第1話:プロローグ
(……自由に生きたかった……)
光の欠片すら差し込まない深淵で、
“ひとつの意識”が、波紋のように淡い願いを繰り返していた。
──その意識は“ひとつの人生”を終えたばかり。
(家族の愛情に包まれ──)
(欲しいものはすべて手に入り──)
温かな家族の手の記憶。
そっと差し出されれば、食べたいものも、知りたいことも、望むすべてが与えられた。
ただひとつ──行動の自由だけが、最後まで叶わなかった。
(自由に、気軽に出かけて──)
(カラオケで朝まで騒いだり──)
(どこかの海で砂浜を歩いたり──)
映像で見ただけの風景は、
どれもこれも触れられぬまま。
それから、どれほどの時間が流れたのか。
深淵は静かに脈動し、意識の輪郭がゆっくりと縁取られていく。
そして、
──闇の中心に、ひとつの光が生まれた。
それは意識を包み込み
瞬く間に広がり
<当世界へと接続──>
温度を与え
<希望に最も近い種を選定──>
形を与え
……
<当世界で有効な知識を判定──知識:10>
<思考力が当人類の平均を大きく超越……>
<当世界への過干渉要因を検知……生物・物理に関する理解を保留──思考:15>
力を与え
……
<第2コアスキルのMP要求値をクリア──>
<第3コアスキルを解放しました>
<魂と肉体の再構築を完了──>
──意識は、元とは異なる世界へと、生まれ落ちた。




