第2話 誤解と不安?
ダンジョン探索については少し思うところがある。
俺の言葉が信じられないと驚いた表情をしている真奈さんに、俺は追加で説明をした。
「ぶっちゃけ俺も一人だと寂しいし、前々から一緒にと思っていたんだ」
一人で黙々と探索するのもいい。ただ、それではダンジョン探索を全力で楽しめていないと思うのだ。やはりダンジョン攻略と言えば、パーティーだろう。
一人での探索は一個目のダンジョンで既に経験したので、どうせならパーティーを組んでの挑戦もしてみたい。前々から考えていたし、どうせなら真奈さんと行きたいと思っている。
知り合いが彼女しかいないからなぁ……。
そんなことを思いつつ話すと、おじいさんの顔が急に輝きだした。
「なんとぉ! そうか、そうであったか! ……真奈ちゃんや、わしは安心したぞ」
「違うよおじいちゃん!? たぶん無名さんはそう意味で言ったんじゃ……」
「おや、まだ「さん」呼びなのかい? たしかもうそろそろ出会って一年になるだろう、もっと親しい名で呼び合わんと」
「ほんとに! そうゆうのじゃないから!!!」
真奈さんはなにやら必死で話しかけており、おじいさんは嬉しそうに笑っていた。二人のやりとりを見ていると、何か自分だけ噛み合っていないような感じがする。
そこで、俺はようやく気付いた。自分の言葉足らずに。
「あぁ、いやすみません。真奈さんとダンジョン行くのは是非とも、という意味でして……」
「分かっておる分かってる! 君も真奈ちゃんの事は「さん」呼びかぁ、先は長いのぅ」
しまった、大きな誤解を生んでしまった。彼女と異性としての関係だと思われている……。
どうにか解こうと思考を巡らせていると、真奈さんが小さな声で話しかけてきた。
「こうなると全然話を聞いてくれないんです……すみません」
「いや、俺が誤解を生むような言い方をしたから……」
おじいさんは、真奈さんのことになると暴走することがあるらしい。年上相手に強く言う事も出来ず、仲が良いな、とさらなる誤解を重ねてしまう。
おじいさんは思い込みが激しいタイプのようだ。これからはおじいさんの前で、迂闊に彼女に関することを話さないようにしようと思う。
その後、誤解を解こうとなんとか頑張ったが、結局解くことができずにその日は諦めて帰ることになった。
家に帰った俺は、一通のメールが届いているのに気が付いた。
内容は、家について何か要望はあるかというものだった。既に簡単な要望は伝えているので、確認も兼ねているのだろう。
詳細な要望を伝えてから数日後、俺は家が決まり、そこに引っ越すことになった。
当日。
引っ越し先は家具備え付け、というか手配して貰っていたのですぐに住める状態だった。前のマンションよりも、一軒家の分広く、開放的ですごく気に入った。
今もなお運び込まれてくるダンボールには、俺がマンションで使っていた物と、新しく買った物の二種類ある。
まぁまずは掃除かな、と色々詰め込まれたダンボールを眺めていると、ポケットから携帯の通知音が聞こえてきた。
相手は真奈さんのおじいさん。先日連絡先を交換して頂いてから初めてのメールだ。
急ぎのメールなのだろうか、内容は簡潔に送られてきた。
『~無名君へ 孫をよろしく頼む。』
真奈さんに何かあったのだろうか……とりあえず連絡してみよう。
メッセージか電話か迷ったが、電話にしようと決めた丁度その時、真奈さんから電話が掛かってきた。
『もしもし真奈さん? おじいさんから連絡来たけど、何かあったのか?』
おじいさんから連絡が来るくらいだ、もしかしたら一大事かもしれない。
自分の背中に汗が流れるのを感じる。ついこの前彼女が危険な目に合ったので、最悪な予想ばかりが思い浮かんでしまう。
頭を切り替え、俺は彼女の返答を待った。
『む、無名さん……。一緒に住まわせてもらえませんか……』
むむ???