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第5王子 と 乳兄弟  作者: 九守 兎
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魔法

遅くなりました。

そろそろ話が進展するかと思われます。


さて、ウィルを連れ帰って色々しているうちに、ウィルには第三騎士団が、おれにはセバスさんが迎えにきた。

で、今現在おれは執務室にいる。


チョコンとソファに座って、国王様を見る。

頭をひねりながら書類と奮闘中だ。

隣にアドルフさんがいて、ボソボソと何か言ってる。


・・・・暇だな。

セバスさんのいれてくれた紅茶を飲んで時間を潰す。

おれが普段いれる茶葉と違うっぽい。

香りも味も、全然違う。何て茶葉だろ。


しばらく、紅茶を2杯おかわりしたところで、やっと書類が片付いたようだ。


「待たせてすまんの。」


「いえ。」


国王様が前に座り、アドルフさんはその後ろに立つ。

セバスさんが数枚の羊皮紙を持ってきて、机に並べる。

何だろ?文字?


「さて、まずお主の知識がどれだけか、教えて貰わねばならん。ここに書かれておる言葉が読めるかの?」


羊皮紙を示して、微笑む国王様。

ふむ、意外と簡単なんだが。


「国王様より見て、右から古代マルヴ語、現世サガルト語、イグニス語、スピオラド語ですね。最後のは、フォルター語ですか?」


「ほう。フォルター語まで分かるのか。」


「一通りのことは本に書かれてましたから。」


たぶん、ウィルだとフォルター語は分からない。

アルイト王子が教えていなかったはずだ。

おれは書庫の本を読み漁ったから知ってるだけ。


「うむ、ではどこまで使える?」


「古代マルヴ語でしたら一通り。スピオラド語ですとかなり難しいです。現世サガルト語やイグニス語は、試したことがありません。できるとは思えないので。」


「賢明じゃ。魔法については、あまり教えることは無さそうだの。お主から何かあるかの?」


「あの、本に書かれてなかったのですが、無詠唱はできないのでしょうか?」


「不可能、と言いたいところだが、一部の者にはできる。」


あー、うん。何となくわかった。

無詠唱は、アレか、特典か。


「一部の者とは?」


「勇者と聞いておる。異世界と呼ばれる場所から、こちらに来た者達であれば、無詠唱ができるそうだ。」


やっぱりか。つまり、一般人には無理。

・・・ん?おれ? できるよ。転生者だし。

転生でも異世界から来たことには変わりないからね。


「・・・・クロノス、わしから一つ良いか?」


そう言いつつ、こちらへと歩を進めるアドルフさん。

国王様が軽く眉間を押さえてる。


「ジャック、といったか、お主その目は生まれつきか?」


「目、ですか?」


何かあったっけ?

色が珍しいことか?


「お主魔力が見えておるだろう?」


「? はい、見えてますけど。」


え、当たり前じゃん。魔法使うんだし。


「普通は見えん。わしもクロノスも、見えておらん。」


・・・・はい? え、魔力って見えないの?!

嘘でしょ?逆に皆見えてないのに魔法使えるの!?


「・・・知らんかったのか。」


呆れたように言われた。

いや、だって、誰も言わないから。


「これは警告よ。そう遠くない未来、その目を狙う者共がここへ来るだろう。やつらは手強いぞ?」


おれの反応を見る目で、ニヤリと笑うアドルフさん。

意地が悪いなぁ。


「目は渡しません。僕を狙うのであれば好都合です。僕一人で対処します。」


来るなら来い。返り討ちにしてやる。


「うむ。お主が本気を出せば、余裕であろうな。」


本気を出せば、の部分を強調して言われた。

あちゃあ、バレてらぁ。

一応、何のことでしょう? と首を傾げてやりすごす。


「アドルフ、その辺にしておけ。そろそろ時間であろう?」


「む、もうそんな時間か。一度下がるとしよう。」


国王様の一声でアドルフさんは退室していった。

仕事かな?


ボケッと扉が閉まるのを見ていると、部屋の空気が変わる。

視線をスライドさせると、国王様から紫色の糸が伸びている。うわぁ、見た目が。


「さて、セバスには悪いが、少しわしと二人で話そうかの。」


そう言って差し出されたもの、青い文字が記された紙。

あぁ、もう気付いたのかな?


「これは、お主が書いたもので良いかの?」


「はい。」


「うむ。では、単刀直入に聞こう。お主、何者じゃ?」


緩やかにこちらを見る、深い緑の瞳。

ウィルとよく似てるなぁ。


思考がずれたので戻し、今にも折れそうなメンタルを奮い立たせる。


「国王陛下は、何者だと思いますか?」


目元を弛め、自然な笑みを浮かべて問う。

質問に質問で返すのは、結構失礼なんだろうけど。

そんなこといってられねぇしなぁ。


国王様は、少し口を閉ざし、また開く。


「アスランの息子で、ウィリアムの乳兄弟。その年齢に反して、膨大な知識と優れた頭を持っておるな。不思議な子じゃ。」


やべ、真面目に返された。

やっぱり、演技や嘘は通じないか。


「それと、何かと隠し事をしておるな。わしらは、信用に値せぬか?」


そんな捨てられる犬みたいな顔せんで下さい。

ただでさえ罪悪感で死にそうなのに。


「・・・信用の有無ではありません。これは自分との誓いなのです。未熟で愚鈍な己を守るための、子供の意地をお許し下さい。」


ソファからおり、ひざまづく。

もちろん、おれは国王様達を信用しているし、尊敬してるぞ。


「ジャック、いつかは、話してくれるのだろう?」


「はい。必ず、全てをお話しします。」


「ならば、良い。座りなさい。大丈夫だから。」


そっと頭を撫でられ、促されるままソファに座る。

国王様は、少し悲しそうな顔をしていた。




その後、アルイト王子がやって来て、部屋を移動することになった。


サリサリと音をたてる地面。

手首には、ゴテゴテと何かがつけられた装置がつけられている。


「あの、アルイト王子殿下、これは?」


「属性との相性を測る魔道具だ。各属性の初めの魔法を唱えていってくれ。」


「わかりました。」


とりあえず、言われた通りの魔法を使う。


「『火礫(シュタイン)』」


ポンッ と火の玉が浮く。

そのまま火の玉を維持し、次の魔法。


「『水泡(ワーテル)』」


火の玉を覆うように水の膜かでき、火が消える。

水から植物、風、土、とどんどん魔法を使っていく。


思いつく一通りの魔法を使い終えると、魔道具を回収された。

難しそうな顔で魔道具を見ているアルイト王子の側に行き、手元を覗きこむ。 暗号のようなものが羅列されていて、まったく読めない。何だこれ?


「・・・は?」


唐突に低い声が聞こえた。

アルイト王子がこっちを見て、もう一回魔道具を見る。

深いため息をつかれた。


「あの、何か問題が?」


「いや。相性の良いものからいくぞ。 闇、風、土、水、無、植物、氷、光、火、聖の順だ。」


「なるほど。」


見事に対極になったな。

闇も聖も、相性は低めになるのが普通なんだが。


それにしても、火の相性が低めなのはアレか?

あっちでのことが関係してるのか?


「珍しくはあるが、問題はないだろう。ただ、火属性と相性が低いのは、後々苦労するかもしれないからな。対策はしておいて損はないぞ。」


「はい。ありがとうございます。」


ふむ、火属性は少し多めに練習しないとな。

そろそろ昼食の時間となることもあって、今日の指導は終わりとなった。


部屋に戻り、昼食を手早く済ませる。

騎士からの連絡で、ウィルは騎士達と昼食をとるらしい。

昼食を片付け終われば、母様は街へ出かける。


さて、午後は時間があるな。

掃除をして、筋トレをしたら、書斎にでも行こうか。

魔法について、ちゃんと考えないとな。


やることが決まったので、すぐに行動に移す。


「漂う者、ともに踊れ『傀儡』」


箒、ちりとり、雑巾を魔法で操作する。

床を掃き、ごみを集めたら、雑巾で磨きあげる。

カーペットの部分は出来ないので、目立つものだけを拾う。


通常の掃除なら30分はするであろう掃除が、ものの10分で終わった。 ん?魔法を使うのはズルい?


これも練習の一貫だよ。

操作系の魔法は、扱いが難しいからね。


箒類を片付け、筋トレをするために自室に入る。

装飾を外し、運動用の黒い服に着替える。


この服は試験のときに着ていたやつだよ。

汚れや汗を気にしないですむから、もらっておいた。


筋トレのメニューは成長にあわせて重くしてる。

そうだな、今だと、腹筋100回、腕立て100回、スクワット150回、魔力循環、部分強化、背筋50回、懸垂10回。

このぐらいかな?


背筋に加えて、懸垂を追加したのは良いけれど、これ10回でもかなりキツいんだよね。 初めの頃なんて、1回でも筋肉痛になったし。


それで、ここ最近思ったのが、

腹筋割れた6才児って、それなんてホラー?

子供ならムニムニしてるぐらいでちょうど良いよね?

ってなって、筋トレは続けて、少し脂肪がつくように食事とは別に間食を用意してる。


チョコクッキー、マフィン&クロテッドクリームなんかが多いね。クッキー類は簡単に作れるし、クリームは母様に頼んで買ってもらえる。


もちろん、ウィルや母様のおやつ用にも作ってるよ。

おれのだけ、ハイカロリーになるようにしてるだけ。


ほとんど慣れてきた筋トレをこなし、清潔の魔法を使って汗と汚れを落とす。服を着替え、髪を整えた。


クッキーをかじっていて、残りが少ないことに気がついた。

ふむ、明日あたりにでも作り足さないとな。


クッキーを呑みこみ、書斎へ向かう。




書斎で魔法についての書物を読み漁り、いろいろと再発見したことをまとめると。


聖属性と相性が良いのは、神官や巫女としての才能がある証拠で、勇者も同じ。

逆に闇属性と相性が良いのは、魔族や獣人などの人以外に多く、あまり良いとは言えない。


相性の悪い属性は、少しずつ使えるように練習するしかない。ただし、全く使えないと言っていいほど相性が悪い場合、諦めた方がいい。


無詠唱を用いた場合、姿に多少の変化がある。


このくらいだな。

最後の、無詠唱のやつについては、過去の勇者か前例だ。

無詠唱の際に、髪の色が変わったそうだ。


あぁ、過去の勇者だけど、子供に聞かせる話の中では省かれてる所があった。彼、魔王の核から生まれたドラゴンを倒した後、魔力の涸渇が原因で倒れて、そのまま亡くなったらしい。


平和になってめでたしめでたし、じゃ終わらないのが現実だけどさぁ。救った人が死んで、守られた人がぬくぬくと生きるのは、どうなんだろう。


守られた人にとって、救った人の死は、どれだけの意味を成すんだろうね。


現に、彼が死んだ後、勇者のパーティーは仲違い、情報や武具をめぐって争いが起きてたそうだし。


・・・・考えていても、しょうがないか。


本を閉じ、書斎を出れば、窓から夕日が射し込んでいた。

そろそろ母様も帰って来るだろう。

夕食用の食器でも出しておこうか。



亀より遅い作者ですが、

これからもお付き合いいただければ幸いです。


では、来週頃にまた。

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