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第27話 花の国の聖女補佐官。

グレシアさん視点ですが25・26話から少し時間が経過しています。


 あの痛ましい争乱から、気付けば半年が過ぎていました。

 国土を覆いつくしていた大きな謎の花は、なんとプレニア国をも覆いつくしていたのだそうです。


 プレニア国にはアルゲンティア国とレーヴィテラ国、ホーレリア国から合同調査団が出ましたが、残念ながら生き残った人は居なかったようです。


 我がオルフェリア国も、およそ王都の民の四割ほどを喪い、それ以外の地域の民の過半数を喪いました。


 プレニアと違って、暴徒に殺された民の方が、神の力で花と化した暴徒よりも多かったのだそうですが。

 なので、女神様が目覚められた時点で生きていた真っ当な民は、皆女神様と古の聖女様達の力で、生き残ることができたのだそうです。


 わたしはその過程では、なんにもしてませんけどね。力を使い果たして、ただ眠っていただけ!


 ですが、わたしのしたことが、生き残りを増やしたのだと、花の騎士様や神女様、それにエドレイド公爵閣下に褒められました。



 仕事の合間に、当時の事を少し思い返します。


 アリシア様とも、あちらが『花園』の跡地の草原を突っ切ってきてくださったので、割合すぐに合流できました。

 アリシア様に同道していた宰相閣下も逃げる終盤で腰を痛めたものの、ご無事でしたが、王宮から避難した方々で、生き残った者は合わせて二十数名に留まりました。


 ノーレル侯爵という、裏門の護りの要であるはずの方が、邪神の卵側に付いていたのだそう。

 ノーレル侯爵自身は、何故か王宮のどこかのベッドの上で、上着を脱いだ状態で喉を一突きにされ、亡くなっておられたそうです。


「はにーとらっぷという奴じゃな」

 神女様は棒読みで知らない単語を申します。恐らく神女様も知らない言葉?


「下履きを脱ぐ前に斃されるとは、どれ程間抜けだったのやら」

 晒す首があるならまあよいか、と、恐ろしいことを述べるのはグウェンドリン様。


「後宮詰め女官の一人に言い寄っているという話は聞いておったが……よもや補佐殿とは。あの方では、我でも勝てるかどうか怪しいぞ」

 苦笑するエドレイド公爵閣下の言われる補佐役殿、とは、もしかして、後宮女官長補佐のミストレア・エクセリサ様でしょうか……


 うちのメイド長がお義父様に拾われたときに、直々に鍛え直して下さった方だと聞いているのですが?

 確かに御年を召しても美しい方なのですけど、後宮侍女としてのドレスをお召しになっていても、一目で武人とわかる方なのですよ。


「逆にらしくないですわね、ミストレア様が正々堂々と立ち合いに行かないなんて」

「わたしの家のメイド長を鍛えて下さった方なので多少存じておりますけど……反逆者には立ち合いの名誉など不要とお考えだったのかもしれません」

 公爵様の次女様の言葉に、思わずそう口を出したら、公爵家の方全員に、成程、と納得されました。


「子爵家の皆さんを護り切ったあのメイドたちが彼女の薫陶を受けていたのなら、納得ですなあ」

 そしてエドレイド公爵様の言葉で、お義父様もおかあさまも、お姉さま方も無事であることが判りました!なんという僥倖!


 メイド長……レクシーが、自警団と称してメイドの希望者さんを鍛えていたのは知っていましたが、まさか本当にそれが役に立つ日が来てしまうだなんて。




 そして今わたしは、王宮にいます。

 聖女補佐官という役職が付いていますが、実態はマウリシオ様……摂政殿下の補佐官です。


 とても、忙しい。


『花園』が失われた結果、『花の騎士』は任を解かれたのだそうです。


 聖女の方はアリシア様がそのままお勤めになっていらっしゃいますが、できることがだいぶんと変わった、そうで、今は訓練をしなおしていらっしゃいます。


 癒しの力が、アリシア様に発現したのですよね。

 代わりに、糸を出す力がなくなってしまったそうです。


 マウリシオ様の方は、『花の騎士』当時の記憶はそのまま残っていらっしゃるそうです。

 国政に関わる官僚が大量に失われたり、火事でいろんな資料が焼けてしまったので、それらを記憶から補完できる状態が非常に有難い、とはおっしゃっておりますが……


 その情報を書き記し、整理するための時間が大幅に増えて、更に多忙になってしまわれました。

 わたしは聖女様が鍛錬で仕事を控えている間、そちらを手伝っている形ですね。


 それに加えて、未成年の陛下を補佐する摂政のお仕事もありますから、大忙しです。

 わたしまでそういった公の場に引っ張り出されることがあるくらいです。

 これでも宰相閣下が生き残られたので、その分マシだというのですから、人手不足とは恐ろしいものですね。


 わたしの現在の身分はマスフィルド子爵令嬢に戻っています。

 ただ、生き残りの貴族が殆どいなくなってしまったため、マスフィルド家自体が伯爵家に陞爵することが既に本決まりです。


 侯爵でもいいと言われていたのですが、お義父様が固辞なさいました。

 避難しただけで何もしていません、と言われたら宰相閣下もそれ以上押せなかったそうです。


 あの大きな花たちは、オルフェリア国内では、ひと月ほど咲き続けたあと、種を付けて枯れました。


 王都の中に花畑を作るわけにもいかなかったので、それらは『花園』の跡地の草原に集められました。

 そうしましたら、その種から、以前『花園』にあった植物のいくつかが復活しました。

 どれも薬効の穏やかな、優しい植物です。

 『花園』にしかなかったものは劇物が多かったので、普通種が大半ですね。


 すべてがそうなったわけではなく、ごく普通の花を咲かせる植物やお野菜までありましたけれど。



 ロミレイア様は、元聖女の任を解かれ王族に復帰し、アルゲンティア国に正式に輿入れなさいました。

 アルケイデス王と共にあちらに赴かれた後ですので、事後処理ですけれど。

 


 そのアルゲンティア国でも異変はあったと聞きます。

 ユーレラ国と取引のあった商人たちが軒並み、一家根絶やしになる勢いで病死したのだとか。


 法外な手数料で暴利を貪っていた豪商たちの資産は、引き継ぐものがないとして国庫に納められた後、何故か我が国を支援する資材となっているようです。


 神女様はファンダニアに無事お帰りになったそうです。

 出立の際には、神女の位を降りたら遊びに来る、とおっしゃっておられました。


 プレニア国の跡地には、まだ花が咲いたままだそうです。

 あの場所も、今後はオルフェリア国の管理下に置かれることになるようですが……人手が全然足りていません。


 平和は戻ったけれど、前途多難。

 私たちの現状はそんな感じですね……

だってユーレラに金掛けようにもなんもねーですし……

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