01 泉の間にて02
「お名前をお伺いしてもよろしいですか?」
泉から陸地へ上がった私に向かって、少年が声を掛けてくる。
金髪碧眼、わかりやすく王子様風である。幼さも残り、少々あどけなさも感じる。
ただし、自分より少々背が低く、目線が上向き。
百七十……いや、ちょっと足りないくらいかな。百六十五センチ……との間くらい。
と、そんなことを考えていると。
「殿下がお名前を聞いていらっしゃるのですが」
と、イライラした声が少年の後ろより聞こえてくる。
身長百八十弱。うん、私より少々高いか?
銀髪にアイスブルーの瞳、ツリ目がちでちょっと腹黒そうな青年が、声と同じく、苛立ちを隠しもしない表情を浮かべて立っていた。
心を落ち着けるために、心の中で素数を数える。
「私が女神の使徒になる前の世界では、」
(“神子”って言って!あ、“えんじぇる”でも良いわぁ!)
イラッ、とした気持ちを抑えつつ、女神様を無視することに決める。
「……“名や身元を聞くのならば、先に自分を明かしなさい”、って言うのが常識なのよ。ついでに言うと、目上の人間やお客様に対して先に名乗らせることもしない。ところで、この世界では、神子と王族なら、王族の方が偉いの?だとしたら、私の方が年上でも貴方に膝を折って平伏でもしなくちゃいけないかしら?地位が上だったら、自分の名前も身元も名乗らずに人に名乗らせるのが常識?でも私、この世界に来たばっかりのお客様状態だから、そんな常識一つも知らないのよねぇ」
わざとらしくニッコリと微笑みを浮かべてみせる。
後ろのガヤが、何故か全員一歩下がった。
「あっ、も、申し訳ございません。私はこの国の第三王子で、アリスト・ルド・ヴァルドルフと申します。使徒様には失礼致しました」
と、軽く敬礼のポーズを少年はとった。
後ろの従者っぽい銀髪は、「そんな殿下が頭を下げるなど!」と小声で慌てているが、はて、この世界は神の使徒より王族の方が立ち位置が上、という言うことで間違いないのだろうか……?
と思ったら、銀髪の横顔付近から、わかりやすく第三王子に向けて“←”が出ている。それもピンク。
「…………」
これが『感情指数(有効範囲:他者のみ)』かぁ……(遠い目)。
(“ぼーいずらぶ”ですわね!)
ウキウキとした女神の声と同時に、私の表情は恐らくチベットスナギツネの様相を呈したはずだ。
どうやら女神様は腐女子らしい。
(“てぃーんずらぶ”も“がーるずらぶ”も“れでぃーす”もいけましてよ!ただし“はーれむ”、お前はダメだ!)
範疇広すぎやしませんか、いや、なんかちょっと共感しちゃったんだけども。
(だからこそよ!だからこそ、貴女をわたくしの“神子”に指名したよの!)
そんなウキウキ声が脳内に響き渡る。
うん、はい、まあそんなことだろうと薄々気がついていました。
ただ、チョイスがちょっと間違えてると思います。
私二次元限定であって(尚、二.五次元はジャッジ厳し目)、三次元は範疇外なのですが。
お読みくださいましてありがとうございますm(_ _)m。
只今仕事が立て込んでおりまして、1週間に1回UPできたら良いなぁ、ペースでございます。
それでももし宜しければ、続きをお待ちいただければ幸いです。
女神は“神子”と呼ぶけれど、なんだか同じ単語を使いたくなくて“使徒”と宣う主人公。
しかし果たしてオタクにとっての中二病単語としては、どちらの方が痛みが強いのか。