20 単眼少年歌 畸鶏
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一番好きな遊びは 砂遊び お城を踏んで 遊ぶのさ
屋根裏部屋に 妹 誘って 火ダルマにして遊んだっけ
三角定規を透かして視える 螺旋の古里 螺旋郷
雨の日には屍人を探して 野良猫 被って ヘーラクレース
母は洗濯女 父は不在の鉱物学者
誘拐されたくて 見知らぬ男に ついていく 父似の楽器屋 あいつは……
海図が嘘だと 気がついた 梯子の落書き ミュトス・メルジーナ
腹違いの 弟 捜して 螺旋の巨人 螺旋トス
単眼巨人 キュクロプス ――財宝の
ギガンテス 螺旋トス ――在カリに照って 照って
単眼ニウス ――産まれた弟
樹冠に住んでる 見知らぬ親友
巨人の人質と嘯くけれど
父の水晶 持ちだして 怒られていたっけ
母にはいつも嫌われる 泥まみれの螺旋トス
蝶の翅と蟻の列 車道に置かれたカマキリは
限界郷を望みたる 気息奄々 悪意の採集
親友の尻を掻き分けた 羊毛のような温かさ
睨みつけるは 単眼肛門 バタイユ・サンライズ
単眼・シャッター・一眼レフ・ウィンク・マバタキ――水夫の少年
不詳・親無し・無表情・落ちてしまった模造のスフレ――いわゆるソクラテスの……
キッチュ・ユーゲント カメラ少年捕まえた
単眼・ユーゲント まずはその足さ
キッチュ・ユーゲント 隣の年少ハイマートは 今日も鶏盗んでた けれど……
黎明・ユーゲント 瞼を突つかれ 大人になって もういない と 弟泣いた
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しばし夢を見た。砂男が振りかける魔術が、目縁からウスウスと入り込んできて、オカシナものを見せる。背後のグレープ母子が御詠歌に守られながら歩いているが、僕はそれを単眼で見つめている。頭部全体に蝸牛形の巨眼が張りついて、振り向かずに後方を前方していた。螺旋のメタモルフォーシスには至らずカタスカシを食った気になったが、落ち着いた感情だった。
聖女像のようにグレープは美しかった。ありのままを超えて、夢の補正が掛かっていた。目鼻立ちの肌理は汗ばみ皮脂で光っていたが、青銅のそれのように艷やかで、瞳を伏せる様は婉容である。そのわずかな反射は電目電灯によるものでなかった。砂によって腫れ上がった僕自身の独眼涙のせいだ。
腹の底で何かが湧き上がるような感じがする。単眼・眼光・円盤のイメージが重複し弧を描き、歯車へと変じた。無始回転の不可解な作用により、かそけき光が生じた。
その金属光によって時計機構が立ち現れると、心内トゥールビヨンが夢砂を咬みながらぎこちなく作動する。すると、どこからか“ミスティフィカシオン”の悲鳴が聞こえてくる。畏懼のノイズが肺腑を衝く前に、ヴォリュート・トゥールビヨン、即ち何がしかの守護が働くのだが――要領を得ない。
夢の作用でウツラウツラとする僕は、まるで古時計の振り子よろしく夢魔のブランコになって歩行すら怪しい。立ち止まっているような、進んでいるような、“韜晦天使”のメッセージを遠雷のごとく聞きながら、腹の底のカラクリ機構がカチリと鳴った。
すると、頭部の蝸牛形巨眼が蛇のようにニュロッと剥がれた。スカーフのように飛んでいった先に単眼児の神話的美顔があり、そこに巻きついたのだった。またしてもカチリと音がすると、立ちどころに双眸となった顔つきに見覚えがある。
はぐれてしまったクレープにそっくりなのだ。そんな夢。
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