前編
こんな感じの小説を書いてみました。書いてて恥ずかしい・・・・・・
昌「・・・・・・おはよう」
遊美「あっ、マーサじゃん♪おはよー」
別れた女子と毎朝顔を合わすのは辛くないか?って言ってきた奴は山のようにいる。
・・・・・・・・・・辛いに決まってんじゃない!バカじゃねーの!?超大好きだったのにさぁ、
「他に好きな人ができた」
ワケわかんないわ!あっちの方から付き合おうって言われて舞い上がってたあの時の自分を殴り倒したい。調子を乗りすぎるなって。
最初は中学だった。
誰とでも仲良くする遊美は自他共に認める惚れやすい女の子で、付き合った男子(男性含む)の数は20から先は覚えていない。数え始めて2ヶ月の事だった。
そんな折、浮気、不倫、寝盗り、つつもたせの噂まで、まことしやかに囁かれ始めた中2の秋、
遊美「マーサ大好きっ!いっそ結婚して!」
ヤローは公衆の面前で俺に熱い包容と接吻をブチかましてきた。今思い出しても体が火照ってくる。気持ち悪い。
俺がいつもの事だと思って何も言い返さなかったため、学校全体(先生達も含む)の公認カップルになってしまった。ワケが分からない。
でも心のどこかで喜んでいる自分がいた。1年の時から同じクラスだったが、俺の美遊に対する第一印象は
「ヤバイ、惚れそう」
だったというのは誰にも言っていない。
だって外見だけなら×××(国民的アイドル)や××××(映画やドラマに引っ張りだこ)よか美少女なんだから。
人の外見を表す形容詞をどう扱えば良いのか分からない。苦しい表現をするなら、『かわいい』を極めたような、それぐらいに見た目だけならS級なのだ。
みんなに冷やかされたりするのも一興と思っていた終業式、前述のように突然フラレた。相手は1つ年上のヤンキーだった。しかも格好良くもない脂デブ、自分の容姿にそこまでの自信を持っていない俺でもさすがにアレよりブス呼ばわりされたらキレる。
3年に上がってすぐに二人は別れたらしい。いつもの様に気まぐれ娘の心操術だった。
知り合い共がイチイチしてくる報告に苛立った俺は美遊と関わるのをやめた。話しかけても無視したし、強引に近づいてきて何か言って来ても相手にしなかった。
とある日、美遊が学校に来なかった。
「学校っていかにも出会いが溢れてるんだよ!?休んじゃうなんてもったいないよ!」
どんな目的で義務教育を享受してるんだと思ったが、そんなThe・風邪なんかひかないバカである美遊が学校を休んだなんて初めての事だった。
その日の夜、メールが来た。
「来てください」
いつもだったら溢れんばかりの絵文字や顔文字でいっぱいの液晶画面が広く感じられた。
しょっちゅう夜中に会いたがれた時に利用していた公園に走る。とにかくいつもとは違う遊美の様子が気にかかってしょうがないほどに心配だった。
遊美がそこにいるなんて確証はなかったけれど、こういう時はとりあえず急ぐものだとさすがにわかっていた。やっぱり男の子だし。
公園に行くとそこには見るも無惨に顔を腫らした遊美がいた。
「おいっ!?誰にやられたんだ!」
明らかに切羽詰まっていた俺の質問に対して,遊美は答えなかった。
「へへへっ,やっぱり優しいマーサはすぐ来てくれるよね♪」
王子様みたい,と安心しきったような笑顔を見せられて張り詰めていた神経に余裕が戻ってくる。それでも遊美の顔は痛々しそうに腫れ上がっているのだ。
「先輩の仲間にぶたれたの」
例によってあの脂デブだった。あの男は外見もさることながら性格の方もなかなかお粗末で,女こどもにも平気で手を挙げるようなクソ野郎なのだ。しかも今回に至っては自分の手すら汚していないらしい。最悪と言っても良いくらいに腐ってやがる。
「家族はこのことしってんのか?」
「ううん,この顔見たら慌てちゃうかなって思ったから友達の家に行ってたってウソついた」
「ふぅん・・・・・・いや,だったらお前は昨日の夜から今にかけてまでどこで過ごしてたんだよ!」
「ここ」
「野宿じゃないか!」
とりあえず病院に連れて行った。それから遊美に家に帰るよう説得して,遊美の両親に細かい事情を説明して家に帰り着いた頃にはもう4時過ぎだった。
翌日は俺も学校を休んだ,あの身も心も最高に汚れきっている脂デブとケリを付けるためだ。
その翌日には遊美も学校に来ていた。大きいガーゼが痛々しいのだがこちらの真新しい痣や傷なんかと比べたら全然マシだった。
「あははっ,お揃いだね!」
・・・・・・・・・・・・クソっ,なんでそんなに可愛いのに平気で人に笑いかけられるんだ。
まだチャンスがあるんじゃないかって思ってしまうじゃないか。
この件をきっかけに周りから復縁しろ,復縁しろ,としつこく言われたが当の本人は2コ下のハーフの美少年に夢中になってたんだから俺なんかじゃあ話にならない。あっという間に時間は過ぎていって,卒業式になった。
俺は一度問題を起こしたせいで志望校には行けなくなったため,少しレベルを下げた自宅付近の高校に進学することにした。
遊美はあんな性格にも関わらず意外と頭が良いので進学校に進んだ。割と俺の高校の近くだ。
「でも家も近いからしょっちゅう遊びに来ても良いよ!」
「ばかじゃねぇの?」
俺は前回の脂デブの一見のせいで遊美の両親からやたらと警戒されていた。こっちは無実どころか関与すらしてないって言うのに・・・・・・。
「なぁ,遊美」
「おっ,珍しくマーサからの質問だね」
「そんなに珍しいのかよ・・・・・・」
「そもそもマーサの方が私に喋りかけてくること自体珍しいと思うよ?」
「・・・・・・それもそうだな」
「で,何が聞きたいの?」
マーサの質問にだったらスリ-サイズまでOKだよ,とか相変わらずバカなことを言っていた。こんなに男の煩悩刺激したりして,コイツの高校生活が今から心配だった。
「今さ,おれがおまえに好きだって言ったら,お前はどうする?」
この質問には答えてくれなかった。あんなに脳天気を形にしたような女が困ったように顔を曇らせるなんて,これっぽちも予想してなかった。
それから家が近いし学校も近い俺たちは登校中とか休日とか普通に会った。というより見かけるのだ,
ほぼ毎日。最初は気まずかったりしたが今では挨拶くらいする。それでも毎日会っているのに疎遠のような感覚だった。
さて,過去の話はおしまいだ,ここからは今の話。
中学の時からのクラスメートは今だに俺の方が引きずっていると思っていて,しょっちゅう女を作れと言ってくる。しつこいことこの上ないし,そういう関係はもうこりごりだ。
そう思っていた1年の冬,ちょっとだけ奇跡を信じてみたくなる出来事が起きた。
「君,かわいいね」
そんな風に声をかけてきた中西美香さん,28歳。細身で巨乳,おまけに童顔,くるくると巻かれた髪の毛は年相応以上のかわいらしさがあった。もう,総合的な面においては遊美以上のものが,って何を言っているんだ,俺は。
美香さんには家庭があった。旦那は7つ年上の営業マンでこどもは小学生が2人,どうやら専業主婦独特の暇つぶしの相手に俺は選出されてしまったらしい。
ばれた時のリスクを全部知っていたにも関わらず,年上の人の魅力には勝てなかった昌少年が不倫の道をまっしぐらになったのはその数週間後で,あっという間に関係を持ってしまった。
ただ,時々美香さんが遊美に見えてしまうのにはすごく参っていた。美香さんと遊美は似ているのだ,顔なんかじゃなく,雰囲気から何からが。
「昌君は好きな子とかいないの?」
「・・・・・・その質問はどう答えたって二つしか選択がないんですよ」
「あら,誰と誰なの?おばさんはすっごく気になるなー」
「・・・・・・一人は美香さんですから大丈夫ですよ」
「ふふ,嬉しいなー,昌君大好きっ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ほら,またどことなく遊美に似たようなことを言うんだ。というかこんなにいい人を不倫に走らせる旦那は全人類に土下座で謝るべきだ。マジで。
そんなこんなで不倫デイズを満喫していた2年の夏,デートをすることになった。意外にも初デートなのである。
待ち合わせに20分も早く来てしまったのにも関わらず,待ち合わせ場所に到着したのとほぼ同時刻に美香さんは来た。数秒違いである。
「まった?」
「お綺麗ですね」
ベタな駆け引きをするべきだったんだが,つい本音が口から出てしまった。
「・・・・・・・・・・・・行こうか?」
「・・・・・・行きましょうか」
恥ずかしそうに手に触れてきた美香さんの手を少しだけ強く握り返す。すごく柔らかかった。いかにも女性の手って感じ。
遊美の手もこんな感じだったな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・イカン,イカン。身に余る幸福の最中にそんな黒歴史を思い出しては。
ちょっとだけ横を見てみると少しだけ恥ずかしそうに顔をうつむかせている美香さんの表情を見た。そういえば今の旦那とはお見合い結婚だって言ってたな,こんなデートはしたことないとも言ってたし。それにしても可愛い。年上の女性が照れている様子ってこんなに可愛いものだったのか。
よく見たら顔もちょっと赤い。そんな事を思っていたら目があった。
「あ・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・ごめんね,10コも年上なのにリードして貰いっぱなしで・・・・・・」
「いいですよ,年齢なんて関係ありませんから」
「本当に!」
「ええ,本当ですとも」
「・・・・・・嬉しいっ!」
気をよくしたらしい美香さんは腕にしがみついてきた。ほとんど密着状態である,こんな状況を美香さんの近所に住んでいる奥様方に見られたらお互いの人生を棒に振ってしまうと思いながらも振り払うことは出来なかった。
そんなことを考えていたモンだから,前方の注意を怠っていた。クラスメートに会うかもしれないという警戒がこの時だけ完全に解かれてしまっていた。
「マーサ?」
俺のことをそう呼ぶ奴は,地球上で一人しかいない。
後編へ続きます