01 泉の間にて01
そうしてやってきたルワンと言う異世界。
空から振ってきた私は、ライトノベルのテンプレートで言うところの、“聖なる泉”に落とされた。
ボッチャン!と。
いや、こういうのは普通、泉の上にふわりと浮いて、私自身がふんわりと光り輝き、神子としての特異性を見せるものなのではないか、と心の中で思っていると、周囲からザワザワとした――困惑の声が聞こえる。
「いや……なんか……」
「しかしお告げが……」
「二人目だぞ?」
「それにしたって……」
なんだろう、ザワザワは予定調和なのに、何故かその内容は予想外にネガティブ。
「……あの……、女神ハリアーフル様から遣わされた使徒様でいらっしゃいますでしょうか」
周囲の声に囚われていると、泉の端から恐る恐ると言った、でも一応頑張って声を張り上げたらしい、大人になりきっていない少年の声が聞こえる。歳は十四歳くらいだろうか。
「あっ、はい。そうです……一応」
その声に反応すると一層周囲のざわめきが強くなる。更にネガティブに。
「なんでハリアーフル様が……」
「イリシア様……の……だけでも……」
「混乱が……」
「……どなたを……」
「お名前をお伺いしても?」
泉の端にいる少年は、硬直したように微動だにせず、こちらの名前を聞いてくる。
(あ、“クピド”って名乗って?)
唐突に、頭の中へ響き渡る女神の声に、思わず叫んだ。
「煩い!」
なぜそんなクソ恥ずかしい名前を名乗らねばならん!
泉の外側にいる人達が、一斉に押し黙った。
「あ、いや……そうじゃなくて」
思わず出た言葉に対しての反応に些か罪悪感が募り、謝ろうと周囲に目を向け――、
不躾な目。
胡乱な物を見るような目。
困惑の表情。
誰一人近寄ろうとしない態度。
わかりやすく歓迎されていないとわかる雰囲気を感じる。
いや、女神の使徒だって判ってるのに、なんだろうこの違和感、すごくムカつく。
こっちは泉に落ちてずぶ濡れだって言うのに、誰一人としてこちらに近寄ってこようとはしないし、心配する様子もない。
そういや、人の名を聞くくせに自分たちの名や立場は明かしてこないな?こいつら。
……と、言うか貰った能力に『魅了(ライト)』ってなかったっけ?効いている気がしないんだけど、意識して使わないとダメ?使い方なんて聞いてないんだけど。
と、思ったら、再度女神の声が頭の中に響き渡った。
(イリシアの愛し子が『魅了(ミドル)』を持っているせいね。でも、“愛の仲人”がミドル以上持っていると、他者の恋を邪魔しちゃうのよねぇ……。だから、ここは自分で頑張って?)
いや、フォローしろよ!
今度は心の中だけで叫ぶも、女神様はうんともすんとも言わない。
判っていたけれど、最初から最後まで自分の都合だけを押し通そうとする女神である。
大きなため息をひとつつくと、 ザバリと泉から立ち上がって、彼らの方へと声を投げかける。
「とりあえず、泉から上がってからでいーい?寒くも冷たくもないけど、だからってずぶ濡れたままで喋らされるのも嫌なんだけど」
「あっ、はい、どうぞこちらに……お越しください」
そう言った少年は、恐る恐るといった様子で、自分の近くへ手だけを招くように動かして誘導してくる。
周囲の人々も立ち尽くしたまま、私の行動を見ているだけだった。
濡れるのが嫌なのか、それとも泉に入っちゃいけないルールでもあるのか、誰も近寄ってこない様子を見て、再度ため息をついた。
もう帰りたい。
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