26 体育祭part1
澄み渡る空。未だ5月とは思えない暑さだ。生徒達の熱気が少なからず影響しているんだろうが。
そう、体育祭が始まったのだ。体育祭という響きが好きだ。前世は体育祭と言うと怒られた。祭じゃない、真剣な行事だがら体育大会にしろ、と。どっちでもいいと心から思うのだが。
ま、この世界で一番楽しみはイベントだからここらへんはどうでも良い。
面倒くさいな、と思っていると妹ちゃん達が近付いてきた。男子達をひきつれて、だ。感心していると彼女が楽しそうに言った。
「凄いよね!! 遥姉、100m、200m、二人三脚、借り物競争、応援団、クラス対抗リレー、学年対抗リレー全部出るんだもん。遥姉が遠い人になっちゃう…」
初めは興奮気味だったが、最後の方の声が小さくなって、妹ちゃんがシュンと目の前でうなだれる。
妹ちゃんの言っている事は本当だ。押し付けられてこの掛け持ち具合に至った。優しい少女を目指してみた私には休憩時間がないのか、と言いたかった。べ、別に優しくしてモテたいとか考えてませんよ…? それよりも内心、私の体力が持つか心配である。
友野さんが妹ちゃんの肩に手をおき笑顔で言う。姉御肌の彼女は、フォローが上手い。
「大丈夫よ。遥は、絶対貴方を置いて行くなんてことしないわ」
「そうですわよ。だって私達の大切な友達ですもの」
確信を持って告げる友野さんにすかさず玲奈が付け足した。
嬉しいこと言ってくれるじゃないか。玲奈、部長! モブでも私は、皆主役だと思ってるからね。
「親友でしょ!」
妹ちゃんの上目遣いが炸裂したところで私のスイッチが入った。スイッチは、調子に乗る方だ。
「そうだな。私達一つ屋根の下、一緒に……グフッ…」
私の言おうとしていたことを遮る様に、華奢なお嬢様のはずの玲奈にすかさず顎アッパーを喰らった。痛かった。華麗にアッパーをした彼女は、痛がる私を下げずんだ目で見て、呟いた。
「せっかくいい感じだったのに…」
声色も低く、怒っているのが見てとれる。ヤバい、地雷を踏んだ様だ。お嬢様は、感動の友情物がブームらしいので間違ってもからかってはいけない。まあ、私は間違いましたけどね!
やけくそで涙目になると、玲奈もうっ、と黙り込んだ。
そんなやりとりをしていると種目放送が流れた。やはり、流れを作るトップバッターだからか、今更ながら緊張してくる。
男女100mに参加する生徒は、無機質な放送で収集をかけられる。生徒達もちらほらと動き始めた。
さて、行くとするか。
「頑張ってね!!」
「ファイトです! 遥様」
妹ちゃんに呼び止められると、大きな声で言ってくれた。ファンクラブの方々もゴール前のとても良い位置にスタンバイしている。嬉しいのだがただ、どうしようもなく凄く恥ずかしい応援幕を持っているのが少し、いやかなり気になる。一眼レフらしきものもあり、恥ずかしい。妹ちゃんも良い席にちゃっかり混ざってるし…。
空気がぴりぴりとして緊張感がはしる。いよいよである。今日は、何としてでも優雅に勝たなければならない。負けた方はジンギスカンキャラメル(自作)でも食べようという事になったのだ。この賭けはヤバいので、意地でも負けられない。
先生が黒光りする銃を高く上げて音をならした。
「…発火加速」
ぱあんと大きな音でなった銃声に紛れさせて小さく呟いた。
熱風で加速の効果と同士に、反動も恐れずにパラを全解放した。
私は、あっという間にゴールテープを切った。一眼レフでも撮れているのか微妙なくらい速かったと思う。
そして何故か皆、引いていた。
そんな中で引いていない少女がいた。どうやら、引いていない体育委員はあのペアをした真面目っぽい青色髪の文系少女らしい。彼女は一人だけ驚くことなく、着順の旗の前へ促した。周りから見たら異様だが、バンドボールも見ていた彼女からしたら当たり前なのかもしれない。
やけに冷静な体育委員に刺激されてか皆、私の走りを忘れたかの様に直ぐ様自分の組の応援に戻った。ピンク組は順調だ。
「遥姉! さすが、頂点君臨だね」
退場すると妹ちゃんが一目散に飛んできた。にっぱりと笑ってお姉ちゃんに言った。めっ女神…?
「遥様の美しいお姿目に焼き付けましたわー!」
「遥様の周りは陽炎がありましたわ! 流石遥様、熱く燃えているしゃるのですね!」
熱風が陽炎となって出現したらしい。良かった、バレてはいないみたいだ。
だが、熱気が半端なかった、囲まれていたからだろうが。
暑いな…。
ふと視線を上げると、校舎の影で優雅がいた。優雅がいるのはもちろん日陰である、涼しいのが好きなんだと。私は優雅を口実に円から抜け出した。
私を待っていたのは壁に体重を預けて腕を組んだ優雅だった。見るからに不機嫌でいつもの三倍くらい目がつり上がっている。私は何かやらかしただろうか、冷や汗がだらだらと流れる。
「怒ってマスカ?」
「ああ、勿論な。あんた、妖気使ったろ」
「あはっ、バレた?」
「まあ、あんだけ陽炎あったらな。でも、もう何か逆にどうでも良いな。あんた、どんだけジンギスカンキャラメル嫌なんだ」
彼は呆れ顔で言った。
鋭いな、流石私の相棒。理由まで当てるとは見事だ。
「まあな」
彼はくすりと笑って木陰へと消えて行った。猫は気まぐれである。
その後の200mも予想を裏切らなかった。
やはり、変わらない民衆の引いた目が痛かった。
あっという間に休み時間になったので、ファンクラブとロリコンに見つかりにくく、楽しめるあの場所へ行きます。
スキル
百合 鈍感




