02 応接室での邂逅(そんないいものじゃない) 01
「つまり?」
「筋肉がガッチリしていて、体にムッチリと詰まっているので“ガチムチ”と、体を鍛えている筋肉だr、男性に言う言葉だと思ってください」
「なるほど……?」
そう言いながら、マディル団長――、バーナード・オーブリー・マディル第一騎士団長は、軽く頷いた。
王宮内の一室へと案内して貰っている最中である。
神殿から来たガヤ集団は、マディル団長の後ろについて歩いている。
アリスト王子と妖怪イチャモンツケは、後でもう一度合流するからと、王宮に到着してすぐに別れた。騎士のガヤ集団は、王子の護衛なのだろう、アリスト王子について行った。
ちなみに妖怪イチャモンツケには、お別れのすれ違いざまに、
「王子に岡惚れ中なのは良いけど、見当違いな嫉妬を向けるのやめてくれない?何なら当人にばらしてあげようか?」
と、耳元で囁いてあげたら、顔を青ざめさせて体を硬直させていた。
ザマぁ見ろ、である。
「こちらでお待ちください」
白く塗られた木製のドアについた金のノブをゆっくりと回し、マディル団長は私を部屋に入るようにと手で促した。
入ってみると、これまた豪勢なソファーセットに文様も鮮やかな赤系の絨毯、金糸で彩られたカーテンの向こうには、薔薇と思しき花が満開に咲いている庭園。
綺羅びやかながらも調和を見出し、しっかりと計算された見事な応接室だ。
ソファに相対するように設置された大理石の暖炉の上には、これまた金色で豪奢な額で縁取られた大きな鏡が――、
「……はっあぁ……!?」
マディル団長に誘導されるまま、ソファーに腰掛けようと足を運び、そして何気なく振り向いた先にあった、鏡に写った自分の姿に、思わず動きを止める。
暖炉の上という、少々高い位置にあるため、胸の上からしか写ってはいない。
しかし、自分に合わせて動くその異様な姿が自分の姿だと理解した途端、脳内が一時停止した。
ピンクブロンドに榛色の瞳、の、十六歳前後頃の私。
若干……若干、前世よりも瞳が大きめで睫毛も長め。その睫毛も眉毛もピンクブロンドだ。
若さもあってきめ細やかになった肌は、以前よりも白さを感じる。
全体的に淡く纏められた彩りに、以前よりも小ぶりに整った唇だけが薔薇色に映える。
なんというか、一見、美少女、風、に見える。
ただし、ただし、全体的に“私”、である。
ちょっとつり上がった奥二重の目とその右下にある泣き黒子が、キツイ性格を見事に表している。
皮肉げに少し右側だけ口角が上がっているのも、そのまま性格を表していると言えるだろう。
ピンクブロンドの眉も整ってはいるが、当然のように上向きだ。
なんだ、この微妙に残念仕様の女子!
あれだ、“転生して浮足立った挙げ句、逆ハーレム作ろうとしてざまぁされる系のヒロイン”だ!
腹黒すぎて笑顔が怖いアレだ!
(“おとめげーむのひろいん”は“ぴんくぶろんど”が定番なのでしょう?)
どやぁ、っとした声で女神が宣う。
まて、そもそも容姿を変えられると言うのならば、何故平たい日本人顔を残した!
しかも私の召喚された本来の役目は、“ヒロイン”じゃないだろ?どう考えても“サポートキャラ”か“仲人のおばちゃん”だろ!?
何、この“ヒロイン”みたいな容姿ぃぃぃ!!!!
(だって、あんまり可愛らしくしてしまうと、イリシアの神子みたいに男性に言い寄られすぎてしまうじゃない?ライトとは言え『魅了』を授けてしまっているし……。かと言ってそのままの姿だと、薹が立ちすぎているし、元のルーナは目つきがちょーっとキツすぎて警戒されちゃうかなぁって、だからね?ちょっと瞳のサイズも大きくしてみたのよ!)
ドヤる女神の声が脳内に響き渡る。
同時に、ピクピクと頬の筋肉が引きつったのがわかった。
確かに私は、目つきが悪かった。中学に入ったあたりくらいからどんっと目が悪くなって、黒板を頑張って見ていたら、「人が殺せる眼光が出てる」とか言われたさ。中一でクラス初顔合わせの日に、クラス一背が低かった男子生徒に偶然肩がぶつかって、慌てて謝罪しようと顔を上から覗き込んだら半泣きになられたさ。
しかしそれをはっきり指摘するとかこの、、、、
この女神、マジでいい性格してるわ(キレ気味)。
ここまでお読みいただきましてありがとうございます。
ルーナは、現在ピンクブロンドの剛毛ストレートロング、榛色のツリ目、泣き黒子がチャームポイントかもしれない、身長176cmの美少女……と言えなくもない容姿だとお思いください。
胸はあんまり無いです(´・ω・`)。
身長と胸のサイズは前世のままです。