2026年2月のなろう小説投稿数6,768件の内訳 ~ 新規か継続か、ジャンル比率と文字数 ~
いつも私の作品を読んでくださっている皆さまに、心から御礼を申し上げます。
投稿者にとって、「読まれている」という事実ほど、静かで、しかし確かな支えはありません。ページを開いてくださること。それだけで、PVの向こう側に“誰か”がいると信じられるからです。
さて、2026年2月のなろう市場を数字で俯瞰してみました。
2026年2月のアクティブ作品数は 6,768件。そのうち 4,927件(約72.8%)が新規開始作品。既存作で2月に更新されたものは1,841件でした。
ひと月のうちに、これだけの物語が新しく生まれている。毎日、誰かが投稿ボタンを押している。書き手の衝動が、こんなにも可視化されている場所は、そう多くはありません。
形式別に見ると、「連載」3,486件、「短編」3,282件。ほぼ拮抗しています。腰を据えて物語を紡ぐ者と、一撃の輝きに賭ける者。そのどちらもが、この市場を形作っています。
けれど、数字はもう一つの顔を持っています。
ブックマーク数の中央値は0。総合評価ポイントの中央値も0。つまり、半数以上の作品は、まだ“見つかっていない”のです。
裾野は広く、しかし山は高い。ブックマークのp75は2、p90は90。総合評価ポイントのp75は28、p90は672。
ここでご存じかとは思いますが少しだけ、p75やp90という言葉の意味に触れさせて頂きます。
pはpercentileの略で、集団の中で「どこが境目か」を示す指標です。
p75とは「下から75%の位置」、つまり全体の75%がその値以下であるということ。p90なら、90%がその値以下に収まります。平均のように一部の大ヒットに引きずられず、「上位25%」「上位10%」に入るための現実的な目安を示してくれる。数字の海の中で、自分がいまどの水深にいるのかを教えてくれます。
そして高い山のその頂上位10%に入った瞬間、景色は一変します。それまでは静かな海面だったものが、突然、光を反射し始める。
ここに、このなろう市場の本質があります。「大量の新規投稿 × 一部のヒット作品。」いわゆるロングテール構造でした。新規比率が高い月ほど、「初速」の重要性は増します。タイトル。あらすじ。タグ。わずか数秒で読者の指を止められるかどうか。クリックされなければ、どれほど頑張って書いた作品も存在しないのと同じです。
これは残酷でしょうか。確かに、少しだけ。しかし同時に、公平でもあります。扉はすべての人に開かれている。問題は、その扉の前で立ち止まってもらえるかどうか。
一方で、既存更新組は総数こそ少数派ですが、上位パーセンタイルに乗りやすい傾向があります。愛読者という「岩盤支持層」を持っているからです。ここに、継続の力があります。
一度きりの花火か、季節ごとに咲く庭園か。どちらが正しいという話ではないと思います。ただ、戦い方が違うのです。
次に、ジャンル構成を見てみます。上位は「その他」913件、「エッセイ」857件、「純文学」857件、そして私のホームグラウンド「歴史」は230件でした。
母数が大きいジャンルは、当然ながら競争密度も高い結果となっています。人が多い場所は、賑やかで、そして目立ちにくい。ブックマークのパーセンタイルを見ると、ジャンルごとに伸び方が違います。構成比が高くてもp75が低めの領域は、「分母の大きさ」に埋もれやすい。逆に中位規模でもp90が高いジャンルは、「当てれば大きい」天井を持っています。
ここで問われるのは、勇気か、戦略か。王道の大通りを行くのか。それとも、少し横道に入り、ニッチな読者像を明確に描くのか。
ニッチとは、狭さではありません。「誰に届けるか」を具体化することです。読者像が鮮明になるほど、タイトルは研ぎ澄まされ、タグは精密になり、導入は強くなります。特に連載は、更新という武器を持っています。露出の機会が増えるということは、それだけ「再発見」される可能性があるということ。夜に強いジャンル、週末に伸びるジャンル。読者の生活リズムを想像するだけで、戦略は変わります。
ここまで数字の話をしておいて、最後に少し逆説的なことを申し上げます。
数字は重要です。でも、数字だけでは書き続けられない。中央値が0であっても、投稿は止まりません。72.8%が新規であるという事実は、それを雄弁に物語っています。
なぜ人は書くのか。評価を得たいからでしょうか。ランキングに載りたいとか、リワードを稼ぎたいからでしょうか。もちろん、それもあると思います。
でも私は思います。投稿ボタンを押す瞬間の震えは、統計では説明できない。「誰かに届くかもしれない」という期待。「届かないかもしれない」という不安。その両方を抱えながら、それでも公開する勇気。
市場は巨大です。競争は激しい。上位10%は遠い。それでも、6,768の物語が同時に息をしていた。この事実は、冷たいデータでありながら、どこか温かかった。
ロングテールの裾野にいることは、敗北ではありません。それは、まだ物語の途中にいるということだと思います。タイトルを磨き、あらすじを練り、タグを選び直す。読者導線を考え、更新のタイミングを工夫する。できることは、意外と多いような気がします。
そして何より――書き続ける。
既存更新組が上位に乗りやすいという傾向はその証左です。今日の一話が、明日の地盤になる。数字は現実を教えてくれます。けれど、未来までは決める事はできません。
6,768分の1の物語でもいい。上位10%に入れなくてもいい。まずは、誰か一人の心に届くこと。その積み重ねの先に、きっとp75もp90もある。
なろう市場は厳しく、しかし可能性に満ちています。大量の新規と一部のヒットが共存する世界で、数字を味方につけながら、数字に飲み込まれないように、引き続き挑戦していこうと思います。
私の作品の読者様に心からの感謝を込めて。
条文小説 拝
勢いだけで書いたエッセイとは違い、小説は結構頑張って書いてます。
以下に私の作品へのリンク貼ってます。手に取って頂きさえすれば絶対面白いと思いますので、是非いくつかの作品の触りだけでも読んで頂ければ幸いです。
また、ついでに評価、ブックマーク頂けたら超嬉しいです。




