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バ革命  作者: 、、
〜暴臨の天魔族編〜
33/96

#26 暴虐のプロローグ

挿絵(By みてみん)





もう数ヵ月も前の出来事となったバーチャルシステムの日常化。

これにより、戦科授業でしか使われなかったバーチャルシステムにすっかり慣れてしまった生徒達は今日も今日とて、平和に日々を過ごしていた。


現在は八月十五日。


本日はとある二校が企画している交流会についての会議が開かれていた。


桜南高校会議室に副会長と待機している生徒会会長、如月(きさらぎ)雫(しずく)は大きな窓から見える校庭を眺めていた。


「…………遅いですね。宮祁高校さん」


宮祁(みやけ)高校(こうこう)……雫が生徒会長を務める……そして天条(てんじょう)心二(しんじ)達の通う桜南(おうなん)高校(こうこう)と交流会を催す公立高校だ。


「全くだねー、この待ち時間が本当に勿体ない。」


せめて暇潰しにスマホでアプリを……と思いポケットから取り出そうとするが、早々に生徒会副会長、 朱緋(あかるび)紗夜(さや)の鋭い声が飛んでくる。


「……っと、ビックリした。何だよ教師みたいなこと言わんでくださいよー」


「当たり前です。会議室で携帯を出すなんて……どういう神経をしているんですかね。」


はぁ、とため息を一つ。


「……それと、後輩に敬語なんて使わないでください。」





紗夜は再び、手元に綺麗に整頓されているプリントの内の一つに目を通す。


そのプリントには、主に交流会で行う特殊戦科についてを纏めてある。


「…………。」


どうやら読み始めたようだ。

ますますに静寂が会議室を支配している。

生真面目(きまじめ)な紗夜のことだ、何回も読んでいるはずなのだが。


「……なぁ朱緋ちゃん。」


話を振ろうと熟読している紗夜に呼びかける雫。

するとどうだろう、反応がないのだ。

尚(なお)もプリントに目を通している紗夜に、雫は再度呼び掛けてみる。


「紗夜ちゃーーーん」


「……っ。」


先輩に舌打ち、我を通すことはよいことだ。


「……さ、さすがにオレといえど泣くよ?」


はぁ、と何回ため息つくんだよと突っ込みたくなるくらい彼女はまたしてもため息を吐いた。


「……何ですか会長。」


「その交流会ってのは、一体何をするんだっけか」


雫の問いに紗夜はひきしまっていた口をだらしなく開けて固まった。


「……会長、プリントちゃんと見ましたか?……というか、今まで会議に参加していたでしょう……寝ぼけないでください。」


雫は紗夜の手元のプリントを確認すべく、

窓際から離れ机に置かれたプリントに目を落とす。



「…………んー、いやだってさぁ、そこらへん面倒な話し合いはいつも朱緋ちゃんの主体で進めてくれてるから会議中ボーッとしてて……」


雫の言い分を聞き終えると紗夜はスッと静かに立ち上がる。


「……お?」


そしてまじまじと雫の顔を見つめる……いや睨む紗夜。


「……会長。」


ぼそりと呟かれた紗夜の一言にゾワッと背筋を凍らせる。

目線は下を向いていて表情を確認できない。それでも、不機嫌であることは何となく察せられる。


「な、何かな?朱緋ちゃん」


口をひきつらせながら雫は続きを催促する。緊張して言葉に出せない、なんてことはあり得ない。


引き締まっていた紗夜の柔らかい唇が開かれる。

自然と身構える雫。当然だ、彼女の発言は時として暴力になり得る。


ごくり、と息を飲む。重い空気が漂う。だが、この会議室を支配しているのは静寂なんかではない。

恐怖そのものだ。


「……来たようですね」


歯切れ悪くそれだけ呟くと、紗夜は再び椅子に座る。


「え?何が?」


疑問を口にする雫に紗夜は答えず、間もなくしてドアをノックする音が聞こえてくる。


「どうぞ」


紗夜の応答を確認し、ゆっくりと扉が開かれる。


「失礼します。宮祁高校生徒会長の揶沼(やなま)駛人(はやと)です。遅れて申し訳ありませんねぇ、この辺りの道分からなくて」


「いえ、確かに駅前からは少々離れていますからね。時間がかかるのも御察しします。改めまして私は桜南高校生徒会副会長の朱緋紗夜です。」




挿絵(By みてみん)




「……!おぉ、何とふつくしいお方でしょうか!お話の後にお食事にでも行きませんか?」


「……いえ、申し訳ありませんがこの後は用事が入っておりまして……」


「おー、それは残念です!ではLINE教えてくだ……」


「だーー、そこまでだ宮祁会長さんよぉ。とっとと会議なんざ終わらしましょうや」


雫は強制的に仕切り直しを試みる。

話の邪魔をされたのが勘に障(さわ)ったのか苛立ちの視線を雫に向ける。


「……はっ、そうですね。そちらさんは桜南高校の生徒会長さんですかな?」


雫に向けられている視線が次第に嘲笑のものへと変わる。

恐らくは毛先が白く染められた雫の毛色のせいだろう。

嫌な視線だが、雫にしてみればとうの昔に慣れた視線だ。特に苛立ちのような感情が芽生えるようなことはない。

……ただ、そんな雫の補佐を務める紗夜からしたら、それはもう恥ずかしい視線なのだろう。

顔が真っ赤である。


「……あぁ、如月雫だ。よろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


固く握手をかわし、長机の隅っこで粛々と話を始める。


「それでは、さっそくですが交流会で行う特殊戦科についてのお話を進めていきましょう。」


いつの間にか机に広げられたプリントが綺麗に整頓されてることに気付く雫の視界に紗夜が差し出した黒いファイルが映(うつ)る。


「……それでは如月会長、前回の議題内容の確認を。」

過去三回に渡って開かれた会議には、桜南高校の生徒会長、秩序委員会長、その他委員会で話し合っており、宮祁高校側の駛人は今回初参加のために紗夜がご丁寧に会議の経過を雫に促す。


普段からの静かで消えてしまいそうな声音は相も変わらず、そしていつもは振らない無茶ぶりを振られ、雫は「へっ?」とだらしない声を発する。


「朱緋ちゃんー、いつものように進行頼よー…。」


弱音を吐く雫に紗夜は冷ややかな笑みを浮かべながら続ける。


「何を言ってるんですかー?早く進行してください。」


「うっ……」と雫の意見に取り合ってくれなさそうなことを察し、仕方なくといった様子で今までの会議でまとめられた内容をまとめていく。


「えー、それでは。僭越(せんえつ)ながら自分が進行を務めさせていただきます。まずは交流会での企画内容についてを振り返らせていただきまーす」


そもそもの話、何故(なぜ)桜南、宮祁の二校で交流会が会されることとなったのか。

宮祁高校が創立四十周年を迎えたとかで、桜南高校の学校長が企画した次第である。

一生徒の一人である雫からしたら正直面倒なことではあるのだ。

何勝手に企画してんだよ校長この野郎。

なんて言葉は口にはせず、こうして交流会の企画も最終確認まで前回で終えたところだ。

今回の会議は正直こちらで企画した交流会についての意見を聞いてもらうだけの中身の薄い会議だ。

そして交流会の企画を目の前の駛人に伝えて宮祁高校の学校長に了承を得てもらえば、交流会云々のつまらない会議はようやく落ち着くのだ。


「交流会の内容としましては、こちらとしてはせっかくの生徒間での交流の場を設けるのですから、誰もが楽しめるような企画を思案しましたところ、定期的に行っている人気授業のアンケートで上位を取っている戦科授業を絡めたものをと考えております。」


「えぇ。僕も好きですよ戦科授業。……というと、バーチャルシステムを使用する内容なんですか?」


実に真剣に聞いてくれている駛人の反応にこちらも出来る限りの丁寧な受け応えを心がける雫。


「その通りです。それも学校内すべての敷地を舞台にしたもので、両校協力してのチームバトルです。」


バトル……その一言に目を輝かせる駛人。身を乗り出す勢いだ。


「ほうほう!……チームバトルとは?」


「各学年、組ごとにまとめます。宮祁高校さんもまとめてもらって、二校とをまとめた一組を混合にして1チームにします。分かりやすいように言いますと、宮祁高校の三年一組と桜南高校の三年一組とを混ぜた約七十名の生徒で1チームです。」


「なるほど!続けてください!」


話が進むにつれ、駛人のテンションがうなぎ登りに上昇する。

こちらも何か変なテンションに当てられてしまいそうだ。


「バーチャルシステムを使って架空の魔物やモンスターをチームで協力して倒してもらうようなものとなっておりまして、倒すごとに増えるポイントをより多く獲得できたチームが優勝です。」


「………おぉ!いいですね!いいですねそれ!……ではモンスターはこちら側が準備しましょう!」






会議室ではその後も興奮混じりの駛人の声が響いていた。



そんな会議から数日、未だ夏休みの桜南高校に宮祁高校から了認の言葉をもらい、正式に交流会は執り行われることとなった。


開催日は九月の三日。夏休み明け早々に執り行われる交流会が全校の知るところとなるのは、二学期始業式の九月一日。


夏休みの夜は明け、始業式当日。

物語は動き出そうとしていた。



朝七時。

天条心二(てんじょうしんじ)の部屋に規則的な音が発せられる。


「…………アラーム?……あ、そうか。今日から学校か。」


夏休み明け一日目の学校。考えるだけでも一気にテンションが下がる心二だが、アラームを止めて暫(しば)し毛布を被りながら呆(ほう)ける。


そろそろ来るであろう第2のアラームを待っているのだ。


「…………あれ?」


来ない。

いつもだったら第2のアラームこと心二の姉、天条紅空(てんじょうくれあ)が起こしに来るのに。


すると階段を上がってくる足音が聞こえてくる。


―あ、来た来た。―


自然と口元が緩む心二はやはりシスコンであろう。



「おい、朝だぞ!」


開け放たれたドアから起こしに来た紅空の声が発せられる…って、あれ?と心二は毛布を被りながら眉をしかめる。

こんなに家の姉は声が低かったか?

そんな疑問が頭をよぎる。そもそも口調がおかしいことに気付く。



思いきって声の主の顔を確認すべく毛布から顔を覗かせた。



「…………なっ……んだとっ!?」


心二の視界に入った声の主は見慣れた金髪少年、垣峰守郎(かきみねしゅろう)が立っていた。


「起きて。」


「…へ?」


目の前の男から発せられた声音が先ほどと違い妙に繊細な声音だった。間違いなく女性の発するそれだ。


そして、心二はその声音を発する女性を知っている。


「……もしかして、くーちゃん?」


「その通り。」




挿絵(By みてみん)



言い終えかき上げていた金髪を下ろし、制服の中に忍ばせていた後ろ髪をまとめていたゴムを外す。ものの数秒で、いつもの容姿端麗の金髪美少女、弥富深海(やとみあくあ)の姿がそこにあった。


「おはよう。えと、こんな朝早くにどしたの?」


とりあえず一番の疑問を深海に尋ねた。

何故、天条家に深海がいるのか。というか、彼女は天条家に来るのは初めてのはずだ。

招いた覚えはないし、そもそも朝に二人きりで顔を合わせるほどの親密な中でもない。むしろそんな仲の女子がいない。


心二の問いに彼女は眉一つ動かさずこう答える。


「おはよう。……紅空さんに頼まれた。」



姉ちゃんが?と眉をしかめる心二はおでこに手をやり考える。

そういえば昨日の夜。遊戯王(デュエル)しながら姉ちゃんがそんなこと言っていた気がする。




ーー昨夜ーー



「オレのターン、ドロー!」


デッキから引かれたカードを見る。


トレーディングカードゲームの一つであるデュエルモンスターズは天条家でのルールでもある。

例えばお隣さんから貰ったミスドを分け合った末(すえ)一つだけ余ったとする。

はい、即デュエル、である。


ーていうか、おい両親。ドーナツの一つくらい子供に譲れよ。ー


「オレはE(エレメンタル)・HERO(ヒーロー)スパークマンを召喚‼︎」


心二のデッキはヒーローデッキだ。ヒーローモンスターというのがどうも男心をくすぐる。融合とか超テンション上がる。


伏せカードを二枚伏せてターンエンドを宣言する。


すると相手をする紅空がデッキからカードを引きながら口にする。


「明日、お姉ちゃん心くん起こせないから。」


そう、と相槌を打つ心二。

それよりも自分の次のターン場に出す最善のカードを考えていた。手元に融合カードがなければ、ヒーローデッキは攻めに行けない。

そのためにデッキから融合を手札に加える効果を持ったカードを数多く入れているが、そのカードすらも手札にはない。

なかなかの窮地だ。


「だからしんくんを起こしてくれるのはお姉ちゃんじゃないけど、ちゃんと起きるんだよ?」


流石に聞き捨てならないことを紅空が言うので、心二も一旦思考を止める。


「……あのな姉ちゃん。流石に一人でもちゃんと起きれるよ。」


またまたぁ、と紅空は強がりは止(よ)せといった目で返す。


「しんくんいつもお姉ちゃんが起こしに来ないと起きないじゃん。」


「ちゃんとアラームしてるから起きれるよ!バカにすんな‼︎」


心二の言い分を聞かず、カードを置くとiPhoneを片手に素早く文字を打つ。


「おい待て姉ちゃん、誰に文字を打ってんだ」


「まぁまぁ、女の子に頼んであげるから♪」


iPhoneの画面に目を向けたまま答える。


もしかして、これが過保護?



「あー私のターンだよね、はいパワーボンド発動。」




―――――――――。




ここまで思い出し、心二は目の前の深海を見る。

優璃がくるのかと思っていたがまさかの彼女で驚いていた。よく引き受けてくれたものだ。


「ん?」


心二は深海の手元に握られているレジ袋に気付いた。


「くーちゃん、それは?」


深海はレジ袋から栄養ドリンクを一本取りだし、ひょいっとベッドに放った。


「……朝ごはん。」


「ご飯じゃないよねこれ!」


「……でも栄養満点。栄養ドリンクなんだし。」


「……まぁ、ありがたく飲ませてもらうよ」


一本しかない栄養ドリンクを早々に飲み終えた心二はさっそく制服に着替えるべく布団から出ようとする。


布団を映す視界の端で、メロンパンをはむっと頬張る深海に気付く心二。


「……くーちゃん?オレのメロンパンは?」


尋ねる心二に深海は小首を傾げる。


「……?栄養ドリンクが心二の朝御飯。これは私の朝御飯。はむ。」


尚(なお)もメロンパンを食べる深海。よく見るとメロンパンの中からクリームが覗いている。すごく美味しそう。


「……オレもメロンパンがよかったよぉ」


「……男の子は元気な食べ物がいいとお姉さんから聞いた。栄養ドリンクじゃ不満なのかしら?精力剤の方がよかった?」


「なんで選択肢が飲み物ばかりなの!?メロンパン一個でも元気になるよ」


「それなら私のメロンパンを……」とか言って胸差し出してくれないかなぁ、なんて期待がよぎったがそんな期待は自分を虚しくするだけだ。……というか美少女の深海がわざわざ朝早くから起こしに来てくれたという時点で、心二からしたら美味しすぎる現実だ。

無闇に幸を求めるものではない。


「……くーちゃん、お食事中悪いけどオレ着替えたいんだよねー。」


深海が固まる。メロンパンを食べる手を止め心二を見つめる。しっかりと目を見て、そして堂々言葉を発する。


「……興味ないから大丈夫。着替えても結構よ。」


「…………。」


その論法だと、見る人の興味があったら着替える人の気持ち関係なく着替えガン見出来るじゃん……。


心二はどっちにしろ虚しい気持ちを受け止め、そそくさと着替えを始める。


少し違和感というか、新鮮というか、そんな落ち着かない気持ちで、心二は美少女をお供に学校へ登校する。




いよいよはじまりました第4シリーズ!

内容は前半の会議で話し合っていた、そして番外編でほんの一瞬口に出されていた交流会の話。

もちろん仲良く手を取り合い交流を育む、なんてのほほんとしたお話にはなりません!

今回のサブタイは暴虐のプロローグ。はたしてどうなるやらでございます。

さてさて、これからが大変です。

キャラクターが尋常じゃないほど多くなるかもしれませんねぇ……。


今のところバ革命は番外編を除き一編ごとに十話前後の尺でお届けしていますが、今回に限ってはどうかわかりませんねぇ

なるべく十話の枠で収めたいものですが。


かなり詰め込んだプロローグでしたが、最後までお付き合いよろしくおねがいします!


今回の比較画像は青山礼愛先輩です!


相変わらず変化の激しいビフォーアフターぶりです








挿絵(By みてみん)

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