂はそう言った。
美花は、その返事を聞くとすぐに玄関から飛び出していった。
(あみなちゃんは何で連絡したんだろう)
昔のようになにか言われるのか。それとも⋯⋯。
「あ、美花!」
いつもの調子で亜美菜が話しかけてきたので、美花は少し驚いて目を見開いた。
亜美菜は手を振りながら、「こっちこっち」と叫んでいる。
「美花ー、急に呼び出してごめんね!」
「うん」
いつもの調子で言う亜美菜に少し戸惑いを見せながらも、美花は頷いた。
「何で呼び出したの?」
責めている口調にならないよう気をつけたが、それでもきつい言い方に聞こえてしまっただろう。
「あの⋯⋯」
亜美菜は急に真剣な顔を見せた。
「ごめん」
美花ははっと目を見開く。
「それだけは、伝えたくて⋯⋯じゃあね!」
亜美菜が走り去っていく。
美花は「あれ?」と思った。
(あみなちゃんも、考えてくれたのかな?)
美花も家に帰っていった。少しだけ頬が緩んでいることに、美花は気づいていない。
「みはなちゃーん、暑いね⋯⋯」
「うん⋯⋯」
今日はかなり暑い日だった。
美花はうちわを思いっきり仰ぎながら床でゴロゴロしていた。
今日は日曜なので、学校に行かなくていい。なのでずっとのんびりと過ごしていた。
「扇風機まわす⋯⋯?」
美穂が聞いてきた。
「ありがと」
美穂は扇風機を持ってこようとして、盛大に転んでしまった。
その拍子にスイッチが押されて扇風機が回りだす。
「みはなちゃん、ごめん⋯⋯転んじゃった」
「⋯⋯」
美花はただその状況を見るしかなかった。よく見るとコードが足に絡まっている。それで転んだのだろう。
(壊れてないよね?)
美花はそこを心配してしまった。
仕方なく美穂の足元に近づき、絡まっているのを直してあげた。扇風機に体が近づいてうるさかった。
「そういえば、あみなちゃんとは⋯⋯」
「ん? 何? 扇風機の音で聞こえない」
「な、なんでもない!」
(なんて言ったんだろう?)
少し気になってしまった。
「お姉ちゃん、明日学校だけど大丈夫?」
「まだだらけたーい」
美穂は床でゴロゴロしながら言う。
美花は心配しながらも、自分までゴロゴロとだらけてしまった。
「今日は暑いけど、明日は涼しいはずだよ?」
「そういうことじゃないんだよね⋯⋯」
「え、じゃあ何で?」
「あのね⋯⋯」
美穂は床から思いっきり起き上がると、美花の方に目を向けた。
「私、学校って勉強ばっかりって気づいたの」
「今更?」
美花は思わず突っ込んでしまった。
「だって、勉強しかしないじゃん?」
「それは小学校の時もでしょ」
美穂は「そういうことじゃないんだよね⋯⋯」と呟いている。
「私、この学校についていけるほど頭が良くないからー」
「それは私も」
「みはなちゃんは私より頭いいでしょ?」
「そうかな?」
そうなのー、と美穂は言っている。
(そんなことはないと思うけど⋯⋯)
そう思っても、美穂にこれ以上なにか言っても聞かないと思ったので何も言わなかった。
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