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プロローグ
あの日、車の中に満ちていたのは、引き止められない重たい沈黙だった。
「恋愛をするのは、私で最後にして。」
別れ際、彼女は喉に何かを詰まらせるように、絞り出す声でそう言った。 友達に戻って欲しいと、ぽろぽろと涙を流しながら、何度も、何度も繰り返されたその言葉。
強がって取り繕うとする言葉の裏側で、必死に隠そうとした声の震えが、私の耳には痛いほどに突き刺さっていた。聞こえてきたのは、隠しきれないすすり泣く声だった。
私は思わず、困ったような笑みを作ってごまかした。 「そんなこと言わないでよ。」
どうしてそんなことを言うのだろう。 頭の中では疑問符が渦巻いていた。
自分じゃ、隣にいても釣り合わないのだろうか。 相手は年上だしな……。
色々な思いが駆け巡り、その言葉の意味を深く考える余裕すらなく、ただ冗談のように受け流してしまった。あのときの彼女の本当の痛みに、私はまだ気づけずにいた。




