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密航留学

下関の砲台が4ヶ国艦隊の攻撃を受けるよりも少し前、ある密命が、俺たちに下された。

ここは萩城。毛利(もうり)敬親(たかちか)の間。


毛利家27代当主 長州藩13代藩主

毛利(もうり)敬親(たかちか)


「伊藤俊輔、山尾庸三、井上馨、井上勝、遠藤謹助の5名を、呼んでまいれ!」


俺たちは、殿様から直々に選ばれたんだ。


「君たちを呼んだのは他でもない。

実は、我が国と欧米列強との力の差を感じていたのだ。

このまま『攘夷』『攘夷』と叫んでいたのでは、いずれ我が国は欧米列強の、どこかの国の領土となる。

お前たち、イギリスに行け。

今、欧米列強の中でも一番力のある国が、イギリスだ。

お前たちなら任せられる。いや、任せられるのは、お前たちをおいて他にいない。

わしが見込んだんだ。引き受けてくれるな。」


言うまでもなく、快諾することにした。


「ただし、許しを得ず留学するということは、国禁を破ることになる。国禁を破るということは、死罪になることも覚悟しなければならない。」


そんな国禁なら、俺らにとっては破るためのものだ。それで本当に死罪になったとしても、悔いは無い。


「責任は全て、この敬親が取る。

思えば、約260年にも及んだ天下泰平の中で、我が国はすっかり腑抜けになってしまったな。」


徳川幕府の世が長く続きすぎた。


むしろ、よくもここまで続いてきたと思うよ。


イギリスに行って、学んでこよう。


今まで学んできたことなど比較にならないくらいの学習スキルが身に付くぞ。

それが許されるのは、殿様に選ばれた、この5人だけなんだからな。


後に『長州ファイブ』と呼ばれることになる5人の密航留学の旅が始まった。


俺は、内閣制度について学ぶことにした。


初代の内閣総理大臣になり、憲法も制定して、退任後は元老として、後ろから思いのままに操る。

全ては俺の、思いのまま。文句は言わせない。

下級武士、いや武士ですらなく、農民の家の出身者が、初代の内閣総理大臣に登り詰めるという、究極のサクセスストーリーかもしれない。

俺が初代の内閣総理大臣であるという事実は、この後の時代に何人が総理大臣になろうと、絶対に揺るがない事実だ。


この国の、初代の内閣総理大臣が、実は

『長州テロリスト』だった、それを知った日には、どう思うだろうね。


俺がトップに立ちたかった、というより、徳川慶喜、やつをトップに立たせたくなかった、といったら、あながち嘘ではないな。


そうこうしているうちに、船は目的地のロンドンに到着した。

この密航留学が、俺たちの運命を変えることになるのだった。



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