3 生まれの朝
白い光の中で私はまださまよっていた。
まさか門をくぐっても、まだ白い世界なんて思いもしなかった。開けては、白い世界の繰り返し。何故だろう、進んでいる気がしないのは。
ははは。また白い光の中だ。
「あれ。え、もしかして詰んだ…?」
まさか、転生する前にワープをし続けるのか? いや、ありえる。手違いで人を死なせた、あのおっちょこちょいの神様ならやりかねない。私的にはありがたかったが。
心配しつつ、また一つ門を開けると
ビュンと、ー気に回転速度が速くなった。もの凄いスピードのジェットコースター。しかも、シートベルトなしみたいだ。要は、怖いんだよ…
※
目を開くとぼんやりと見知らぬ天井が見える。
んあれ? 状況をあまり理解出来ずに、首を横に向けると、隣にはなんとも言えぬ風格を漂わせた華奢で綺麗な赤子がいた。まだはっきりとは見えないけどね…。
ふぅ。良かった、着けた。転生に成功したと理解した私は安心感と脱力感から涙が溢れおちる。実は心配だったのだ、あの神様だからね。
にしても、涙腺が脆い。そのうち崩壊するかも。
心配していると、隣から大きな泣き声が聞こえた。
「おぎゃー
パッ、と照明が明るく私たちを照らす。この生臭さと消毒液の匂い…病院か。
体にべっとりとついた血も気持ち悪い。
首を少し動かして隣をじっと見つめる。自然と行っているのだが首がもうすわっているのだ。本当にチートだな。
どうやら目の前の赤子は、私の妹ちゃん、もとい主人公ちゃんだと思う。妹ちゃんと並んでいて血がついてるという事は、私も赤ん坊ということでしょう。
私は普段なら鼻につく消毒液の匂いなんか気にならないほど、隣の美しい赤子に見惚れていた。
あぁ、もう抱きつきたい。あわよくば、写真を撮って家に飾りたい。
「おぎゃーおぎゃー」
また、妹の大きな泣き声で我に返る。私は前世の自分の手より一回り小さな手を握りしめた。
…そういえば、周りがかなりざわついている。特に目の前の下睫毛が特徴的な医師は顔面蒼白だ。私が大人しく見ていると彼女らは一度頷く。すると、いきなり医師達が私に救命装置をつけようとするのだ。「ほえっ。ふんぎゃー!! 」…私は泣いた。涙腺崩の涙腺崩壊は思っていた以上に早かった。そして下睫毛の医師も安堵の表情で微笑んでいる。どうやら、医師達が慌てていたのは私が泣かなかったからのようだ。
「おぎゃー」
高くて掠れた妹の声にも慣れた。驚いて我に返ることはもうないはずだ。
下にいるブロンズの髪の女性は母なのだろうか。彼女はかなり幼く見えるので、下手したら私の前世の方が老いているかもしれない。うわぁ。
そんなことを考えていると、医師は丁寧に私達を抱える。
「元気なおん…「おいしゃしゃんきれい」
試しに喋ってみると、綺麗な声が響いた。舌が回らないと思っていたけど案外そうでもなかった。あぅーとかで通じない仕様じゃなくて良かったと本当に思う。にしても、私の声きれい…声高くて、声優さんみたい。憧れだった美少女ボイスで胸の奥、ジーンときました。私は頬が緩んでいく。
私の言葉に、医師は満更でもなさそうに笑っていた。周りの医師達もつられて笑っている。私もにやにやしている。周りから見れば微笑ましい光景であろう。普通に考えなければ、の話だが。
「もーそれほどでも、オホホホ……えっ!?」
すると、またもや顔を真っ青にして医師同士、目を見合わす。彼女達は、にやにやとした私を忌み物の様な目で見下ろしている。
「喋ってる……まさか」
そーだよ、しゃべるよ。当たり前だとばかりに彼女の言葉にうんうんと頷く。
「しゃべぇるよ」
「「「「キャーー!!」」」」
暫しの沈黙の後、彼女達は気絶したり反応は様々であったが悲鳴が響き渡った。
電話が騒々しくなってここ病院か?って疑いそうになる。ったく患者の迷惑考えろよ。
「ドクター緊急至急来てください!!!」
大きなドアがこれまた、大きな音をたて開く。たくさんのお医者さん達が流れ込んでくる。
これは大事になってきた。
「どうした!!」
「喋れるんですこの子」
ビシッっと、女医さんが私を指差す。私は試しに手を振ってみた。ひらひらー。
「嘘だろ!?」
院長は疑わし気に私をじろりと見回すと、わめき散らす。周りでも困惑の色が目に見えて分かる。
楽しすぎる…好奇心で行動してみるもんね、これがほんとの病院大パニック。
「はるかていいましゅよろしゅくでしゅ」
噛むのは仕方ないかな? ついでに、丁寧にお辞儀をした。
「っ! ええええ!? しゃべってるーーー!」
口をあんぐりと開けて院長が放心するのは、一瞬だった。
余談だが
その時から院長は神という非科学的なものを信じるようになったそうだ。




