第4話 青春(笑)とランカー達
真奈さんとシェアハウスをすることになった。とりあえず放置された荷物を片付けようと、二人で引っ越し作業を進めていく。
それぞれの荷物を各自あれこれ配置したり、しまったりしてようやく落ち着けるようになった頃、二人で真奈さんがいれてくれたお茶を飲んでいた。
まさか、シェアハウスとはいえ一緒に住むことになるとは。やばい……今更ながらちょっと緊張してきた。年下の女性と一つ屋根の下はいろいろ不味いのでは? 主に精神的に。
前世と合わせればもうおっさんになるというのに、こういった人との付き合いが全くなかったのが辛い。
しかも、いきなりレベルが高すぎると思う。
それにしても……そうだな。俺は同居するにあたって、彼女のおじいさんの言葉を思い出した。
「おじいさんに言われたが、俺たちってそこそこ付き合い長いよな。やっぱり「さん」付けは他人行儀すぎるか?」
「うーん。無名さんのほうが年上ですし、私はあんまり気にしたことないですね」
「もう呼び捨てでいいんじゃないか? シェアハウスしてるし」
「呼び捨ては抵抗感があるので、そうですね……無名……君?」
「真奈」
「……」
「……」
なにこれ恥ずかし。
♢
正午。昼ご飯をどうするか彼女に相談したのだが、外食は控えようと言われた。
「無名さ……無名君が思っているより、今外は危ないですよ」
「あーやっぱり?」
ランキングを公開してから、世間は俺の話題で持ち切りだった。今までも俺の存在はかなり注目されていたが、今回のはもうそれは政府が手に負えないくらいの騒ぎようだ。
これまでも念のため、移動手段や場所にはなるべく気を使っていた。
俺が公言した瞬間の映像が動画サイトにアップされると、とてつもないアクセスとなっていたし、写真なども多く出回っている。
肖像権とかお構いなしに、消してもすぐに情報があがるので、困ったものである。
「そんなに鮮明な顔写真もないですし、外に出ても見つかる可能性は低いと思いますけどね」
出回っているのは俺の中学の卒アルと、公開当時のやや画像が荒い写真だ。これをもとに街中で本人を探せと言われても、なかなか難易度が高いと思う。
ただ、現在はそんな特定班達が大勢いるらしく、万が一を考えて外出は控えた方がいいのだそう。
「じゃあどうする? 宅配ピザでも頼むか?」
「それもどうなんですかね……」
これも危ないらしい。何故彼女がここまで警戒しているのかと疑問に思ったが、そうえば彼女も十分有名人だったことに気づく。こういった身を守る術、知識があるのだろう。
「私が何か買ってきますね」
「すまないな」
「いえいえ、何か注文とかあります?」
「コーヒーと簡単なもので」
「分かりました、行ってきますねー」
今熱心に捜索されてのは俺だけなので、彼女はそこまで警戒する必要はない。
待っている間とくにすることもないので、有名人が苦労することへの対処法をネットで調べる。
そういえば、他のランカーの人達はどうしているのだろうか。
なになに……
アメリカにいるの第二位と第五位は軍に席はありつつわりかし自由に活動しており、良く姿を見るらしい。
逆に、中国いる第三位は殆ど情報がなく、分かっているのは女性という事だけ。裏社会の組織のトップだという噂もあるな。
また、他のランカー達もアメリカの二人同様、案外オープンに活動していた。
思ったよりも表に出る人が多いみたいだ。第三位の人も目撃情報はあるらしく、いつも大所帯でダンジョンに入る所を見るらしい。
他にも色々調べながら少し時間が経つと、彼女が帰ってきた。
「ただいま戻りましたー。はいこれサンドウィッチとコーヒーです」
「悪いな」
彼女から貰ったサンドウィッチを有難く頂き、コーヒーを飲みながらこれからのことを考える。
別にちやほやされるのが好きなわけではないが、いつまでもこそこそするのも面倒くさいので、俺も時がきたらオープンに活動したいと思っている。
彼女にそう伝えると、良いと思いますよ、と返された。俺的には一緒に活動するパーティーメンバーとして、彼女の意見も取り入れたいと伝えると、彼女は困ったように笑った。
「たぶん大変なのは私じゃなくて無名君の方ですよ? なんてたって世界中から注目されていますからね」
「あーその……悪いな。なんか……」
「まぁお互い様ですよ! 程度の差こそあれ、私も一応ランカーですからね!」
気遣ってくれた彼女に、俺は素直にありがとうと伝えた。
それから話題を変えて、他のランカーたちの話を聞いた。
なんと、彼女はランカー……もっと言うならシングルの何人かと会ったことがあるらしい。
興味深い話を聞いてランカーに興味が沸いた俺は、彼らと会ってみたいと少し思い始めていた。
彼女のおかげだろうか……。俺も、随分と考え方がまともになったものである。
そろそろダンジョン行こうかな(笑)