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第1章[裏]・TAI☆KOU★SEN…開幕



時は6月下旬の月曜日

カラッと晴れた天気とは真逆にどんよりとした重い思いを胸中に持ちつつも教室にて今日からついにはじまってしまうめんどくさいイベントを席に座り外を眺めながらのんびりと待つ光夜

他の生徒達を見てみればそんな光夜とは真逆で活発的に動いており和気あいあいとチームメイト同士で話したり、また今日の試合に向けての作戦会議をしてるなど教室の中はそれなりに騒がしい

そんなFクラスの生徒達の様子からは2ヶ月ぐらい前に感じられていた重苦しい雰囲気など微塵も感じられずに、光夜のチームメイトである刹那が企んでいる下克上やジャイアントキリングまではいかなくても1勝でもしてやろうといった面持ちだ

今回の学年別チーム対抗戦では1回戦の時点ではFクラス同士で当たることがなく、また2回戦でもまずFクラス同士での試合が行われることは無い

なのでFクラスすなわち現時点での最下位クラスの生徒達は必然的に自分達の上のクラスのチームに勝つ以外には1勝すらもあげることが出来ない

更にいえばDやEクラスとマッチングする確率よりもAやBクラスといった格上とされるクラスのチームとマッチングする可能性が遥かに高い

すなわちFクラスの生徒達にとって1勝というのはかなり厳しいものなのである


これは毎年同じ条件であり、Fクラスの生徒達の多くがこのイベントにて少なからず挫折を味わう者が出る

なんせFクラスのチームが3回戦以降に残っていることなんて極稀なのだから

それほどまでにクラスによる差は大きい

確かにまだ一年目であり入学した時点での差は決して大きいといえるものでは無いと言ってもいい

だが4月からの2ヶ月

たった2ヶ月されど2ヶ月といったこの期間においてその差は激的に変化してしまう

その要因は授業の質やクラス毎による意識の持ち方による

簡潔に言うとAクラス等上のクラスの生徒は来年度も同じクラス、または更に上のクラスへ行くことを目指して一心に努力する

これに関してはDやEクラスにも同じようなモチベーションで日々の鍛錬に臨んでいる生徒も少なくはないだろう

だがその一方でFクラスにおいてはまず一番下のクラスに配属されたというショックから立ち直るという必要がある

この時点で既に出遅れているわけだ


そして戦闘能力などの多くの成長に関係する最大の要因……魔精力のランクによる差は努力で簡単に覆るなどといった甘さはない

精霊契約に関していえば更に酷い

この2つは上のクラスを目指す生徒達にとって最大の壁かつ挫折する時の主な理由なのだ

ちなみに基本的に魔精力のランクが低い生徒はどれだけ戦闘能力が高くてもAクラスにはいけないといった教員のみが知る裏条件なども多数存在しており、それがこの学校においての生徒間の格差を生み出していることは言わずしても分かるだろう


と建前はさておき悠介のある意味スパルタとも言える熱血授業を受けることによって今はまだやる気に満ち溢れているFクラスの生徒達

刹那をしてバッサリと切り捨てられたクラスメイト達であるが今ならば数人は彼女のお眼鏡にかなうのではないだろうか?

そんなことを光夜が呑気に考えていると噂をすれば影と言わんばかりのタイミングで刹那が登校してきた


「おはよう、光夜。今日はちゃんと準備出来てるわよね?」

開口一番そう少し威圧気味に言う刹那

かく言う刹那からはやる気……もとい殺気に近いものを全身から迸らせており他のクラスメイト達もそんな刹那を見て少し萎縮している


「こっちはとくに問題ないよ。そっちは…まぁ聞かなくても見たら分かるぐらいに準備万端って感じだね。あとまだ試合じゃないんだからちょっとは抑えて、周りの人が完全に萎縮してるから」

ヤル気まんまんの刹那の威圧にまったく動じす光夜がそう言うと「そうね、少し昂りすぎていたわ」と言い少しだけ落ち着いた様子をみせる刹那だが、実際のところ色々と隠せてない

ちなみにこんな感じで刹那と光夜は軽く会話を出来ているのだがクラスにおいては残念なことにこの2人は2人ともがほぼぼっち状態である

刹那は今の状態を見てもわかるとおりに常に気を張り周囲を威圧しているがために近寄り難く、仮に誰かに話しかけられたとしても自分が見込んだ人以外には素っ気ない対応しかしないのでその容姿からも相まって完全に周囲から1目置かれている

そのくせまったくと言っていい程嫌悪されているようなことはなくむしろ男子からは高嶺の花、女子からは孤高の憧人みたいな感じで結構好感的に見られていることが光夜にとっては驚きだ


そして肝心の光夜に関して言えば……まぁ……うん

一応刹那とチームメイトであり、このFクラスにおいて唯一と言っていいほどであるくらい貴重な刹那と会話を行っている人という認識は持たれている

だがそのせいで男子からはよくある刹那と気軽に会話出来ていることに対しての嫉妬からかあまり良く思われてはなく、ましてや女子からはもはや嫌悪の対象となるくらいに酷い

その要因のひとつとして刹那による学校初日の発言があったりするが完全にとばっちりである

もはや望んでいた安寧なる学校生活とは無縁の状況にある光夜

これぞまさに数奇なる運命による出会いの結果

もうどうしようもないのかもしれない



そんなこんなで刹那が来てから少し経ってから鳴り響くチャイムの音と同時に教室へと入ってくる悠介

手には丸く丸められた紙らしきものが握られており、それが何なのかは誰にでもすぐに予想がつく


「おはよう諸君!ついに今日から諸君達が待ちに待ったであろう学年別チーム対抗戦が開始される。諸君達は入学してから今日この日まで積み上げてきたもの全てを十全に発揮し、決してFクラスだから強くなれないなんてことはないということを他のクラスに知らしめて欲しいと思っている。それではいまからトーナメント表を開示する!1回戦第1試合の開始は9時から、各自自分達の試合に遅れることのないように」

そう言うと手に持っていた紙を黒板へと貼り付ける

Fクラスにとってシードなるものは関係がないため全員が1回戦からあるので我先にと次々に生徒達は前へと押しかける

そんなクラスメイトをよそに持ち前の視力の良さで自分の席からトーナメント表を確認することが出来た光夜は前の席に座っている刹那へと声をかける


「トーナメント表見なくていいの?」

本来なら肩を叩くなりしながら話しかけないと気づかれなさそうなものだが、今は周りに光夜の他に誰もいないため問題ない

なので刹那はすぐに光夜の問いに答える


「大丈夫よ。ちゃんと見えているから」

そう言う刹那

やはり刹那も光夜同様に見えていたようだ


「とりあえず左の山だからアリーナには早めに行っとく?担任が言ってた話だと1回戦とか2回戦は力量差がある組み合わせが多いからすぐに終わる的なこと言ってたし」


「そうね、そうしましょう。見たところAクラスのチームの試合はほぼ全部すぐ終わると思ってもいいわ。それに偵察もしたいから」


「了解〜。じゃあ移動しますか」

そんなやり取りをしてから刹那と光夜は教室の後ろの扉から自分達の試合が行われる第3アリーナへと向かう


「ちなみに初戦はどうする?」

アリーナへと向かいながらそう問いかける光夜

チーム«下克上»の初戦の相手はDクラス

他のFクラスのチームがAやBのクラスのチームと当たっていることを考えるとかなり運がいい

といっても2回戦は恐らくAクラスになるような位置にはいるのだけれども


「初戦はDクラスだから私が全部片付けるわ。貴方は場外や戦闘に巻き込まれないようにして頂戴。といっても光夜の回避技術は確かなものだから何も心配していないわ」

そう言い手に持つ得物を握る力をます刹那

やる気があるようで何よりだ

そんな刹那なの言葉に「了〜」と適当に返事をした光夜は内心独りごちる


(言うと思った…というかそうしてくれないと困るんだよね、めんどくさいから。まぁとりあえず1回戦はまるで問題ないかな、厄介なのは次のAクラスのチームとの戦いをどう上手く捌くのかだ。……手っ取り早いのは刹那が瞬殺されて降参するしかなくなる展開なんだけどなぁ)

とそんなゲスいことを光夜が呑気に考えているともいざ知らずに刹那はただ前を向いて突き進む


片や己の目的のために全力で勝ちを目指す

片や己の楽のために全力で手を抜いてやり過ごす

そんな相反する考えを持っている2人きりによるチーム対抗戦の第1試合はまもなくだ






……To be continued


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