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憧れの先輩のパパ活現場を目撃してしまった僕、大人のお姉さんに拾われる。  作者: 二上圭@じたこよ発売中
三章

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10 他人の納得

「ご馳走様」と手を合わせて立ち上がろうとすると、肩にそっと手が置かれた。


「それで」


 話はまだ終わってないだろ、という無言の圧に押されて、浮かしかけた腰が元の位置に戻る。


「なんで先輩方は、噂のテルくんを求めて乗り込んできたんだ?」


「その言い方は、もう察してるでしょ」


「なら言い方を変えるか。なんで、お姫様との関係がバレてるんだ?」


「カグヤ先輩と一緒に登校したから」


「あのワカが、お姫様と一緒に登校しただって……!」


 コウくんは大げさに目を見開いてみせたが、その芝居がかった態度は白々しすぎた。


「それも知ってたんでしょ」


「『若井がまたカグヤ先輩と登校してるらしいぞ』って、ワカが来る前から話に上がってたからな」


 悪びれる様子もなく、当然のように言ってのける。どうやら登校中の段階で、情報は広まっていたようだ。


「連絡網が優秀過ぎるのも、考えものだよね」


「令和は監視社会だからな」


「個人のプライバシーって、どこ行ったんだろうね。あー、やだやだ」


 再び立ち上がろうとした瞬間、またも肩に手が置かれる。


「ついにお姫様といい仲になったのか?」


「なってないし、兆しもないよ」


「ならなんで『覚悟』を決めて、お姫様と登校なんて始めたんだ?」


「それは……」


 コウくんの問いかけに、言葉が詰まる。


 元々、その理由を話す予定ではあったが、いざ本人を前にすると口が重くなった。しかしいつまでも避けることはできないし、そもそも逃がしてくれるような相手ではない。


 金曜に起きた出来事を、順を追って説明した。


 二度目とあって、説明はスムーズに終わったが、変わらない疲労感がぶり返した。それを語り終えたときには、サチさんのような拍手を送られてきた。


「俺が帰った後、そんな面白いことが起きてたなんてな」


「面白くもなんともないよ。コウくんも他人事じゃないんだから、苦労を分かち合ってよ」


「分かち合うもなにも、裏でなにを言われようが気にならんからな」


 肩をすくめながら、コウくんは軽く笑った。


「でもワカにとっては、いいキッカケになったんじゃないか?」


「なんのさ?」


「お姫様と関係を推し進めるための」


「だからカグヤ先輩は、そういう相手じゃないってば」


「そんな心のブレーキを緩めるには、ちょうどいい機会だって話だよ。踏んでる自覚くらい、あるだろ?」


 そんなものはないと、否定することはできなかった。


 なぜカグヤ先輩は、こんな笑顔を僕に向けてくれるのか。その疑問が胸をよぎるたび、友情という言葉を思い出し、自分を戒めてきた。


 その戒めは、たしかに自覚のもとにあった。なにより一度、


『このままいってたら、ガチ恋待ったなしです』


 ユエさんに慰められていたときに、正直な気持ちを言葉にしたのだ。


 コウくんにここまで言われたのだ。もはや隠し通せるものではなかった。けれど、なにをどう口にすればいいのかわからず、黙ったままでいると、


「ワカのことだ。好きになったって報われないとか、関係が壊れるのが怖いとか、そもそも自分なんかじゃ釣り合わないって、そんなあるあるの卑屈な理由で、最初から諦めてるんだろうけどな」


 胸の奥に突き刺さるほどの図星で、返す言葉が見つからない。


「だからこそ『釣り合わないから』なんてつまらない普通は、半端に抱えておくな。いい加減捨てちまえ」


「半端に抱えてる?」


「友情はオッケーで、恋愛はダメだっておかしな話だろ」


「……あ」


 自分でも気づかないうちに、息を呑んでいた。


 言われてみれば、その通りだった。釣り合わないのを理由に拒まれた経験があるわけでもないのに、自分の中で当たり前のように線を引いていた。


「そもそもの悩みのタネを思い出してみろ。女子たちから、この俺の相手役に選ばれてるんだぞ?」


「それを考えたら、自信を持って……いやー、やっぱり素直には喜べないや」


「釣り合うかどうかなんてのは、他人の物差しで測られた納得の話ってことだよ」


 つまらないものを笑い飛ばすその言葉が、これまた胸にすとんと落ちた。


 大変遺憾ながら、僕はコウくんと付き合っていることにされている。しかしそれが釣り合っているかどうかと問われれば、誰が見てもそうは思わないだろう。


 それなのにコウくんに恋する乙女たちは、喜んでそれを受け入れている。


 なぜか?


 納得しているからだ。


 本当はコウくんの隣に寄り添いたいと願っている。でも、それが叶わない夢であることを知っている。だから、自分が諦めた願いを他の誰かが叶えるくらいなら――せめて納得できる相手であってほしい。


 もしそうでなければ、不満は感情のまま形を変え、攻撃をするための矛となる。


 釣り合わないなんて言葉は、そんな矛の形のひとつなのかもしれない。


「結局、一番大事なのは、当人同士の納得だよ。他人の納得なんて、我が儘の押し付けでしかないからな」


 コウくんはそんなものたちを鼻で笑うように言った。


「それが気になるのは、自分に自信がないからだ。だから俺は、他人の我が儘なんて気にしないぞ」


「コウくんって、自信の塊みたいなところあるもんね」


「そんな奴のお相手に、我が儘の塊みたいな奴らから選ばれたんだ。ワカも少しは、自信を持て」


「その自信の拠り所、酷すぎて頭痛が痛いんだけど」


「それ、二重表現だぞ」


「ひと粒で二度痛いってこと」


 そう返すと、一本取られたようにコウくんは笑った。

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百合の間に挟まるな! ~脅迫NTRもの展開を阻止した結果、百合の間に挟まれた件~
並行して連載しておりますので、こちらもお目通し頂ければm(_ _)m
― 新着の感想 ―
誇れと言われても、やっぱり嬉しくはないよねえw 今度は、コウくんに加えて女にも二股かけているのか、って燃やされてしまったりw
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