6 保育所準備
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宏道→中学生に変更
手伝えと言われて、あの怖い男性によく分からない課題を出された。「あの人に逆らってはいけない」この本能に従ってひたすら問題を解くと使えるな、と悪い笑みを向けれた。そして、ひたすら彼の課題をしまくり、こきつかわれる日々が続きました。中学生の課題なんて私にはたかがしれてますけど、と思っていたけど全然解けないんです。
「なぁ、ちび。この読書感想文どう思う? 俺としてはこの女目線の感想がいまいち伝わらないと思うんだが。ちびの意見を聞かせてくれ」
「いいんじゃないですかー」
「おい、棒読みとは生意気だな。ちび、土に埋めるぞ」
「埋められたくないので、ちゃんと見てあげますよ。宏は口の悪さといい、ほんとに中学生には見えないですね」
「ちびの方がおかしいだろ」
くくっと喉をならす彼。
いたいけな幼女に向かって物騒発言をしているこの眼鏡越しの琥珀色の目、青い髪の一見王子様、中身ブラックな怖い方は院長の弟さんの宏道さんだそうです。もちろん、すぐに私のヤバい人リストに載りました。
彼は中学生です。年の離れたお兄ちゃんのような存在。
宏は課題を終えてしばらくすると私の能力を買ったのか、最近やたらと絡んできます。というか、仕事をやたら押し付けてきます。特に、背が私よりも数倍高くて見下ろす眼光が怖い。
「この女の人はもう少し柔らかいイメージになると思いますよ。って、宏、目付き悪い」
「は? おいこら、ちび。外出禁」
「いえ、何でもないです。宏は引き続き春休みの課題を仕上げましょう。私も程々に手伝いますから」
そんな中、私たちはもうすぐ三歳になるので保育園へ通おうか迷っている。
でも通うとなると、妹ちゃんが心配。もう少し入るのは、遅くても良いんだけど。なので例の如く保護者のボスこと宏道さんに報告に行こうと思う。
「ねぇ、そこの篠崎さん。人様の妨げになるから端に行こうか」
そう考えていると上から冷淡で刺々しい声が聞こえた。手間が省けた私は思わず笑みが浮かぶ。笑っていると彼は少し不機嫌になり、顎でくいっと部屋にこいと合図された。反射的に私は無言で頷く。
さて、驚く事にこの声は宏の声である。このように宏はとても爽やかだ。…が今の丁寧な口調を訳すと邪魔、どけ、だ。こんの猫被りめ。
キャーと女性の甲高い声がする。私が煩くなった方を見ると看護士さんが話していた。
「ねぇ、あの人格好良くない? 背が高いしあんな息子ほしいわー」
「あの人。院長の弟さんだよ! 気品あるし若いけど色気だだもれ! 院長も良いけど弟さんも素敵ね」
「ほんとねー」
「有り得ない。二人ともないない」
看護士さんがキャーキャーとアイドルを見るように頬を染めている。そして宏がにこりと爽やかに微笑むと一段と煩くなった。もちろん最後に呟いたのは私だ。
「有り難うごさいます」
「もはや宏を尊敬すらする」
すると、にこにこと私に爽やかな笑顔を向ける。騙された女性とは違う私なら分かる、目が笑っていない。宏は社会生活上で建前が大切だと言っていたが、ほんとに中学生だよね?
正直私でも見分けるのがキツい。これは詐欺レベルだと思う。いや、切実に。
気品を漂わせながらに重い扉を開けて貰う。扉がしまると同時にスマイリー宏は消えてしまうのが惜しい。爽やかな笑顔から一転ひどく不機嫌な顔になる。
部屋が広くてはしゃいでいると、額をばしんっ、と叩かれた。痛かった。むっと宏を睨むと勝ち誇った笑みを浮かべている。
「はっ。俺が結構真面目に猫被ってる時に話しかけるな。…ちびを目の前にしたら剥がれるだろ」
「う、うん。何で?」
「知るか。被りたくないって思うだけで理由なんて分からないから俺も苛々してんの」
「ただの八つ当たりじゃんか! 所詮宏のくせに! 大人げない、人として終わってる」
「まだ大人じゃねーし。外出禁止出すぞ?」
「ごめんなさい。私が悪かったです」
あー!! 悔しい! 完全に八つ当たりだ。本当に勘弁してほしい。
私は小さく舌打ちをして、改めて用件を説明すると
「まぁ、いいだろ。苛められたら徹底的に潰せ、もしもちびに手を出そうとする奴がいた時は俺が潰すから」
「イエッサー」
彼は口元を上げて、ふっと鼻で笑い混じりに言う。眼鏡越しの目はギラついていて、やはり一番怖いのは宏かもしれません。
私はそっと溜め息をついた。
でも結局は、お友達が欲しい! 寂しい。
…早い内から最低限の社会性やコミュニケーション能力を身に付けたいし。
別に、寂しいとかじゃない。ひっ、人と馴れ合うのも大事な事だし! 宏の許可もあるしね。
決心からの私の行動は、早かった。
「むふむふ」
保育所の書類を貰ってきて、だだっ広い書斎の隅で読む。
ふふ。書斎が家にあるのがびっくりした?でも、書斎以外は普通です。家は、書斎含む3LDKで、一部屋十畳くらい。駅がそこそこ近くて、風呂トイレ付きの家賃8万円。
こんくらいが丁度いい。
金銭感覚だけは、普通でいたいので。
妹ちゃんもお金の使いすぎで、貧乏とか洒落にならない。確か、そんなルートあったし、フラグ回収の前に常識人として成り立たせます。ほんっと普通の暮らしを心掛けています。
なので、書斎も妹ちゃんに秘密で作りました。
全体的に茶色のシンプルで統一した家具。こだわりの内装、吹き抜けがあって二階仕立て。観葉植物などで緑も多い。シーグラスで出来た窓から、色とりどりの光が差す。
そして、本棚で私の趣味が凄くよく分かる。少女漫画がたくさん…。ここでお菓子食べたりその漫画を読んだりしてる。私の癒しの空間。宏は分からないけど、院長には今のところバレていない。
バレたら、正拳をお見舞いしてやる。
書類を読むのに疲れたので目をシバシバする。
私の布団には、毛布詰めといたし多分見つからないと思う。
こんなコソコソとしてる訳は、私の予想からだ。
どうせ院長に言っても、却下されると思った。それに、一歩間違えばやっと辿り着いた外出さえも、禁止になるかもだから。それだけは、絶対嫌だ。宏には許可とったし。
通い始めてから、打ち明けたら院長、どんな顔するかな。
あはは、楽しみ。
昼は、係員がいない隙に、すぐさま応募用紙に記入した。度胸だけはあるので実行は、早い。
私が選んだ保育所は、私立の皇麒学園幼稚所である。聞くからに、ヤバい感じの豪華さがだだ漏れ。
どうやら、美しい心を育むらしいです。
キャッチフレーズに吹いてここに決めた。まぁ、どこも一緒でしょ。適当でいいや。
私は長い研究棟から抜け出しボスのところへと向かった。彼の部屋は大きな客室間を模した様な扉がある。これが頗る重いのだ。当然私の様な赤子の力で開くことがないので、宏に開けて貰わないと入れない。
やむおえなく、ガッと扉を蹴ると「何かご用件なら…何だ。お前か」爽やかな営業スマイルを顔に張り付けた、スマイリー宏を見ることが可能だ。
何度見ても性格と合わないよ、お腹痛いっ…。そんな顔をひくつかせた私を宏は冷ややかに見下ろす。う…これは、早く用件を言わないといけないやつだ。
「ここがいいので、保護者よろしく!」
私は今まで握りしめていた紙をすぐさま手渡す。宏は私が選んだ所に興味があったのか、一通り見るとニヤリと笑う。どうやら良いらしい。失礼しました。と言い残し廊下をスキップで駆け巡る。
用紙を出しに行き、胸が期待でいっぱいです。
私はこの後駆け巡ったせいで見張りの人にバレてこってりと叱られました。




