魔法
遅くなりました。
そろそろ話が進展するかと思われます。
さて、ウィルを連れ帰って色々しているうちに、ウィルには第三騎士団が、おれにはセバスさんが迎えにきた。
で、今現在おれは執務室にいる。
チョコンとソファに座って、国王様を見る。
頭をひねりながら書類と奮闘中だ。
隣にアドルフさんがいて、ボソボソと何か言ってる。
・・・・暇だな。
セバスさんのいれてくれた紅茶を飲んで時間を潰す。
おれが普段いれる茶葉と違うっぽい。
香りも味も、全然違う。何て茶葉だろ。
しばらく、紅茶を2杯おかわりしたところで、やっと書類が片付いたようだ。
「待たせてすまんの。」
「いえ。」
国王様が前に座り、アドルフさんはその後ろに立つ。
セバスさんが数枚の羊皮紙を持ってきて、机に並べる。
何だろ?文字?
「さて、まずお主の知識がどれだけか、教えて貰わねばならん。ここに書かれておる言葉が読めるかの?」
羊皮紙を示して、微笑む国王様。
ふむ、意外と簡単なんだが。
「国王様より見て、右から古代マルヴ語、現世サガルト語、イグニス語、スピオラド語ですね。最後のは、フォルター語ですか?」
「ほう。フォルター語まで分かるのか。」
「一通りのことは本に書かれてましたから。」
たぶん、ウィルだとフォルター語は分からない。
アルイト王子が教えていなかったはずだ。
おれは書庫の本を読み漁ったから知ってるだけ。
「うむ、ではどこまで使える?」
「古代マルヴ語でしたら一通り。スピオラド語ですとかなり難しいです。現世サガルト語やイグニス語は、試したことがありません。できるとは思えないので。」
「賢明じゃ。魔法については、あまり教えることは無さそうだの。お主から何かあるかの?」
「あの、本に書かれてなかったのですが、無詠唱はできないのでしょうか?」
「不可能、と言いたいところだが、一部の者にはできる。」
あー、うん。何となくわかった。
無詠唱は、アレか、特典か。
「一部の者とは?」
「勇者と聞いておる。異世界と呼ばれる場所から、こちらに来た者達であれば、無詠唱ができるそうだ。」
やっぱりか。つまり、一般人には無理。
・・・ん?おれ? できるよ。転生者だし。
転生でも異世界から来たことには変わりないからね。
「・・・・クロノス、わしから一つ良いか?」
そう言いつつ、こちらへと歩を進めるアドルフさん。
国王様が軽く眉間を押さえてる。
「ジャック、といったか、お主その目は生まれつきか?」
「目、ですか?」
何かあったっけ?
色が珍しいことか?
「お主魔力が見えておるだろう?」
「? はい、見えてますけど。」
え、当たり前じゃん。魔法使うんだし。
「普通は見えん。わしもクロノスも、見えておらん。」
・・・・はい? え、魔力って見えないの?!
嘘でしょ?逆に皆見えてないのに魔法使えるの!?
「・・・知らんかったのか。」
呆れたように言われた。
いや、だって、誰も言わないから。
「これは警告よ。そう遠くない未来、その目を狙う者共がここへ来るだろう。やつらは手強いぞ?」
おれの反応を見る目で、ニヤリと笑うアドルフさん。
意地が悪いなぁ。
「目は渡しません。僕を狙うのであれば好都合です。僕一人で対処します。」
来るなら来い。返り討ちにしてやる。
「うむ。お主が本気を出せば、余裕であろうな。」
本気を出せば、の部分を強調して言われた。
あちゃあ、バレてらぁ。
一応、何のことでしょう? と首を傾げてやりすごす。
「アドルフ、その辺にしておけ。そろそろ時間であろう?」
「む、もうそんな時間か。一度下がるとしよう。」
国王様の一声でアドルフさんは退室していった。
仕事かな?
ボケッと扉が閉まるのを見ていると、部屋の空気が変わる。
視線をスライドさせると、国王様から紫色の糸が伸びている。うわぁ、見た目が。
「さて、セバスには悪いが、少しわしと二人で話そうかの。」
そう言って差し出されたもの、青い文字が記された紙。
あぁ、もう気付いたのかな?
「これは、お主が書いたもので良いかの?」
「はい。」
「うむ。では、単刀直入に聞こう。お主、何者じゃ?」
緩やかにこちらを見る、深い緑の瞳。
ウィルとよく似てるなぁ。
思考がずれたので戻し、今にも折れそうなメンタルを奮い立たせる。
「国王陛下は、何者だと思いますか?」
目元を弛め、自然な笑みを浮かべて問う。
質問に質問で返すのは、結構失礼なんだろうけど。
そんなこといってられねぇしなぁ。
国王様は、少し口を閉ざし、また開く。
「アスランの息子で、ウィリアムの乳兄弟。その年齢に反して、膨大な知識と優れた頭を持っておるな。不思議な子じゃ。」
やべ、真面目に返された。
やっぱり、演技や嘘は通じないか。
「それと、何かと隠し事をしておるな。わしらは、信用に値せぬか?」
そんな捨てられる犬みたいな顔せんで下さい。
ただでさえ罪悪感で死にそうなのに。
「・・・信用の有無ではありません。これは自分との誓いなのです。未熟で愚鈍な己を守るための、子供の意地をお許し下さい。」
ソファからおり、ひざまづく。
もちろん、おれは国王様達を信用しているし、尊敬してるぞ。
「ジャック、いつかは、話してくれるのだろう?」
「はい。必ず、全てをお話しします。」
「ならば、良い。座りなさい。大丈夫だから。」
そっと頭を撫でられ、促されるままソファに座る。
国王様は、少し悲しそうな顔をしていた。
その後、アルイト王子がやって来て、部屋を移動することになった。
サリサリと音をたてる地面。
手首には、ゴテゴテと何かがつけられた装置がつけられている。
「あの、アルイト王子殿下、これは?」
「属性との相性を測る魔道具だ。各属性の初めの魔法を唱えていってくれ。」
「わかりました。」
とりあえず、言われた通りの魔法を使う。
「『火礫』」
ポンッ と火の玉が浮く。
そのまま火の玉を維持し、次の魔法。
「『水泡』」
火の玉を覆うように水の膜かでき、火が消える。
水から植物、風、土、とどんどん魔法を使っていく。
思いつく一通りの魔法を使い終えると、魔道具を回収された。
難しそうな顔で魔道具を見ているアルイト王子の側に行き、手元を覗きこむ。 暗号のようなものが羅列されていて、まったく読めない。何だこれ?
「・・・は?」
唐突に低い声が聞こえた。
アルイト王子がこっちを見て、もう一回魔道具を見る。
深いため息をつかれた。
「あの、何か問題が?」
「いや。相性の良いものからいくぞ。 闇、風、土、水、無、植物、氷、光、火、聖の順だ。」
「なるほど。」
見事に対極になったな。
闇も聖も、相性は低めになるのが普通なんだが。
それにしても、火の相性が低めなのはアレか?
あっちでのことが関係してるのか?
「珍しくはあるが、問題はないだろう。ただ、火属性と相性が低いのは、後々苦労するかもしれないからな。対策はしておいて損はないぞ。」
「はい。ありがとうございます。」
ふむ、火属性は少し多めに練習しないとな。
そろそろ昼食の時間となることもあって、今日の指導は終わりとなった。
部屋に戻り、昼食を手早く済ませる。
騎士からの連絡で、ウィルは騎士達と昼食をとるらしい。
昼食を片付け終われば、母様は街へ出かける。
さて、午後は時間があるな。
掃除をして、筋トレをしたら、書斎にでも行こうか。
魔法について、ちゃんと考えないとな。
やることが決まったので、すぐに行動に移す。
「漂う者、ともに踊れ『傀儡』」
箒、ちりとり、雑巾を魔法で操作する。
床を掃き、ごみを集めたら、雑巾で磨きあげる。
カーペットの部分は出来ないので、目立つものだけを拾う。
通常の掃除なら30分はするであろう掃除が、ものの10分で終わった。 ん?魔法を使うのはズルい?
これも練習の一貫だよ。
操作系の魔法は、扱いが難しいからね。
箒類を片付け、筋トレをするために自室に入る。
装飾を外し、運動用の黒い服に着替える。
この服は試験のときに着ていたやつだよ。
汚れや汗を気にしないですむから、もらっておいた。
筋トレのメニューは成長にあわせて重くしてる。
そうだな、今だと、腹筋100回、腕立て100回、スクワット150回、魔力循環、部分強化、背筋50回、懸垂10回。
このぐらいかな?
背筋に加えて、懸垂を追加したのは良いけれど、これ10回でもかなりキツいんだよね。 初めの頃なんて、1回でも筋肉痛になったし。
それで、ここ最近思ったのが、
腹筋割れた6才児って、それなんてホラー?
子供ならムニムニしてるぐらいでちょうど良いよね?
ってなって、筋トレは続けて、少し脂肪がつくように食事とは別に間食を用意してる。
チョコクッキー、マフィン&クロテッドクリームなんかが多いね。クッキー類は簡単に作れるし、クリームは母様に頼んで買ってもらえる。
もちろん、ウィルや母様のおやつ用にも作ってるよ。
おれのだけ、ハイカロリーになるようにしてるだけ。
ほとんど慣れてきた筋トレをこなし、清潔の魔法を使って汗と汚れを落とす。服を着替え、髪を整えた。
クッキーをかじっていて、残りが少ないことに気がついた。
ふむ、明日あたりにでも作り足さないとな。
クッキーを呑みこみ、書斎へ向かう。
書斎で魔法についての書物を読み漁り、いろいろと再発見したことをまとめると。
聖属性と相性が良いのは、神官や巫女としての才能がある証拠で、勇者も同じ。
逆に闇属性と相性が良いのは、魔族や獣人などの人以外に多く、あまり良いとは言えない。
相性の悪い属性は、少しずつ使えるように練習するしかない。ただし、全く使えないと言っていいほど相性が悪い場合、諦めた方がいい。
無詠唱を用いた場合、姿に多少の変化がある。
このくらいだな。
最後の、無詠唱のやつについては、過去の勇者か前例だ。
無詠唱の際に、髪の色が変わったそうだ。
あぁ、過去の勇者だけど、子供に聞かせる話の中では省かれてる所があった。彼、魔王の核から生まれたドラゴンを倒した後、魔力の涸渇が原因で倒れて、そのまま亡くなったらしい。
平和になってめでたしめでたし、じゃ終わらないのが現実だけどさぁ。救った人が死んで、守られた人がぬくぬくと生きるのは、どうなんだろう。
守られた人にとって、救った人の死は、どれだけの意味を成すんだろうね。
現に、彼が死んだ後、勇者のパーティーは仲違い、情報や武具をめぐって争いが起きてたそうだし。
・・・・考えていても、しょうがないか。
本を閉じ、書斎を出れば、窓から夕日が射し込んでいた。
そろそろ母様も帰って来るだろう。
夕食用の食器でも出しておこうか。
亀より遅い作者ですが、
これからもお付き合いいただければ幸いです。
では、来週頃にまた。




